呪怨《ルール違反!恐怖映画のポスターの系譜》
ポスターの点数…90点
映画の点数…75点
前提として僕はあまりホラー映画を観ません。
だって怖いもの。
昔から思っていたのですが、わざわざホラー映画を観て怖がりたがる人と、わざわざ牛に追いかけられるために祭りを開くスペイン人の気持ちが僕には分かりません。
ですが、人間とは不可解な生き物でして、こうしてたまーーーーーにホラー映画を観てみようと思うわけです。
なぜか牛に追いかけられたくなるのです。
今回は「呪怨」と「呪怨 白い老女」を二本立てで観るというクレイジーな鑑賞スタイルをとりました。
いやー、怖かった。
完全に呪われた。
映画の評価はあとから書くとして、呪怨の映画ポスターのデザインについて語ってみようと思います。
ちなみに今から挙げる映画は一応僕も観たことのあるホラー映画たちです。
どれもおすすめですよ。
掟破りのポスター
先に言っておきますと、「呪怨」と「呪怨 白い老女」のポスターはかなりルール違反なことをやっています。
他の呪怨シリーズも同様です。
どこがルール違反か分かるでしょうか?
映画本編でなくポスターだけでも恐怖を感じる強烈なビジュアルですよね。
このポスターを見るだけで「お、ホラー映画だな」とすぐに分かります。
広告としてはバッチリですよね。
なぜこれがルール違反なのでしょうか。
ホラー映画ポスターのルール
ホラー映画ポスターには基本的なルールがあります。
どの映画もそのルールを守りつつ、それぞれの個性を出していくわけです。
たとえばこちら
被害者出しパターン
です。
恐怖に顔をゆがめる被害者、今から恐怖を味わうであろう被害者をポスターにしています。
こうすることで「何があったんだろう!?何を見てるんだろう!!」と思わせることが出来ます。
ここで具体的な恐怖「つかまれる」とか「刺される」とかをビジュアルにしてしまうと台無しです。
あくまでも「今からやられる」という状況までを見せます。
恐怖の舞台パターン
「ここで怖いことが起きるのだ!」という舞台を提示する方法です。
工夫としては、極端に怖くしすぎないことです。
ボロッボロの廃墟などが写っていると駄目なんですね。
ボロボロの廃墟だと「そりゃお化けくらい出るだろう」と思ってしまいます。
そうでなく「お化けとかは到底出そうも無いけど、何故か怖い」ニュアンスが大事になります。
照明の使い方を工夫したりフォントを工夫して、怖い雰囲気を演出します。
雰囲気怖いパターン
具体的なパーツをポスター内にはあまり配置せず、雰囲気で怖さを演出しています。
小説の表紙なんかがまさにこういうパターンが多いですよね。
文字だけのメディアなので、どうしても雰囲気でデザインすることが多くなるわけです。
あらためて呪怨のルール違反
では何故、呪怨シリーズのポスターがルール違反なのか。
カンのいい方ならもうお分かりでしょう。
そう、それは「具体的な幽霊がドーーーーーーン!!!!」と出ていることです。
これはいけません。
なぜならこのルールを違反すると、基本的に制作側が不利になってしまうからです。
映画を観てみると、実際にこのポスターの幽霊が出てきます。
観客は「こいつが映画に出てくるんだ」と分かっている状態なのですから、出てきたところで恐怖は半減してしまいます。
ネタバレしているわけですからね。
なぜそのような真似を
なぜ呪怨シリーズはそのような掟破りをしてしまったのでしょうか。
それは映画の内容とも密接にリンクしています。
呪怨シリーズは、今までのホラー映画と違う性質を持った作品でした。
具体的には
- 「何回も幽霊が出てくる」
- 「画面内に幽霊がはっきりと映し出される」
- 「かなり長い時間、画面内にいる」
ことです。
映画自体がそもそもルール違反しまくりな作品だったわけです。
幽霊が何回出ても長時間出てきても、それでも怖いと思わせてやる!
という制作者達の自信を感じます。
ポスターもその意気込みに応えたわけですね。
ポスターで完全なネタバレがあろうとも、それでも映画は怖いんだぜ!という自信。
常識からはみだしたそのポスターは、当時(2000年前後)の人たちに壮絶なインパクトを残し、そして緩やかに消化されていく運命をたどります。
どのような分野でもそうなのですが、ある「カリスマ」が登場するとすぐにその模倣が始まり、使い古され、そして消えていきます。
一種の宿命でもあるため仕方ないとは思うのですが。
再び世間をひっくり返すようなホラー映画、ポスターは生まれることがあるのでしょうか。
映画の感想
かなりルール違反が多い作品です。
もちろん、いい意味でですよ。
例えばホラー映画の金字塔【リング】は、最後の最後、テレビから出てくる貞子のためにすべての物語が進んでいる映画です。
ホラー映画の基本的な作りとしては
「予感させる、予感させる、予感させる、小出しにする、予感させる、予感させる、小出しにする、ホッさせる・・・・・・・・・・・・・・・からの幽霊ドーーーーーーーン!!!」
というパターンがあります。
ところがこの呪怨は
「予感、からのドーーーーン!!」の繰り返しで出来ています。
それでいて怖いわけですよ。
一見関係なさそうなオムニバスストーリーが、実は一つにつながっていることを観客にうまく伝えているのが効いています。
だから「ああ、駄目だよ!!そこ行ったら怖い目に!!ああ、もう!!!」という恐怖の連鎖が広がっていくわけですね。
まんまとやられました。
なんて性格の悪い方達なのでしょう。
高橋監督、三宅監督。
もう二度と見ないぞと思うわけですが、どうせ数年たつと何故か再び手を出すのでしょうね。
あー怖い怖い。
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