【ハーフの子を産みたい方に。】いせよしの広告について
こんにちは、ピースマイルです。
当ブログでは映画を中心にグラフィックデザインについて色々書いているわけですが。
デザインを扱う以上、ちょっと見過ごせない件についてお話します。
着物屋・いせよしさんが出したポスター広告のキャッチコピーが問題であるとして炎上しています。
こちらのポスターですね。
書いている今現在ではネットのみで燃えている印象ですが、ぼちぼちテレビでも問題になってくる頃かな。。。
ただひとつ気になるのは、この広告のライターが博報堂の方だということです。
ネットを見れば名前も出てるのですが、後述する理由もあってこのブログ内では名前は伏せておきます。以下、ライターさんと統一しましょうか。
僕の感想
まず、単純な「僕個人」の感想ですが。
最低だし、最悪だし、下品ですね。
今すぐ破り捨てて燃やしてしまった方がいいでしょう。
(3年前のポスターだから貼ってないけどさ)
少なくとも僕の家族や知り合いの範囲では、いせよしさんに関わる着物や商品は購入して欲しくありません。
まぁそんな機会もお金もございませんが。
生理的に気持ちが悪いとしか言いようのない気持ちです。
クズ以下だなぁと。
何が問題かって、このキャッチコピーをクズ以下だと気付かない人を相手に商品を売りつけようという姿勢が問題だと思うんですけどね。
グラフィックデザイナーとしての感想
「僕個人」の意見とわざわざ強調しましたが、職業柄の事情を重ねると少しだけ意見が違ってきます。
僕はグラフィックデザイナーですが、お客様の希望によってはキャッチコピーを考えることも多々あります。
本職ではないとは言え、キャッチコピーを考える作業自体は楽しいものです。
キャッチコピーを考える際(グラフィックデザインもですが)、まずはお客様の情報を細かくバラバラに分解して、何が最適な言葉であるかを紡ぎ出す。
その工程が楽しいんですね。
で、改めて今回の【ハーフの子を産みたい方に。】というキャッチコピーについて考えてみました。
他にいくつかキャッチコピーがあったので、並べてみます。
1・ハーフの子を産みたい方に。
2・ナンパしてくる人は減る。ナンパしてくる人の年収は上がる。
3・着物を着ると、扉がすべて自動ドアになる。
4・着るという親孝行もある。
5・スマホでしか撮らなかったことを、久しぶりに後悔した。
このうち、後ろの二つはまぁ別にいいんですよ。
別にいいというだけであって、けっこう嫌いなキャッチコピーですけど。
「余計なお世話だよ、うるせーな」としか思わないし。。。
これらのキャッチコピーが、いかにして考案されたか紐解いてみます。
ターゲットの設定
まず、「ターゲットを誰に設定しているか」です。
【3・着物を着ると、扉がすべて自動ドアになる。】は直接的に該当しませんが、その他いずれも「未婚の若い女性」がターゲットであることは明らかです。
まぁポスターのモデルさんが若い女性ですから当然ですね。
誰の主観か
キャッチコピーを、具体的に「誰が喋っているか」ですが、何故かこれが一人ではないんですよね。
【1・ハーフの子を産みたい方に。】は着物屋の目線なんですよ。
【4・着るという親孝行もある。】も捉え方によってはそうですね。
ですが、他のは着物を着た女性の視点なんですよね。
この統一されてない感じも結構嫌いですけど。
別に統一されてなくても問題がなければ全然オッケーですけどね。
キャッチコピーの目的
これらキャッチコピーが「読んだ人にどう思ってもらいたいか」ですけど、それぞれ
【1・ハーフの子を産みたい方に。】→外国人からモテる→ステータスがあがる
【2・ナンパしてくる人は減る。ナンパしてくる人の年収は上がる。】→ステータスの高い人からモテる
【3・着物を着ると、扉がすべて自動ドアになる。】→モテる、ステータスがあがる
【4・着るという親孝行もある。】→成長する
【5・スマホでしか撮らなかったことを、久しぶりに後悔した。】→インスタ映え、特別な記念日
あたりが目的でしょうか。
上の三つは基本的に「着物着るとモテるよ」ということが言いたいわけですね。
別にこの姿勢自体は僕は全く問題と思ってません。
人によっては「下品だ!」という方もいるでしょうけど、そもそも洋服を着る目的の一つは「異性、同性にモテたいから」という理由はごく当たり前のことです。
「着物を着てモテよう!!」と本気で思う人がいるのであれば、それは立派な商売だし誰から文句言われる筋合いは無かったはずです。
問題なのは、あくまでその内容がひどかったという点ですから。
何が問題だったのか
「着物を着てモテたい」というのは全く問題ありません。
ですが
1・ハーフの子を産みたい方に。
2・ナンパしてくる人は減る。ナンパしてくる人の年収は上がる。
3・着物を着ると、扉がすべて自動ドアになる。
というキャッチコピーには大きな問題があるという話です。
まず一番炎上している【ハーフの子を産みたい方に。】、これははっきりとした人種差別であり女性差別です。
別に「実は差別になりうる言葉ですよ」というレベルでは全くありません。
かなり直接的な差別です。
ていうか、はっきり言うけどこれって「白人とのハーフ」とか「スパニッシュ系のハーフ」とか、ごく限られた人種のことを言いたいんでしょう?
