映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

ワイルドカード Wild Card《まだこんなところにいたのか。絶滅危惧種との再会》

 

ポスターの点数…40点
映画の点数…70点

監督 サイモン・ウェスト
脚本 ウィリアム・ゴールドマン
原作 ウィリアム・ゴールドマン『Heat』
製作 スティーヴ・チャスマン
出演者 ジェイソン・ステイサム

 

映画ポスターの意味

 

 

このポスターから受ける印象は
「過去に闇をかかえている主人公が、愛車とともに荒くれ者と戦う映画かな」というところでしょうか。

 

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その予想はほぼ外れました。


まず、主人公の過去はあまり重要ではありません。


強いという理由づけのための設定であって特にそれで悩んだりはしません。


愛車もあまり登場しません。カーアクションはありません。


荒くれ者と戦うのも「お前が先にやったんだろバーカ」「うるせーバーカ」みたいな感じなのでそこまで緊迫感がないというか。


ポスターで出すとしたら、もっとカジノ感ではないでしょうか?


舞台がラスベガスというのもありますし、主人公はギャンブル中毒です。


街の呪縛から逃れられない主人公の愚かさをポスターに込めた方が、映画を観る側の混乱もなかったのではないかと思うんです。


カジノ映画みたいなゴージャス感を出すということではなくて、匂わせる程度でいいと思うんですよ。


ロゴがネオン色で出来ているとか、そのくらいで。

 

とはいえ、ポスターの出来を批判だけするのもフェアではありません。


この映画がなかなかのクセモノでして、何を言いたい映画なのかよく分からないわけです。


アートディレクターも頭を抱えたと思うんですよね。


何から形にしたらいいか分からなかったことでしょう。

ちなみにアメリカ版はこんな感じみたいです。

手元にネタバレとも言える要素が見えるのは面白いですね。

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映画の感想


点数こそ70点にしていますが、どうにも憎めない一品。


まず脚本がよく分からなすぎるというか、話の下手な女子高生の会話を聞いている気分なんですよ。


「えっと、まず用心棒の依頼があるところから始まるんだけど、すぐなんか乱暴された女の人が来て、で街の人とかから場所聞いたりしてマフィアと戦うんだけど、最初いらないって言ってたお金はやっぱりもらってカジノに行くんだけど、ちょっと様子がおかしいなと思ったらお金が無くなってて、それで偉い人に呼び出されて」

みたいな会話、という脚本。


観ながらずっと「俺は一体何を観ているんだ」という不安な気持ちにさせられました。

 

ではつまらなかったかというと、そうでもない、むしろ楽しかったとも言えるのが不思議なところ。


新鮮な感覚


自分感覚ですが、大体300本くらい映画を観たことがある方はあらゆる映画の方程式みたいなものは覚えてしまってると思うんですよ。


60秒の特報を観るだけで「これ全部ストーリー分かっちゃうな」という映画もあります。


話の構造が観客にバレていてもいかに面白い映画を撮れるかどうか、監督は頭をひねりながら頑張るわけですね。


一例をあげるなら、バーフバリというインド映画はストーリーはほとんど古典的であるにも関わらず、演出の素晴らしさで見事にフレッシュな大傑作を生み出しました。


このワイルドカードという映画はそういう映画ではありません。


今映画がどこに向かっているのか、観客はおろか制作陣も分かっていないような印象なんです。


主人公がどこに向かっているのか意図的に分からなくするという種類の映画ではないと思ったんですよね。


むしろ監督もよく分かっていないとすら思ったんですよ。


意地悪な言い方ですが、たまたま映画が良くなったという気がする。


撮影が終わって編集の段階になって、無理矢理バランスを整えようとしたけどやっぱり無理だったというような。


でもそれが良かったと思うんですよね。


だって、確かに今まで観たことがないような感覚にはなれたのですもの。

 

オチのつけかた


話のオチの付け方も面白いなあと思いました。


原作があるらしいのでどこまでが原作通りか分からないのですが、とにかく終わり方が読めない。


アイデアとしては

  • マフィアとの決闘の末に死亡する
  • お金なんて無くても幸せなのだと気付いて終わる
  • 相棒を一人前にしたところで終わる
  • 何も変わらない今までの日常に戻っていってしまう

なんとなくこのへんが思い浮かびそうなものです。


まさか、人に金を貰ってどこかに行って終わるとは思いつきません。

 

全体の感想


最初に思ったのは「お前、まだこんなところにいたのか!」という感想でした。
それは大昔に失くしたと思っていたオモチャを再発見したときの気持ちです。


最近の映画は脚本もしっかりしていて、大抵の映画を見てもそれなりにうまくまとめます。


ところが本作のような、何が何やら分からないぶっとびアクション映画。


そういう映画はかつてたくさんあったような気がするのですよ。


意味はよく分からないまでも、そういう映画はとても楽しかっんですよね。


久しぶりにそういう映画に再会しました。


でも不思議です、久しぶりに会ったオモチャなのに、初めて出会った頃のようなトキメキがあります。


これが恋なんでしょうか。


そんな素敵な恋に出会えたことに感謝し、今日はここまでといたします。


それでは。

 


ワイルドカード [ ジェイソン・ステイサム ]

 

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