映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

トロピックサンダー 《映画リテラシーの前に敗北と賞賛》

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映画の点数…76点
ポスターの点数…65点

 

演出、技術、お金、俳優の質、あらゆる分野において日本映画はハリウッド映画に叶わないというのは現実としてあって。


もちろん「これは誰がどう言おうがハリウッド映画よりも面白い」と自信を持って言える作品もたくさんあるのですが、総合的には悔しいけど負けているのかなと。


ただしその中でもどうにも捉えづらいジャンルがあると思っていて、それが「パロディ映画」です。


その噛み合わなさには、日本人とアメリカ人の笑いのセンスというものはかなり違っているということ、そして笑いというものには一定のリテラシーが必要だという理由があります。


例えば「このネブラスカ人め!」と言ったら「田舎者を馬鹿にしてるんだな」という意図は分かるのですが、どのくらい田舎なのかは行ったこともないですしよく分かりません。


また「このニガーが!」というセリフがあったとしたら、それを使用している人が黒人なのか白人なのかで意味が変わってきます。


時折このパロディというジャンルにチャレンジしてみるのですが、完全に理解して楽しむのは難しいのだなぁといつも思っています。

 

映画の感想

 

そんな鑑賞に一定のリテラシーのいるコメディ映画の中でも、さらに複雑な知識が必要な作品が『トロピックサンダー』でした。


無数に散りばめられたパロディの要素を答え合わせしているだけでも楽しい一作。


ただ前述の通り、それを全て理解出来ているかというと当然そんなこともなく、部分的には完全にちんぷんかんぷんな箇所もありました。


結局のところ、自分がどれだけハリウッド映画に対する知識があるかどうかが映画の満足度にダイレクトに関わってきます。


特にこの映画は「ハリウッドの裏側を皮肉る」映画です。


これが「アメリカを皮肉る」とかだとまだいいのですが、ハリウッドの裏側に対する知識がないと何一つ笑えないんですよね。


僕も正直ハリウッド映画は好きですけどハリウッドの舞台裏には何一つ興味がないので、説明されてもピンとこないことは多かったですね。


トムクルーズ演じる映画プロデューサーも何か元ネタはあるようなのですがよく分かりませんでした。

 

本気の本気の本気


映画のネタに対する知識がそこまでないにも関わらず、それでもこの映画を面白いと感じる理由は、俳優達が「本気の本気の本気」だということが全てだと思います。


何故かコメディ作品となると「気楽にやる方が正しい」みたいな空気感ってまだまだあると思うのですが。


コメディを本気で作る時には、役者が全力でやらないと何も面白くないんですよね。


だからこの作品内でのロバート・ダウニーJr.は面白いし、日本でも「トカゲのおっさん」を演じた松本人志は面白いです。


その「真剣度合い」に対してハリウッドは巨額の資金を突っ込めるところが羨ましくて、冒頭の大爆破シーンなんて全く映画に不要なのに入れてくるあたりが素晴らしいです。


人種差別や障害者差別のシーンも恐れずにいれてきます。


やるのであれば徹底的に描く方が、それがちゃんと差別に対する批判になることを知っているからですよね。


日本はどうしてもそのような差別を「見えないようにする」というやり方をとるので、その点でもやはり羨ましかったです。


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ポスターの評価

 

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ポスターはモロに「コマンドー」のパロディです。


ただやはり「日本と感覚が違うなぁ」と感じるのは、何か面白いことをするときに「俺たち!面白いですよ!!」と言い切るような姿勢が彼らにはあると思っていて。


日本においてのお笑いは「面白く無さそう」にしておくのが普通なのかなと思ってしまうんですけどね。


特にお笑い芸人のDVDなんて、パッケージだけ見たら何も面白く無いことがほとんどですし。


ここらへんはもう、本当に感性の問題だなと思います。


ダウニージュニアの表情なんて、そこまでするかというくらい狙ってきてますしねぇ。

それでは。


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