映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

美女と野獣 Beauty and the Beast 《実写化する意味あった??疑問な映画とポスター》

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ポスターの感想…40点
映画の点数…30点

 

パイレーツオブカリビアンという大作を筆頭に、ディズニークラシックの実写化が次々と展開されているシリーズ。


2019年だけでもダンボ、ライオンキング、アラジンと看板クラスの作品が実写化予定です。


この立て続けのリリースの背景には、おそらく「美女と野獣」の大ヒットも関連しているのではないかと思います。


美女と野獣の完成度を観て、他の作品への実写化に自信をつけたのではないでしょうか。


世間の評判もかなり高かった今作を振り返ってみようと思います。

 

映画の感想


先に言っちゃいますけど、ほとんどオープニングの時点からずーーーーーっと面白くなかったです。。。


まず僕自身は、1991年版のアニメ版は何回かは観ています。


ファンと言えるほどではないと思います。


ただ、1989年リトルマーメイドあたりからのディズニールネッサンスの重要な一本だというくらいは理解していますし、羊たちの沈黙が無ければアカデミー作品賞をとっていたとしても全くおかしくないレベルだと思っています。
(1700年代の原作とかその他の映画の話はここではしません。あまり関係ないと思うので)


いずれにせよ、公開当時世界最高の完成度を誇った映画なのは間違いないのですから、その実写化となれば何かしらのアイデアが必要だったと思うのです。


が、しかし。


残念ながらそのような姿勢は制作側ほとんど見受けられなかったと思っています。


ものすごく純粋な気持ちで「アニメを実写化してみました(^^)」という心意気を感じます。


うん、だったらアニメでいいから。

 

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さっそくつまらないオープニング


まずは、まだ変身前のお城の様子から始まります。


魔女に魔法をかけられるシーンですね。


ジャブ的な感じでたくさんの美女がダンスするという映像的な美しさを堪能できます。
次の瞬間、ありえない光景が。


野獣に変身させられる王様が普通に顔を出して登場します。


なんで????


え、だってこの人、あとで王様に戻るんだよね。


その時に初めて顔がうつったほうがいいと僕は思ったんだけど。


それとも、最初に出すという意味があるのかな、となんとか好意的に解釈しました。


そして、その気持ちは2時間後に裏切られます。


やっぱり顔を出す必要、まったく無かった。


どうしても顔を出したいなら、ルミエールやその恋人とか、ポット夫人とチップを出した方が絶対に良かったでしょう。


そしたら「ああ、あの可愛いチップがもう二度と人間に戻れないなんて!」と感情移入できたんじゃないですか?


最初からイヤな予感を漂わせて映画ははじまります。

 

ミュージカルシーン


映画の構成を、アニメの通りミュージカルにしたのは良かったと思います。


実写ならではのパワーはあるし、何より名曲だらけの映画なので聴いているだけで楽しいですからね(当然ながら、これはアニメがすごいというだけなのだが)。


とはいえ、そのミュージカルシーンもやはり飲み込みづらい。。


最初のシーンでは「ベルは美しい女性だが、夢見がちなところがあり周りからは白い目で見られている。そのベルを乱暴でがさつなガストンが狙っている」という構成になっています。


ところがこのシーン、何の工夫もなくアニメから実写化しているだけなので非常にノイズが強くなっています。


まずベルが誰よりも美しいというのが良く分かりません。


エマワトソンは確かに美しい女性ですが絶世の美女タイプではないので、ベルを誰よりも美しいとするなら見せ方に何かしら工夫が必要なはずです。

アニメだと単純に、ベルの他の女性を不細工に描いていました。

それが実写で出来ないというのであれば、やはり何かしらアイデアが必要だったでしょう。

 


そしてベルが「変わり者」という設定も、「本を読むのが好き」とかそのレベルです。


なんだそりゃ。


とても2017年にわざわざ実写化された設定とは思えません。


「文字を読んだりする女性が珍しい時代」だという設定にするのであれば、それを2017年現在でも通じる何かのメタファーとして描くべきでしょう。


そんなことに気を配っているとは思えませんでした。

 

 


ガストンがベルに嫌われている理由も飲み込みづらいです。


ガストンは、見た目が綺麗というだけの理由でベルに求婚するイヤな奴です。


その一方で、従軍経験もあり自分のお店も持っているとても有能な人なのでしょう。


そのガストンに対しベルは「あんな無神経な人の嫁なんてイヤ」と拒絶します。


これじゃあ、ベルの方もやはり表面的な部分で人を見るイヤな奴にしか見えません。


そもそもさ、アニメ版だとガストンや狼は初めからアニメ特有の「いやな奴の顔」をして登場するんですよ。


だから観ている側も「はいはい、この人はイヤな人なんですね」と受け止めるんですね。


それが実写だとそれがかなり薄くなるんです。


普通にイケメンだし。


野菜を踏むくらいの中途半端な演出じゃなくって、もっと分かりやすい女性差別的な発言くらいさせても良かったんじゃないですかね。

 

