ミラーズクロッシング 《狼の皮をかぶった羊》
映画の点数…78点
ポスターの点数…80点
こんにちは、ピースマイルです。
まず僕は、この映画「ミラーズクロッシング」を《コーエン兄弟》という名前と《パッケージのビジュアルだけ》の興味で鑑賞しました。
どう転がってもコーエン兄弟なので面白く無いわけはないと判断したためです。
(興行収入がふるわなかったのを知ったのは見終わった後)
数字的には良くなかったかも知れませんが、個人的には大好きな作品でしたよ。
ポスターの感想
まず映画ポスターから見てみます。
映画ポスターからDVDなどにされる際に何故かかなりのオレンジフィルターがかけられているのが気になりますが。
とりあえず映画ポスターの方を。
およそ黄金比の比率くらいで分割された森の背景と、銃を持ったギャング風の男と命乞いをする男。
もうこれだけでとりあえず駄作に終わることはなさそうじゃないですか。
この時点で世の中の中二病が完治していない男の子達はすべてギンギンになりそうなものですが、その他にも細やかな工夫があります。
タイトル文字
1990年の作品ということを考慮しても、それよりも古く感じるのタイトル文字が硬派なギャング映画を想起させます。
さらにミラーズとクロッシングの二つを上下で分割してあることで「こっち側、あっち側」を区別していることが分かります。
映画の中盤で主人公トムがまさに「こっち側、あっち側」を選択する場面がくるのですが、その様子がタイトルだけでもうまく表現できていますね。
シンプルなんだけどこれくらいの気遣いがいやらしさを感じなくて好きです。
左右対称
画面がほぼ左右対称なのもきいています。
命乞いをする男というポーズもあいまって、ある意味とても美しい場面を演出するのに左右対称という表現がしっくりきています。
で、この美しさこそがまさにフェイクというか、すっかり騙された感じも含めていい映画なんですよね。
映画の感想
コーエン兄弟の硬派なギャング映画っていう感じがするこのポスター。
たしかに硬派だし、ギャング映画なんですよ。
でも、絶対的にこの映画は「可笑しい」んですよ。
この「可笑しさ」はちょっとゴッドファーザーにも通じるんですが。
スコセッシの「グッドフェローズ」の可笑しさとは違うんですよね。
グッドフェローズの方は、普通に可笑しいですから。
ミラーズクロッシングの可笑しさは、登場人物達の滑稽さにあるのだと思います。
特に主人公のトムはあまり表情も変えないし、いつも余裕ぶっているスマートな男です。
でも、映画を観ていくと「こいつよく考えると何一つうまいこといってないな」というのが分かります。
余裕の表情を見せながら行き当たりばったりにやり過ごしているだけだし、何かアクションを起こす毎に事態は悪化します。
主人公トムも、そしてこの映画も実は「狼の皮をかぶった羊」なんですよね。
この「画面にうつっている情報」と「実際に起こっていること」の微妙なズレがコーエン兄弟らしいなぁと思いながら観てました。
適切に不親切
コーエン兄弟の映画はいずれも「不親切」な映画だと思っています。
でも、その不親切さがとても適切なんですよね。
この映画ではキャラクターがアップになって会話だけでどんどん進んでいくシーンが多いです。
もしかしたら予算の都合などもあったのかも知れませんが、とにかく会話劇が多い。
こちらがボーッとしているとすぐに置いて行かれる恐れがあるのですが、集中して見ていると会話をしながら激しくマウントをとりあっている様子が分かってきます。
映像などで分かりやすく説明してくれないのが不親切なのですが、それが逆にこちらの集中力を高めることにつながっていてまさに適切な不親切なのです。
そうやって会話劇を聞いていると、言葉を組み立てながら殺し合いをしているようなものですね。
このあたりのスリリングさはタランティーノ的でもあります。
ポスターとのギャップ
このあたりの「可笑しさ」がまさにポスターとのギャップになっていて、これがイーストウッド映画のポスターなら(例えばミスティックリバー)ドヨーーーーんと重い気持ちになりそうですが。
このミラーズクロッシングの場合だと、見終わってポスターを見ると不思議な可笑しさがあるんですよね。
コーエン兄弟がコメディが得意な資質が映画やポスター内に入り込んでいるのかも知れません。
重厚な絵作りでありながら、意外とあっさり楽しめるいい映画でした。
それでは。
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