映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

プライベート・ライアン 《映画はクラシック・ポスターは気の抜けた炭酸》

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映画の点数…92点
ポスターの点数…30点

 

戦争映画クラシック


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はプライベート・ライアンです。


終戦の日の前後にはついつい戦争にまつわる映画を観ることが多いのですが、今年はプライベート・ライアンを観ました。


あらかじめ断っておくと、僕は別にアメリカの正義の戦争イエーイ!!」みたいなノリでこの作品を好きなわけではありません。


この作品に対し「アメリカの戦争賛歌だ!」と怒る人がいるのも分かるし、それを否定するつもりは別にありません。


右と左で見え方が違ってくる映画だとは思うし、そのような視点から映画を楽しむのは人それぞれです。


僕がこの映画を良い映画であると思うのは「戦争で死ぬのは嫌だな」と実感するからです。


有名な話ですが、この映画の冒頭のノルマンディー上陸作戦のシーンは映画史に大きな影響を与えました。


もはやプライベートライアン以前と以後」で戦争映画の歴史そのものが変わったと言えます。


1998年というまだ20年しかたっていない映画ですが、すでに戦争映画としてはクラシックとも言える影響力を持った一作です。


あまりにもリアリティーのある表現を観て、かつてノルマンディーで戦った兵士の方でさえ驚いたというエピソードも残っています。


それくらい「ああ、人が目の前でバタバタと死んでいく」と実感するほどの映像的説得力がありました。


だから僕はこの映画を観ます。


右だろうと左だろうと、戦争という形で命を落とす事態になるのは防ぐべきだと思うから。


少なくとも僕はこの映画を「反戦映画」でなくとも「戦争には行きたくないよな、やっぱり映画」として鑑賞しています。

 

映画のあらすじ


有名な映画なのであらすじは少しだけ。


冒頭の《史上最大の作戦》ノルマンディー上陸作戦によって敵地に乗り込んだミラー(トム・ハンクス)は、兄弟すべて失ったというライアン二等兵マット・デイモン)をアメリカ本国に移送するため、部隊を率いてライアンを探しに行くことになる。


たった一人の兵隊を救出するために8人もの兵士が行動することに反発するメンバーもいるなか、果たしてライアンを無事に救うことは出来るのかーーー


みたいな感じです。


第二次大戦という人類史上最も大きな戦争にあって、極めてミニマムな話を映画化してあるので3時間近い映画ながら非常にスッキリしています。

 

映画の感想


まず何をおいても冒頭のノルマンディー上陸作戦こそがこの映画のハイライトでしょう。


イヤな見方をすると、とにかくスピルバーグうまいなぁ!!!」と感心するばかりで。


早撮りで有名なスピルバーグですが、このシーンは神がかっていてどうしてここまでの映像が撮れたのか分からないレベルなんですよね。


船の中にいるシーンをじっくりと見せたあとに、その船が解放された瞬間からドイツ軍の銃撃によりバタバタと殺戮されていく兵隊達。


視点が徐々に広がって、今まさに「地獄にやってきたのだ」と思わせる凄惨きわめるビーチでの戦闘。


一人一人の行動はスッキリとして見やすいにも関わらず、現場がカオスになっていることは十分に伝わる描写の連続。


冒頭のこのシーンだけで「人は戦争によって一瞬で死ぬ」ことを強烈に印象づけるため、その後の「ライアン救出作戦」においても「どんなに崇高なミッションだとしても、それでも人はあっけなく死ぬ」という緊張感がすぐそばで伝わってくるんですよね。


中盤以降、戦闘シーンが大幅に減るにも関わらず退屈しないのは「死ぬときは死ぬ」ということが常に頭にあるからでしょう。


冒頭が一番映画として面白いのは間違いないと思いますが、それでも後半までこの面白さだけで引っ張っていけているのが素晴らしいです。

 

ポスターの感想


映画はとても素晴らしいです。大好きです。


ところがポスターが何故かイケてないのがこのプライベートライアンなんですよね。。。

 


草原地帯に一人の兵士が立っている。シルエットになっていてどのような人物かは分からない。


これはもちろん、マット・デイモン演じるライアンがどのような人物なのか分からないというのを表現しているのですが、これがなんとも見にくい。。。


そこにトム・ハンクスとかの顔がかぶっているので、パッと見てシルエットに目がいかないんですよね。

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だったらもう少しシルエットを下げるとか出来たと思うんですが。。。


そしてトム・ハンクス達の表情がなんとも中途半端です。


強い意思も感じないし、絶望も感じない。


ただ幽霊みたいにボンヤリと背景にいるだけで、この映画の良さを伝えてくれているとはとても言えません。


勇ましい顔はこの映画には合っていないのでしょうが、それならばせめて疲れ切った顔や、何かを探しているような首の角度とかやれることはあったとは思うんですよね。。。


傑作だけにもったいないです。。

 

キャッチコピー

しかし、このポスターにもいいところはありました。

《The Mission is a man》と一言添えてあるキャッチ。

 

「ミッションは、一人の男」=「たった一人の兵隊を救うというのがミッションだ」というミクロな視点の映画であるということがキャッチコピーからも伝わってきます。

 

日本語で訳すのが難しいほど切れ味の鋭いキャッチコピーはうまいなと感心しました。

 

まとめ


映画としてはやはりこれ以上の戦争映画はそうないと言っていいレベルです。


観る度に新しい発見があり、今後も定期的に鑑賞することでしょう。


だからこそ惜しむらくはポスターの出来です。


これだけの映画にも関わらず、なんだか気の抜けたポスター、DVDにパッケージに萎えて映画を観ていない人がいるのではないかと疑ってしまうほど。


スピルバーグ作品はちょくちょく気の抜けたポスターが目立つので、そこら辺までまわりがカバーしてくれたら今以上のレジェンドに。。。というのは考えすぎですかね。


それでは、また。


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