映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

暁に祈れ 《映画もパワフル ポスターもパワフル》

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映画の点数…82点

ポスターの点数…87点

 

パワフル×100な映画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《暁に祈れ》2018 です。


公開規模がそこまで大きくない低予算の映画ではあるのですけど評判も良くて、かなりプッシュされていた印象の映画。


観たら納得の【パワフル】な映画でした。


また、今回の映画はポスターも素晴らしいので合わせてご紹介します。

 

映画のアウトライン


タイでキックボクシング選手として活躍する主人公ビリー(イギリス人)がドラッグの使用で警察に逮捕され、言葉も不明な刑務所内でサバイブしていくというお話です。


更生のきっかけはムエタイ


自分にとっての唯一の才能であるキックボクシング(=ムエタイ)を通じてもう一度人生を見つめ直すことになります。


主人公ビリーは実在の人物で、彼の書いた自伝を元に映画化されています。

 

映画の感想


映画冒頭、ボクサーである彼の体に丁寧に丁寧にワセリン(でしょうか。格闘技に詳しくないので分かりませんが)を塗っていく場面から始まります。


時間にして2〜3分くらいかけたんじゃないかというくらい丁寧にその様子をカメラでおいます。


肉体の美しさをたっぷりと表現することでこの映画の【生々しさ】が際立ってきます。
このシーン以降のボクシングは全て痛みを感じるほどです。


ほとんどの映画内で描かれる暴力シーンは、自分が痛みを感じるほどではありません。
それはあくまでも映画内の人物は他人でしかないからですね。


ですがこの映画のように【そこにある肉体】を丁寧に描くことで、映画内の人物と自分がリンクしてきます。


また、ボクシング以外での体のぶつかり合いも非常に多い映画なのでやはり冒頭のワセリンシーンはとても大事なんですよね。


刑務所内での暴力やレイプシーンなど、どにかく裸の肉体がぶつかり合うことの多い映画です。


良い意味でも悪い意味でも、肉体を味わう映画と言ってよさそうです。

 

映画の良かった点


映画が始まってから1時間くらいはとにかく主人公にとっての良いことは何も起こりません。


理不尽な暴力と、ドラッグが肉体と精神を破壊していく様子をしつこく描きます。


何しろ登場人物達はイギリス人のビリーに対してタイ語でベラベラ話しかけるのに字幕すら入らないので、ビリーも観客も誰が何を言っているのか全く分からないんですよね。


異国の刑務所でのSEX(同性のレイプ)& DRUG & VIOLNCE!!


何かの煉獄でしょうかね。


主人公ビリーと観客を絶望させきったところで。。。


もう一度立ち上がるという展開に燃えます。


描き方も淡々としていて良かったと思います。


いつ具体的に立ち直ったのかは分かりづらいのですが、その分「自然とボクサーに戻る決意がついた」という風に見えるので。


ただここからの展開もそんなに甘くはなくて、やはりドラッグの魔力とは凄まじいのでしょう。


何度かコロリと暴力とドラッグの地獄に転がってはまた復活してというのを繰り返します。


試合におけるパンチ(=暴力)は不思議と生々しさを感じないんですよね。


これはビリーが肯定的な気持ちで試合に挑んでいるからこちらも痛みをあまり感じないのだろうなと思いました。

(それでも印象が爽やかに見えるだけで、見た目的にはかなりボクシング描写には力をいれてるし迫力もすごいです)


ラストの父親との面会シーン=父親は実際のビリー本人というのも良かったです。


映画を通じてビリーがもう一度自分自信を見つめ直すという構図になっています。

 

映画の不満点


大した不満点はないのですが、せめてサラッとムエタイのルール説明だけでもして欲しかったですね。


何が反則で、時間が何分かなどが分からないまま鑑賞しているのでちょっとノリきれないというか。


チャンスなのかピンチなのかも良く分からないし。


でもそれくらいですかね、ほんと。


グッと体感温度のあがる素晴らしい映画だったと思います。

 

ポスターの感想


映画ポスターもこれまたパワフルで良い出来です。


まずはこちら。

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極端な背中のアップで誰の背中なのかも分かりません(もちろんビリーですけど)


それでも奥にいる入れ墨だらけの集団を観ると「これはただ事ではない」と分かります。


構図的に「一人で巨大なものに向かっていく」という決意を感じます。


ただし首元はうなだれており、挑戦的な姿勢というよりは「これしかない」といったバランスです。


背中をアップにしているのも「大きな罪を背負っている」ことを表しているようです。


つづいてこちらのポスター

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こちらもまた極端なアップの写真ですね。


映画内でもそうでしたが、カメラが極端に人物の顔にグッと寄った撮り方をすることで「自分以外の状況が全く把握できない」様子が伝わってきます。


とてもシンプルな構図のポスターなのですが、映画の内容と密接に関わっているとても良いポスターだと思います。

 

まとめ


ボクシング映画にはあまり興味はないのですが、さすがにこれは面白かったです。


対象年齢があるのでしょうがないことですが、アベンジャーズなんかでは感じない「痛み」をちゃんと描いているのはとても好感がモテますね。


毎日観るのはツライですが、たまにこういう気持ちがダウナーになるくらいの映画も良い体験になると思いますよ。


それでは、また。


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