映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

オールドボーイ 《ポスターで損をしてる?傑作映画》

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映画の点数…87点
ポスターの点数…40点

 

今につながる韓国映画の傑作


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はオールドボーイです。


2003年の作品なのでもう15年以上たつんですね。


ちょうど韓国映画が日本でも流行していたのが2003年くらいでしょうか。


冬ソナが2003年に放送していたらしいです。


当時は「まぁ、悪くはないけど日本の映画やドラマのパクリだよな」みたいなクオリティの作品も多々あったと思ってます。


そのなかにおいて、オールドボーイは飛び抜けた傑作で。


今となっては悔しいけれど韓国映画のレベルは日本映画のレベルを軽く超えていると感じています。


オールドボーイ》はその韓国映画のレベルを向上させたきっかけの一つでもあるんじゃないかなと思ったり。


公開から15年以上たった現在でも、オールドボーイを超えるような邦画ってないんじゃないかなぁなんて思います(というか、こういうジャンルの映画自体が少ないんだけど)。

 

映画のストーリー


謎の組織に15年間誘拐・監禁されてしまっ主人公、デス。


監禁されている間に妻は殺害され、娘とも生き別れます。


15年たったある日突如解放された主人公は、わずかな情報を頼りに自分を監禁した犯人と、犯行の目的を見つけるために奔走します。


そのなかで犯人捜しを手伝ってくれる女性や昔の友人の力を借りて、少しずつ犯人像が見えてきます。


真相が判明していくにつれ、全く予期しなかった事実が明らかになっていき……


みたいな話です。

 

基本的な話は「15年も監禁したやつに復讐だ!」という話です。


そこだけでも十分に面白いと思えるレベルの映画なのですが、後半そこからさらにツイストしてくる「本当の地獄」にかなり驚かされました。


元々日本のマンガが原作なのですが、だとしたら邦画としてこんな最高な作品を観たかったところ。

 

映画の良かった点


この映画の美点は数多くあるのですが、ここでは「フレッシュな映像」と「脚本」の二点に絞りたいと思います。

 

フレッシュな映像


映画前半はまだ何故監禁されたかなどの情報が少ないため、いくら謎解きをしているとはいえ「状況的に退屈」な場面が多々あります。


人に話を聞いていたり、街をウロウロしていたりするシーンですね。


そのシーンを退屈させないための工夫が、フレッシュな映像として用意されています。


まず全体的な美術のレベルが高いです。


部屋の小物や衣装など細かいところまで気を配っていて、キャラクター達の実在感を増すことに貢献しています。


ミドという名前のヒロインなんかも、微妙~~な感じで衣装がエロいんですよね。


そのバランスがとても良かったり。


また、とても有名なシーンのようですが長い廊下でのワンカット長回し格闘シーンのフレッシュさ。


別にアクション映画ではないのですからそんなシーンは必須ではないのですが、このワンカット長回しのフレッシュな映像のおかげで「永遠と終わらないうんざりするような地獄が続く」ような錯覚を感じて。


自分の思いもしない贅沢が出来ているようで観ていて楽しいです。

 

見事な脚本


正直言って、設定とかはおかしいところも目立ちます。


「いくらなんでも15年監禁されたわりには対応力がありすぎる」とか「催眠術ってそんなに万能?」とか。


それを気にする方がいてもしょうがないとは思うんですけど、個人的には「そういう矛盾点は無理矢理突破してしまう脚本」の方が素晴らしいなと感じます。


後半にいくにつれ「え??そんなことでこんな犯罪を???」とか「え??こんな地獄があっていいの???」みたいなシーンがインフレしていくので、細かいところは気にならなくなっていくんですよね。


その「こんな地獄があるのか」というシーンをどのように展開するのか、いつ観客に提示するのか、というのが非常にうまいなと。


真相自体は明らかになっていくのに、何故か目の前の出来事が非現実的な感じがしてクラクラしてくる。


全体的なビジュアルが濃厚で過剰なのもあって、元々ファンタジー感が強いのもプラスに働いていると思います。

 

ポスターの感想


有名なビジュアルはこちらだと思います。

 

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ハリウッドリメイクの方も似たようなビジュアルでしたね。


まぁ確かに、インパクトはありますよ。


ハンマーを使った拷問描写とかも印象的です。


ビジュアルとしてはこれでもいいかもとは思います。


ただし、映画ポスターとしては僕は良くないのではないかと思います。


映画ポスターである以上は「お客さんを映画館に呼び込む」ことと「映画の内容を正しく伝える」ことが大事です。


このポスターの場合「映画の内容を正しく伝える」ことは出来ていないと思います。


まず主人公の顔ですが、小汚い格好とはいえちょっとカッコよすぎですよね。


劇中の主人公はもっと、頼りなくフラフラしたダメな人間です。


そのダメ人間が暴力を振るうからこその恐怖と、反逆のカタルシスがあるのであって。


このポスターじゃただのクライムサスペンスに見えちゃいます。


また、映画の主なテーマである「監禁した奴への復讐」という要素がまるで感じられません。


監禁の孤独感を演出するなら後ろ姿にするとか、もっと引きの絵にするとか方法はあったはずです。


このポスターからは「家族を失った男の悲しみ」のようなものは感じられないですよね。


「大事なものを失った男の復讐」がこの映画のテーマなのですから、もう少しドライで冷静なビジュアルが必要だったと思います。

 

別案


こちらのポスターは良いと思います。

 

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主人公達が頼りなく韓国のネオン街を歩いています。


街に飲み込まれそうなくらい人物は小さく表現されており、謎はなかなか解けないという印象があります。


それでも二人の距離はかなり近く、深い愛情のようなものが感じられます。

 

まとめ


公開から15年たってもまだまだ傑作であり続ける一作だと思います。


だからこそ、ポスターのビジュアルが惜しいと感じるところ。


有名なポスターなので変更しにくいとは思いますが、新しいお客さんに観てもらうのを目的に、ちょっとビジュアルの変更をしてもいいんじゃないの?なんて思ったり。


それでは、また。

 

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