映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

アバウト・タイム《瞬間を切り取った傑作映画&ポスター》

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映画の点数…95点
ポスターの点数…40点

 

今年の初泣き映画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《アバウト・タイム》です。


突然ですが、僕は恋愛映画をほとんど観ることはありません。


単純に、人の恋愛にほとんど興味がないからだと思います。


ですがこのアバウト・タイム、恋愛コーナーに置いてある映画なんですね。


人から聞いた情報でこの映画をオススメされたことをキッカケにして観た次第。


自分では絶対にチョイスしなかった映画でしょう。


それで観てみた結果……これ、そもそも恋愛映画ですか?


もっと、ドラマとかヒューマンとか、なんならSFのコーナーでもいい気がします。


そっちにあったらもっと早く観ていたかも知れないなと思うと残念ですぞ、TSUTAYAさん。


そう思ってしまうくらいかなり自分の中で大ヒットした一本でした。


まだ1月ですが、もしかしたらこのまま「2020年に観たDVD映画ナンバーワン!」の可能性すらある気がしています。


公開は2013年らしいので、なんだか7年くらい損した気がしてますよ。


今年一発目の映画で大泣き映画でした。

 

映画のストーリー


21歳のお正月、一家4人(+おじさん)で幸せな生活を送っていた長男に、お父さんが衝撃的な事実を伝えます。


「うちの家系は代々、男がタイムトラベルをすることができる」と。


はじめは「狂ったかこのジジイ」と思った息子ですが、実際に出来ることが分かると「よっしゃこれでいい彼女見つけるぞ!」と張り切ります。


何か失敗したらすぐにタイムトラベルで問題を解決していく主人公ですが、ある日「タイムトラベルでは解決できないこともある」と気付いていき……


みたいな感じです。


基本的な設定は、あえてかなりいい加減にしてあります。


タイムトラベルと言えば「これで金持ちになれるぜ!」となるのが普通ですが「金持ちになると不幸になるから」とかかなり雑な理由でそういう事には使いません。


ほぼほぼ「彼女をつくる」とか「家族を助ける」とか自分のまわりのことだけに使用します。


全体的にコメディなんですよね。


タイムトラベルが出来るというのはただの設定であって、話の要点は「もう一度人生をやり直すことが出来たとして、それが最良の結果を生むかは分からない。だから今日一日を大切に生きよう」というメッセージです。


いわば古典的な話でもあるわけですね。


それで実際に映画が面白くなればいいだけで、そしてこの映画は見事に面白かったと思いましたよ。

 

映画の良かった点


映画全体のトーンがかなり良い意味で肩の力が抜いてあるような作りなのが良かったです。


タイムトラベルなんて設定があると、ついつい「理屈として正しいか」とか「倫理的にどうなんだ」とかが気になるのですが、そこらへんは「まぁまぁ、あまり気にしないでよ」という作り手の姿勢を感じて僕は好感がもてました。


もちろん逆に「この設定が気持ち悪い」と感じる人もいるでしょうし、かなり作り手の都合通りにすすむ映画なのは間違いないので相性はあると思います。


でも僕としては、整合性とかをSNSで検証・監視しあうような現代の映画の姿勢にちょっと疲れていた部分もあったので、このくらいいい加減な映画も良いなと思うんですけどね。

 

後半に向けてのシリアスな展開


基本的にこの映画はハッピーな展開が連続します。


何故なら、タイムトラベルですぐに軌道修正しちゃうから主人公の思い通りの人生を送るんですよね。


そういう意味では結婚するヒロインとかの自由意志はどうなってるんだとか気になるんですけど、とにかく主人公の思うがままにすすんでいく。


ですが、後半にかけてそれがうまくいかなくなります。


自分にとって大事なものが増えてくると、タイムトラベルが使えなくなるという事態になっていきます。(過去を変えると現在も変わるので、自分の大切なものを失う可能性がでてくる)


