ワンダーウーマン Wonder Woman 《ポスター上々、映画本編はBooo》
ポスターの点数…85点
映画の点数…40点
先に謝っておきますと、このあと結構なトーンで映画のダメ出しをする予定でございます。
この映画を大好きな方には申し訳ないと思うのですが、その代わり映画ポスターの方はとても良い出来だと思っておりますのでそちらの方を褒めさせていただこうかなと思います。
全体の構図
ポスターの意図はかなり明確です。
「ワンダーウーマンを魅力的にみせる」の一言です。
ぶっちぎりに美しいガル・ガドットが立っているだけで絵として成立するという点も大きいですが、キャラクターの配置も気が利いていて、左側にアマゾン族、右側に英軍を置いています。
アマゾン族を率いるクイーンとして、そして軍隊の先頭に立つ勇敢な英雄としての立ち位置をポスターだけで表現でいています。
アマゾン族と人間を分断する構図にすることで、本来は相容れないはずの種族の間で揺れ動くワンダーウーマンの心情も読み取れるようです。
ワンダーウーマン自身はこちらに目線をおくるでなく下を向くでもなく、どこか遠くを見ています。
この目線によって、彼女は遠くの未来を見ているのだと分かります。
青が基調となった配色もいいですね。
彼女がアマゾン族の島というとても美しい島で生まれた純粋性を表現できています。
キャッチコピーの無邪気さ
《美しく、ぶっ飛ばす》というキャッチコピーも無邪気でなかなかいいなと思います。
この映画に興味がある人が求めていることと完全に一致しているからですね。
下世話な言い方ですが「美女が男どもを豪快にドッカンドッカンやっつける映画」を観たいわけですよね。
シンプルでありながら効果的な一言です。
(実際の映画はもっとシリアスな殴り合いなので爽快感は実はそんなに高くないのですが)
はい、褒めるのはここまでになりました。
ここから先、映画の評価に入ります。。。。。
映画の感想
迫力のある映像と、あまりにも魅力的なワンダーウーマンというキャラクターを堪能するだけでも十分観る価値はあると思います。
もしもこれがB級映画であれば手放しで大絶賛したかも知れません。
ですが、150億円以上の予算が投じられたビッグバジェットムービーとして考えると、ちょっと擁護しがたい仕上がりというのも事実です。
映画を通して観たときに、何度も「ん?どういうこと?」と気になる点が多かったです。
その気になる点が増える度に映画にノリきることが出来ず、そのままモヤモヤと物語も終わっていきました。
一言で言えば「設定の詰めの甘さ」がとても目立つ作品でした。
冒頭、ギリシャ神話をベースにしたアマゾン族の生い立ちが語られます。
このとき出てくるゼウスが、僕たちが実際に知っているギリシャ神話のゼウスと同じものなのかどうかがいまいち分かりません。
この映画特有のパラレルワールドとしての話なのかな、などと思っていると、そこにドイツ軍やイギリス軍がやってきます。
そうなるとまた今度は「え、この軍隊の人達はギリシャ神話を知ってるの??キリスト教はどうなってるの?」というのが気になりだします。
アマゾン族がそれぞれ何歳くらいなのかも分からないので、ギリシャ神話がいつ生まれてどの程度浸透している世界なのかよく分からないのです。
そのあたりを無視しようとして映画を観ていても、何度も「ゼウスが~」とか「神は~」などと言うので、「え?じゃあ神って誰なの?キリストは実在した世界なの?」とまた引っかかります。
こういう映画全体の設定の作り込みがどうしても気になる映画なのです。
また、アマゾン族の強さの設定が最初に説明されていないのが不親切でしょう。
銃を撃たれるとさすがに死亡するようですが、それ以外のダメージではほとんど無傷のままです。
どんなに高いところから落ちでも、固い物が当たってもほぼ無傷。
なぜか銃にだけは弱いようです。
繁殖能力は無さそうな様子ですが、そのわりには尋常じゃないトレーニングをしているようで「訓練中に死んだらどうすんの?」とかも気になってしまいます。
他にも、ドイツという国やイギリスという国を何故登場させたか分かりません。
ワンダーウーマンは、ほとんど論理的でない理由でイギリス側の味方につきます。
アマゾン族を数人殺害されたことが理由なのでしょうが、そもそもスパイが逃げてきたから巻き込まれただけであって、この時点ではドイツが悪かどうかなど分からないはずです。
実際には当時イギリスもかなり非人道的な戦争をしていたわけで、一方的にドイツを悪く描くのは単に作り手側の論理でしかありません。
「ドイツ軍の将軍を倒せば世界は平和になる」と盲目的に信じているワンダーウーマンという設定なのですから、他のドイツ軍の一般兵士をボコボコに壊滅させる理由が分かりません。