いわゆる「私たちがカッコイイと思う外国人」ですよね。
「いや、そんなつもりないです」とか絶対否定するだろうけど。嘘つけ。
根底に「日本人ださい」とか「白人かっこいい」とか、もっと言えば「着物を着て白人との子どもを産んだ貴方ってかなりイケてるわ」ってことでしょ。
気持ち悪い。
心底気持ち悪いですね。
パートナーの事も子どもの事もアクセサリーだとしか思ってない人向けの広告なんでしょうね。
【ナンパしてくる人は減る。ナンパしてくる人の年収は上がる。】は、男性の年収に対する差別とか言う問題ではないです。
今、どのような時代か本当に分かってるんでしょうか。
まだまだとはいえ、ようやく女性が社会で男性と同等の権利を持って働くことが可能になってきた時代ですよね。
そのような時代において「年収の多い男に拾われたいよね、貴方も」みたいな姿勢が気持ち悪いです。
あのね、本音ではそういうことを思っている女性はたくさんいますよそりゃ。
そんなこと分かってるし、そりゃ単純にパートナーは「年収の多い男」の方がいいでしょう。
でもそれを「着物を着るという上っ面な行為」だけで実現できると思っているのだとしたら、「あんたら本音では着物に誇りなんて持ってないでしょ?」と感じますけどね。
【着物を着ると、扉がすべて自動ドアになる。】も同様に気持ち悪いです。
これも「男性がエスコートしてくれるようになる」とかそういうことですよね。
だったら一言、「ドアも押せないなら着物なんて着るなバーカ!」です。
仮にですけど、女性に対して男性がドアを開けるということが「良いこと」という前提だとしましょうか。
そこでフラットにドアを開けられる男性って、顔の美醜とか着ているものとか、妊婦とかご老人とか関係なしに開けることが出来る男性なんですよ。
「ああ、こいつはブスだから開けなくていいや。お、この人は着物だから開けてあげよう」とか区別している男なんか「てめえなんかに親切にされたくねえよクズ!」って言ってやってもいい対象でしょうよ。
まぁそもそも男性がドアを開ける前提というのも個人的には気持ち悪いですけどね。
欧米的なレディーファーストの慣習に対する憧れなんでしょ?
だったら欧米的なハードな女性差別も同列に語ってからにしてくださいよ。
キャッチコピーは「誰のもの」か
今回のキャッチコピーは、あろうことか東京コピーライターズクラブ新人賞というものを受賞してるんですよね。
そこからライターさんの名前が割れて大騒ぎになってるんですけど。
僕も一応広告屋なので思うところはあるんですが、キャッチコピーって少なくとも「ライターさん一人で決めるもの」ではないんですよね。
もちろんライターさんだけで決めるパターンもありますが。
今回どのような経緯でこのようなキャッチコピーがついたのかまでは分からないんですよね。
だからこのブログ内ではライターさんの名前は伏せましたけど。
それでも、わざわざ賞にエントリーしている時点で大きく責任はあるとは思いますけどね。
ただこれも博報堂が主体となって応募しただけとかなら分からないかな。。
これは僕の考えですけど、グラフィックデザインもキャッチコピーも、最終的には「広告主のもの」だと考えてます。
別に「デザイナーは責任はとらないよ、知らないよ」と言いたいわけではなくて、最後にお金を払うのもオッケーをだすのも広告主ですから。
今回いせよし側は「関心を持たなかった人にも目を向けてほしかった」
とコメントを発表しています。
やはり何かしらいせよし側にも狙いがあったのだと思います。
もしも博報堂側から「こういうキャッチコピーどうですかね?」と提案されたのだとしても「ふざけるな!うちのお客様をバカにするな!」と言い返して欲しかったです。
あと、3年前の広告だから「今より緩かったんだしいいんじゃない?」という意見には僕は反対です。
10年前とかなら「配慮を欠きましたすいません」くらいでいいかもだけど。
3年前ならとっくに駄目でしょ。
3年前からこの会社は考え方が大きく変わったの?
少なくとも3年前だろうが僕は同じように吐き気を感じたし怒り狂うけどな。
まとめ
本当はサラッと済ますつもりだったのですが、ついつい長くなってしまいました。。。
僕は博報堂さんと付き合いがないので別にいいんですけど、同業の方に対してこのように怒り狂うのはあまり健康的に良くないですね。
せっかくですので僕を雇ってください。
なんにせよ、どう言い訳があったとしても今回の広告は本当に吐き気がするほど最悪なものだったと思います。
明日は我が身であると怯えつつも、僕は僕で可能な限りは人を楽しくさせる広告を作っていけたらいいなあと思います。
最後に、「着物といえば最高の広告」を貼って終わりにします。
こういうのが最高の広告であり、最高のキャッチコピーなのだと思います
それでは。
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