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お城のキャラクター達


アニメ版に登場した、ルミエールやポット夫人を中心とした魅力的なキャラクター達。


今作もアニメ版と同じように重要な役割を持っているのですが、これもまた単に「実写化しただけ」の描き方をされています。


誰しもが「アニメの方が生き生きしていたし、可愛かったよね」と感じたと思うんですよ。


つくづく「じゃあなんで実写化したの?」としか思えません。


はっきり言ってどのキャラも不気味な造形なんですよね。


不気味なのが悪いというわけではなくて、そういうキャラクターであればそのキャラクターに合った使い方をするべきだと思うんですよ。


なんで全く同じように描いたのか理解できません。


顕著に「アニメの方が良かった」と思える箇所です。

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感想(2件)

 

エマワトソンの居心地の悪さ


お城にいる間、つまり映画の半分くらいの時間はエマワトソンはほとんど一人での演技になります。


だって他はCGなんだから。


そしてそれが全くうまくいっていません。


不自然なタイミングで笑ってみせたり、会話のテンポがいまいち合っていなかったり、撮り方がうまくなかったり。


これはエマワトソンが悪いのではなく、監督の手腕が足りなかったためだと思います。

 

母親の設定


野獣とベルは、お互いに母親を亡くしたという設定が追加されています。


これはアニメには無かったオリジナルです。


意図としては、母親を亡くした者同士で心を交流させるということでしょう。


え・・・・・・・・この設定丸ごと不要じゃない・・・・・???


わざわざ30分映画を長くしてまで追加するようなことじゃないと思うんですけど。


べルの母親は、わざわざペストによって死亡したというような具体的な設定になっています。


これじゃあ「可哀想な者同士、仲良くやろうね」みたいな余計なバイアスがかかっているように見えるんですが。。。


そうじゃなくて、「見た目の恐ろしさや乱暴さに囚われず、相手をフラットに見つめることでお互いに心を寄せあう」という設定のままの方がよっぽど二人の愛情が本物だという証明になると思うんですけど。


ここまでやるんだったら、かつての王様の乱暴な政治によってベルのお母さんは亡くなったくらいの設定にした方が良かったですよ。


「親が早くに死んだ人→可哀想」みたいな無神経な発想が大嫌いでしたね。


せっかく加えたオリジナル設定がよりにもよって最悪なものでした。

 

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ダンスシーン


散々なことを言ってきましたが、ダンスシーンはやはり圧巻の出来だったと素直に思います。


実写ならではの演出もされており、2017年時点での最高のダンスシーンを作り上げようという気概を感じました。

 

映画の感想のまとめ


というわけで、映画の感想としては文句なしに最悪だったと思っています。


この映画をみて評価されている人は「アニメを実写化するとこうなるのか!」というところで感動されているようです。


残念ながら僕は、その無神経な実写化のやり方に腹がたちました。


最初に言った通り、これだったらアニメのままの方がよっぽど良かったと思います。

 

ポスターの感想

 

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ポスターの出来もまた。。。。。


これがまた残念な仕上がりです。


綺麗なポスターとは思いますよ?


オリジナルのフォントも綺麗だし、世界観もよく出来ていると思います。


でもさあ、ただそれだけだよね。


実写化にあたっての熱意とか別に何も感じません。


精度の高いコスプレにしか見えないんですよ。


仮にですが、全くアニメ版を知らない人がこのポスターを見たらどう思うでしょう。


「まぎれもない完璧なB級映画だろうな!」と感じるのではないでしょうか?


レイアウトに工夫もないし、ドレスを着た美女とよく分からない生き物が写っているだけ。
こりゃあB級でしょう。

 

キャッチコピーもひどい

キャッチコピーもひどいですね。

 

それは、100年語り継がれるエンターテイメント。

だそうです。


なんかもう、ふわっとしすぎ。


まず「それは」の意味が分からん。


なんとなく雰囲気だけでつけてるとしか思えません。


「100年語り継がれる」も駄目でしょう。


これから100年っていう意味?


それとも今から100年前からって意味?


この作品が誕生したのって、300年前ですよ?


これから100年語り継がれるとしたらなんか賞味期限が短いし、今から100年前とかだったら嘘のキャッチコピーだし。


だったら普通に「300年語り継がれてきた」でもいいと思うし、「26年の時を経て、あの感動がよみがえる」というアニメ目線でもいいんじゃないの?


あと「エンターテイメント」ってキャッチコピーに使わないでくれない?


ポスターにエンターテイメントって書いてあるということは「この映画は作り話ですよ」という宣言じゃないですか。


なんでそんなこと無神経に書いちゃうかな。


観客は作り話ということは百も承知で、映画を観ている間だけでも現実を忘れて世界観の中に入り込むわけじゃないですか。


ディズニーランドがまさにそういう施設ですよね。

 

あと「彼は探していた。かけがえのない自分を。」みたいなのも好きじゃない。


そういう映画じゃねえし。


他者の中に自分の存在価値を見いだすことで自分が変わっていくという話じゃないの?

 

なんかもう全部駄目。


というわけで、ポスターについても特にこれ以上語ることもありません。


大ヒット作にこんなこと言うのも失礼ですが、僕はかなりガッカリしました。


これから先アニメは見返すでしょうが、実写版は二度と観ないことでしょう。


それでは。

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感想(23件)

 

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