これも「ワンダーウーマンが敵を壊滅させるシーンを撮ろうぜ」という作り手側の都合に思えるのです。
普通に考えるなら「イギリス軍もドイツ軍もボコボコにする」か、「こっそり将軍のみを殺害する」という発想になると思うんですよね。
この調子でいくと、第二次世界大戦では東京大空襲や原爆投下したアメリカ側にワンダーウーマンが味方するとかも普通にありえるだろうし、朝鮮半島や中国への侵略を行っていた日本を応援するなどもあるのでしょう。
あくまでもワンダーウーマンの「なんとなくこっちを味方しよう」という勝手な思い込みで歴史が変わっていく気がするんですよね。。。。
アベンジャーズシリーズでは、一応ハイドラ党やソコヴィアなどと実在しない設定を用意しておりノイズが少ないよう工夫しています。
結構分かりやすく「この人達は悪い人でーす」と最初に宣言してくれるわけですよ。
また、ハイドラ党やソコヴィアが現在実存する国家などのメタファーにもなっているので感情移入しやすくなっています。
一方のワンダーウーマンでは、敵側の設定をかつてのドイツ帝国と毒ガス兵器というなんとも中途半端なものにしてあるため「こいつらは絶対に滅ぼさないと駄目だ!」とは思えないんですよね。。。
だってワンダーウーマンが何もしなくたってドイツ軍が後に壊滅することは僕たちは知っているので。
大体、毒ガスを開発していた博士にしても何故か顔に傷がある設定で「この人も完全には悪い人ではないのだ」みたいな話にすり替えてるし。
あれだけの毒ガス虐殺をした人は許されて、その他の一般兵士は容赦なく倒す理由は何なのか。
結局ワンダーウーマン自身も女性や生涯がある人を差別しているのではないかと疑ってしまいます。
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女性差別という観点からもこの映画では矛盾点を感じます。
ワンダーウーマンが1940年代以降常にアメリカの女性解放運動のシンボルとされていたのは有名な話ですが、それは時代時代において少しずつ形を変えていったわけですよ。
それを2017年度版にきちんとアップデート出来ているとは思えないんですね。
例えば、ワンダーウーマン自身は女性や男性であることに囚われずに生きている人物なのですが、まわりの人達は「女性が口を出すな!」とか「女性は戦わない」などと差別しているという構図になっています。
そのわりには、やけにワンダーウーマンを「美しく美しく」演出撮影するんですよね。
はっきりと男性ウケを狙ったような衣装や目線をしています。
MCUがキャプテンマーベルが彼女を全く女性として扱わなかったのに対し、ワンダーウーマンはどこまでいっても「超エロかっこいい女性」です。
ワンダーウーマン本人も最終的には「愛がすべてよ!」というキャラクターになっていき、最初に掲げていた「困っている人を放っておけない」という精神はどこかにいってしまいます。
原作がそうだったから、というのは言い訳です。
原作をわざわざ映画にするのであれば、必ずそれに応じた再構成が必要なのですから。
ここからは「設定のまずさ」とは違いますがやはりおかしな点があります。
秘書みたいな女性はどこいったのか
秘書のような女性が意味ありげに登場し「秘書と奴隷は似てる」みたいな屈辱的なコトを言われたあと、なんだかよく分からないうちにいなくなります。
あんな扱いなら初めから出さない方がマシです。
セキュリティーゼロ問題
どこかの基地や会議場などにするすると潜入するシーンが多すぎてノイズです。
映画内で多くても1回くらいにしてもらわないと「なんで誰も鍵とか見張りとかたててないの?」と気になります。
この辺は前作「スーパーマンvsバッドマン」でも同じようなシーンがありましたが。
ダイアナの登場シーン
映画冒頭、ルーブル博物館に顔に見えない女性が思わせぶりに入っていきます。
と、思いきやあっさりとダイアナが顔を見せてしまいます。
けっこうテキトーな感じで。
なんで??
だったら、後のアマゾン族のシーンで「こんなにカッコいい女性に成長した」という演出で初登場にした方が効果的じゃないですか。
そりゃ前作で登場しているのだから、どんな顔かくらいは知ってますよ。
でも一本の映画として考えるなら、もっと主人公の登場シーンに気を配らないと駄目でしょう。
というわけで、細かいことを言えば他にもまだ不満点は多いです。
申し訳ないけど。
比べたくはないけど、やっぱりどうフラットに観てもMCUの方が全体の映画のレベルが上ですね。
ポスターワークも含めて「キャラクターをたてる」のはうまいと思っているので、良くなるときは一気によくなると思っているのですが。
今後に期待・・・・・かな?
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