そうなってきてようやく、映画の登場人物達と観客である自分達との共感度がグッとあがります。


「もしあの時ああしていたら」なんてついつい考えてしまいますが、そうしなかったからこそ今の友人や家族との関係があるとも言えるわけですよね。


そんなこと分かっているのに、ついつい自分の人生に疑問を感じてしまう。


この映画は自分自身に対する後悔に対して、優しく寄り添ってくれる映画だと思いました。


詳しい説明はしませんが、最後の「浜辺の散歩」のシーンでは音楽の素晴らしさと相まって号泣してしまいました。


表情こそまったく画面からは分かりませんでしたが、あんなに幸せな光景は観たことがありませんね。


個人的にずっと忘れられない名シーンになりました。

 

映画のダメだった点


個人的にはかなり大好きな作品なんですけど、フラットに観たら難点はあります。


まず、タイムトラベルのルールがかなり曖昧、というよりいい加減な点。


コメディだと考えると「まぁコメディだしな」と割り切れるのですが、後半は特に「いわゆる、ドラマチックなこと、感動的なこと」な展開も多いため、そうなるとタイムトラベルのルールの曖昧さが気になったりします。


それと、主人公の身勝手さに不快感を覚える人も当然たくさんいると思います。


後半は「家族を守るために頑張るぞ」みたいな姿勢なのはいいんですけど、彼女を作るパートでは何度も歴史を修正しまくってなんとか恋人同士になります。


もちろん、歴史を修正するということが「やっぱり間違いだよね」という着地をするということは分かるのですが、それはそうとやはり「でもこの奥さんも、もしかしたらもっといい旦那と知り合えた可能性あるじゃん」というモヤモヤは残りますよね。


このへんは映画にどこまでのリアリティを求めるかによると思います。

 

ポスターの感想


大好きな映画だからこそ、ポスターに対して不満は大きいです。

 

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このポスターから伝わることは「ドレス着ているような特別な日に土砂降りにあったとしても、それでも愛おしいと感じる時間はある」というような印象です。


それがつまり映画のテーマである「やりなおしのきかない一瞬一瞬の連続こそが、幸福な人生である」ということを表しているのでしょう。


とはいえやはり、このポスターと映画全体のイメージの乖離は大きいです。


まず、このポスターではどう見ても主人公はこの女性だと誰しも思うでしょう。


でも映画を観たら分かる通り、映画は完全に男性主人公の目線からのみ描かれるストーリーですよね。


むしろ「時間を戻して可愛いあの子を落とす!」というAVみたいなゲスな設定でもあるわけです。


それをここまでロマンチックなビジュアルにするのは違うんじゃないでしょうか。


そして、あまりにも恋愛映画感が出過ぎなのが気になりますね。

 

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もちろん恋愛要素はとても大きいのですが、どちらかと言うと「父子二人から紡がれていく家族という系譜」を描いているように感じます。


恋愛映画というよりは家族映画なのだから、せめて父親や子どもがうつるようなポスターにした方が良かったのではないか、そうした方がより幅広い観客層にウケたのではないかと思うんです。


20代の主人公の恋愛を描いた映画とはいえ、実際に観てみたら70オーバーの男性でもきっと感動するストーリーだと思います。


そういう配慮が欲しかったかな、と思いました。

 

まとめ


完璧な映画だなんてサラサラ思っていませんが、こういう「油断してたら後頭部を思いっきり殴られた」みたいな映画体験が年に数回あるから最高なんですよね。


もしまだ未見の方がいましたら、ご覧になってはいかがでしょうか。


思わぬ出会いになるかも知れませんよ。ブレイク寸前のマーゴット・ロビーが色気ムンムンで登場してたりと思わぬ発見も。


個人的に面白かったのは、主演の男性はこの後「スターウォーズ」のハックス将軍に。


ヒロインは「ドクターストレンジ」に。


そしてマーゴット・ロビーは「ハーレイ・クイーン」として登場します。


三人がそれぞれ違うヒーロー映画に抜擢されるのは興味深いですね。


ちなみにこのアバウト・タイムで一番の好演を見せるお父さん役の男性は、かつてパイレーツオブカリビアンデイビー・ジョーンズを演じています。


そんな不思議なヒーロー大作映画との縁でした。


それでは、また。

 

 

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