映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

マーベルシリーズ(MCU)のポスター

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マーベル・シネマティック・ユニバース(Marvel Cinematic Universe)の最新作である、キャプテン・マーベルが公開になりました。

 

5月にはMCUの区切りともなるアベンジャーズ4(エンドゲーム)が公開されます。

 

この機会に、マーベルシリーズの11年におよぶポスターワークの歴史をまとめてみます。

 

実写ヒーローものの歴史を作り替えてきたメガヒットシリーズは、平面グラフィックデザインにおいてはどのような道のりを歩んできたのでしょうか。

 


アベンジャーズ大全 [ スコット・ビーティ ]

ではExcelsior!


アイアンマン(のポスター)始動

 

記念すべきシリーズ第一作、アイアンマン。

 

そのポスターがこちらになります。

 

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シリーズ一作目 アイアンマン

 

アイアンマンというタイトルにふさわしい重厚でメタリックな感触のデザイン。

ヒーローものでありながら、大人の鑑賞も想定したダークな印象。

 

結果としてアイアンマンは大ヒット。

 

それから11年以上続いていくシリーズの大きな大きな基礎となったわけです。

 

そして、それが呪いでもあるわけです。

 


ポスターって、動かないんだよね(当たり前)


マーベルシリーズには個性あふれるヒーローがたくさん登場します。

 

そのキャラクターが各映画の中で自由に動き回る面白さ、それこそがシリーズの魅力です。

 

ところが、当たり前ですがポスターは自由には動きません。

 

じっと止まったままなのです。

 

20作も超える作品群になると、どうしても似たような構図でポスターを作らなければならないわけです。

 

しかも、前述したようにシリーズ一作目のアイアンマンのビジュアル。

 

あくまでもそのイメージを基礎としながらも、そこから個性を出していくというデザイナー泣かせなお仕事なわけですね。

 

基礎がしっかりした仕事ほど、応用がきかなくなるジレンマが発生します。

 

では具体的にいくつかのパターンを振り返ってみます。

 


パターン化せざるを得ない宿命

 


まず、キャラクターがカッコつけてる系ポスター。

 

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カッコつけてる系

 

各シリーズの一作目に使いやすいデザインで、キャラクターをアップに使えるため迫力ある構図になります。

 

いずれのデザインもカッコいいですね。

 


映画の要素を散りばめデザイン

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散りばめデザイン

 

ある意味デザイナーにとってはやりやすいかも。

 

その映画に出てくるキャラクターや舞台を使ってデザインします。

 

多くの映画ポスターにとっても基本形の形となります。

 

ただし「なんとなく雰囲気系」にもなりがちで、注意を払わないと退屈なデザインになってしまいます。

 


こっちに歩いてくる系なんてのもあります。

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目があったら恋におちる

 

 

キャラクターと自分の視線が合うため、ドキッとした演出が期待できます。

 

キャラクターの勇ましさが際立ちカッコイイポスターになります。

 

アルマゲドンなんかのシーンが有名です。


余談ですが、同じ構図を用いてモンスターズインクなんかではパロディにしていましたね。

 

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こっちに来る系の勇ましさ


そしてついには、

「キャラクター全乗せ特盛り御膳」

デザインが登場します。

 

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これぞ特盛りヒーロー御膳

 

ここまでくると、MCUを初めて鑑賞するお客様をお誘いするためのポスターというよりは、今まで応援してくれた方へのご褒美のような感じかも知れません。

 

一応シリーズ全作観ている僕ですが、名前がすぐには出てこないキャラもいますね。。。

 

とにかく豪華盛り盛りです。

 


パターンからの脱出

 

 

シリーズを重ねる毎に、気付けば幾つかのパターンに分類できるようになったマーベルシリーズのポスター。

 

しかしまだまだフレッシュなビジュアルを目指してデザイナー達の戦いは続きます。

 

まずシビル・ウォーのポスター。

 

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シビルウォー。かっこいいぜ

 

キャラクターが向かい合う大胆な構成で緊張感あるデザインです。

 

