映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

ドラゴン危機一発 《こりゃひどい。映画の体を成していない最高の映画》

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映画の点数…5点
ポスターの点数…ある意味90点
ブルース・リーの点数…プライスレス

 

ブルース・リー映画だということ


まず、基本的な知識のおさらいになりますが、地球上で最もカッコイイ男というのはもちろんブルース・リーなわけです。


「何を当たり前のことを言っているんだ?」と不思議に思うかも知れませんが、1万人に一人くらいの割合で「いや、スタローンが一番だ」と主張する方もいるようですが、今のところはブルース・リーが一番なのです。


そんな世界一の男・ブルース・リーなわけですが、生まれる時代が少し早すぎたこともありけっこう「とんでもバカ映画」に出演してしまっていることも多く、その代表がこちら「ドラゴン危機一発」です。


なぜ漢字が「危機一髪」の誤字になっているのかも分かりませんが、そんな誤字がどうでもいいくらい映画として大幅に間違っているのでちょっと記録してみます。


今から相当に映画の悪口を書きますが、どれだけ映画を減点しようが「ブルース・リーが出演している」という時点でもちろん100点の映画なので、もしも鑑賞したことが無い方も安心してご覧ください。

 

その場のノリの脚本


そもそもこの作品は「主役が途中でブルース・リーに変わる」という信じられないくらい大幅な変更があった作品で、今の常識で考えるのはすでに難しいですね。


時代的にはハリウッドでゴッドファーザーが作られていた頃ですから、主役がマーロン・ブランドからアルパチーノに変更されたような感じでしょうか。


こう書くと「主役の変更もアリじゃね?と思えてくるから不思議です。


とはいえ「ドラゴン危機一発」の方はそんなポジティブな脚本変更ということでもなく、ほんとに現場で思いついたような物語がどんどん展開されていきます。


例えば、映画冒頭で可愛らしい氷売りの少女が意味ありげに出てきます。


丁寧に顔のアップや氷を削る所作を撮影し、ブルース・リーがそれに気をかけるようなシーンが挟み込まれます。


しかし、彼女は特に何もすることなく映画は終わります。


ただ単に「顔が可愛いから」くらいのノリで顔のアップを撮ったのでしょうか。


こちらがなんとなく「過去の映画知識」を元にストーリーを組み立てていくと、それが全て間違っているという「映画バカほどバカをみる」という素晴らしい作品なんですね。


ブルース・リーは母親との誓いのネックレスを持っており、暴力を振るいそうになると間抜けなBGMと共にネックレスを取り出してはグッと気持ちを抑えます。


これでつい「母親はもうこの世にいないのだな」とこちらは思い込むのですが、後半になり普通に生きていることが判明します。


このように、映画はすべてその場しのぎでなんとなく進んでいくのです。

 

ブルース・リーというスケール外の男


映画内でのブルース・リーも、なかなかにスケールの大きな男です。


箇条書きで彼のことを書いていくと

 

  • 親元を離れてバイトをしにやってくる
  • いとこの妹にちょっと惚れる
  • 「しっかり働け」と言われるも、「何をしていいか分からない」と言い切るトンデモバイトっぷりを発揮。その後、勝手な動きをして工場と商品を破壊。それがきっかけで麻薬が発見される
  • 麻薬の発見がきっかけとなり同僚といとこの4人が殺害されるも、特に本人に気にしているそぶりは見られない
  • 上司をボコボコにして責任者になり、嬉しくなってしまい踊る
  • 工場長と食事に行き、酔っ払ったあげく風俗に行く
  • 風俗帰りを好きな子に見られる
  • 仲間から総スカンにあい、ふてくされて再び風俗に行く
  • 風俗帰りに敵に襲われるもこれを撃退、しかしその間に仲間はみんな殺害される
  • 怒り狂ったドラゴン、ボスのもとに買い食いをしながら押しかける
  • なんやかんや戦ったあげく、最後はナイフでボスを殺傷
  • やりすぎた結果、逮捕される

まぁだいたいこんな感じの話です。

 

なんとなーくな映画


落ち込んだらとりあえず風俗に行くというあたりに愛着を感じずにはいられませんが、映画としては異常なまでにガタガタなのは分かると思います。


観ていて何度も心が挫けそうになるのですが、不思議と映画自体に怒りはありません。


考えてみると、まだ自分が小さい頃は「なんとなーく映画を観ていた」と思うんです。


金曜ロードショーであっている映画をなんとなくつけ、途中でお風呂に入ったりウトウトしたりしながら観ていたくらいの感じでした。


途中で女優が裸になろうものなら興奮したものです。


映画って、そのくらいな感じだったと思うんですよ。


この「ドラゴン危機一発」はその頃の自分と再会するための映画だった。


そう思うのです。


そう思うことにしたのです。

 

ポスターの評価


この映画がどのような映画なのか、ポスターがすべて表現してくれています。

 

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アップになったブルース・リー。
怪鳥蹴りのブルース・リー。
敵を投げ飛ばすブルース・リー。


画面内すべてがブルース・リーという、これじゃストーリーが何も分からないポスターとなっています。


しかし問題はありません。


そもそもストーリーはないのですから、のせようがありません。


キャッチコピーも意味不明です。


「全世界にうずまく興奮と熱狂のまっただ中」


なんの話でしょうか?


多分、ブルース・リーのブームがきてるよということでしょう。


分かるかそんなもん。


そもそもこの映画には関係ねぇだろ。


いやぁ、何から何まで興奮しますね。


唯一不満をあげるとしたら、ブルース・リーの裸の写真が小さいことです。


せっかくの美しい肉体をもっと全面に押し出すべきです。


それがあれば100点間違いなしでしたね。

 

その人さえいれば


今では、「この人さえいれば映画が成立する俳優」というのがとても希少になってきました。


スタローン、シュワ、チャック・ノリス、セガール、ジャッキーと、かつて世界中の悪と戦ってきた英雄たちもそろそろ引退の時期が近づいています。


まだ現役バリバリなのはJ.ステイサムくらいになってしまいました。


その全ての男たちの頂点であるブルース・リーのような男が再び現れることを、世界中の人間が祈っているはずです。


そんな祈りを元に、今日も1日20分の筋トレを頑張っているのです。


それでは。

 

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