ライバルであるDC系ヒーロー、バットマン v スーパーマンでも同じ構図が使われていました。

 

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お隣さんでもやってます

 

最近ではクリード2でも使われていましたね。

 

このような構図は他にも無数の作品で使われており、日本でいえば漫画ワンピースの表紙でも同じ構図を見つけることができます。

 

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対立構造のデザインはいつもカッコイイ

 

ですがこのデザインには大きな弱点があります。

 

あまりにも印象的なデザインのため、複数回使うことがとても難しいのです。

 

多用しすぎるとキャラクターの対立構造の緊張感がガクッと落ちてしまうからです。

 

この対面構図のデザインは、おそらくMCUシリーズで今後見かけることはないでしょう。

 

さあ、まだ他にも平面デザインの可能性は残っているのでしょうか。

 


起死回生の必殺技

 

 

ここで、思わぬ伏兵が新たな可能性を見いだします。

 

アントマンです。

 

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これを思いついたデザイナー、次期社長待ったなし

 

なんと大胆な構成でしょうか。

 

キャラクターの魅力と、映画の持つコミカルな雰囲気をビジュアル一発で伝える完璧なデザインです。

 

アントマンというキャラクターだからこそ許される一発逆転のアイデアでした。

 

これ、とても大事なことでして。

 

つまり「キャラクターの本質を突いたデザインを追い求めれば、アイデアにはまだまだ無限の可能性がある」ということなんです。

 

まぁ、理論上はそうなのですが、それを表現することが一番難しいんですけどね。

 


ライバルの出現

 

先ほどDC系ヒーローの話を少ししました。

 

バットマンやスーパーマンが活躍するDCヒーローシリーズは、今のところ映画の興行収入的にも、そして映画の出来としてもマーベルシリーズに遅れをとっています。

 

ところがです。

 

ことポスターデザインの分野においてはどうでしょうか?

 

DCシリーズのポスターをご覧ください。

 

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DC系ポスター!

 

なんか・・・・・・カッコよくね??

 

そう、DCシリーズはポスターがとてもカッコいいのです!

 

マーベルシリーズとの分かりやすい違いは、全体的にスッキリしている点にあります。

 

「嘘つけお前、スーサイドスクワッドとかゴチャゴチャしてるじゃねえか」と思われるかも知れませんが、よくご覧ください。

 

ポスターの中にかなり大きく「何も要素がないスペース」があるんです。


これをホワイトスペースと言いますが、これがあることで「余裕のある大人なデザイン」が生まれるんです。

 

映画とは関係ありませんが、ホワイトスペースを大胆に使った広告がこちらです。

 

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この余白のことをホワイトスペースといいます

 

シンプルでこんなにすっきりしたデザインだからこそ、商品の存在感がより際立つわけですね。

 

もちろんこのようなデザイン特有の弱点もあります。

 

画面内に情報が少なくなるため「なんの映画?どんな商品?」というのが伝わりにくくなります。


あらためてマーベルシリーズのアートワークを見てみると。。。。

 

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余白に注目

 

とにかく要素を可能な限り散りばめるというデザインですね。

 

DC系に比べるとゴチャゴチャしていることは間違いありませんが、映画の内容を伝えるという広告の役割を考えるとマーベル系の方が適しているとも言えるわけです。

 


どっちがいいとかではないが

 

デザインに絶対の正解なんてものはありません。

 

映画ポスターの役割は「一人でも多くの観客を映画鑑賞に誘い込む」ことです。

 

そのうえでMCUスタッフ達は「こういうビジュアルにした方が、お客さんは来てくれる!!」という戦略のもとにポスターを作ります。

 

こうやって歴代のポスターを並べて比較してきましたが、結局のところは「その時その時のベスト」を考えるしかないわけです。

 

その歴史の積み重ねがパターンとなってしまうのですが、それも全て「MCU映画が面白いから」こそ次々と続編が作られたと言えるわけです。

 

今後このシリーズがどのように続いていくのか。

 

映画の内容と共にアートワークにも注目していこうと思います。

 


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