ゴジラ(1954)《飛び抜けた気概のある作品とポスター》
映画の点数…80点
ポスターの点数…85点
こんにちは、ピースマイルです。
今や世界中で認知されている「ゴジラ」というキャラクター。
その一作目である1954年度版を鑑賞しました。
ゴジラやガメラ、そしてアベンジャーズやゾンビ映画も含め、何かキャラクターが出てくる映画の多くが「現実正解のメタファー」になっているのはよく知られた通りです。
シン・ゴジラに関しては間違いなく東日本大震災の影響は強く受けているのですが、特別にそれを強調したようなセリフなどは避けています。
一方でゴジラ(1954)は、もろに「水爆実験(第五福竜丸)」に対する怒りがメッセージになっていて、それを隠そうとすらしていません。
ポスターも同様に、かなり踏み込んだメッセージになっています。
作品の背景
第二次世界大戦(太平洋戦争)の終戦が1945年ですから、まだ終戦から9年しか経っていないにも関わらずこの映画が製作されたことに驚きます。
また、日本がアメリカから主権を回復したのすら3年前。
そして、第五福竜丸が水爆実験の被害にあってから半年での映画公開という今では信じられないスピードでの映画公開となっています。
映画は公開と共に空前のヒットとなり、当時経営に苦しんでいた東宝を一作で立て直したとすら言われています。
それだけ多くの人がこのゴジラという作品に注目したのは、映画自体のクオリティが非常に高く面白かった点に加え、そうした社会事情への不満や不安に対してのアンサーだったからではないでしょうか。
時代が違うとは言え、このスピードとダイナミックな発想で社会に対してのカウンターを仕掛けるというのは映画では難しいのだなと思います。
それでも今でも参考になる、むしろ今の日本の映画より優れた箇所のある映画であるのは間違いないですが。
死を正面から描く
この映画の多くの時間は議会や研究室などでの会話シーンに使われてます。
が、中盤でゴジラの最大の見せ場である「銀座破壊シーン」は毛色が違います。
まさに「逃げずに」死について真剣に向き合たシーンとなっています。
直接的に殺害するシーンは無くとも、高い所から落下する人、親子で泣き叫ぶ人、焼き殺されたであろう人、痛みがこちらにも伝わってくるような描写はキッチリと描いており、それはシン・ゴジラには無かった点でもあります。
特に破壊の限りをつくしたゴジラを引きでとらえた映像は東京大空襲を連想させるような強烈なシーンになっており、人々の中に残っている恐怖心がまだ生々しいうちでの撮影であったというのは疑いようもありません。
これらのシーンを観ていて勉強になるのは、映画において人に恐怖を与えるのは単に残酷な描写を増やすということでは全くないということです。
映画を鑑賞する人たちの心の中を覗き込みその人がどうやったら恐怖を感じるのかをイメージできていれば、技術や金や物資が揃っていなくとも優れたシーンが撮影できるということですね。
世を皮肉る
シン・ゴジラがゴジラを「超自然災害」的にとらえたのに対し、ゴジラ(1954)はゴジラを「破壊兵器」としてとらえています。
もっと言うなら核兵器として描いていて、とにかく原爆や水爆に対する怒りを強く感じます。
敗戦から9年でこれだけの怒りを世の中にぶつけているという姿勢にまず驚かされます。
それに加え、映画の最後では最終兵器となり得る技術を作り出した博士が自ら命を犠牲にすることで決着をつけます。
あくまでも「人間の意志では、破壊への願望は止められない」というほどに製作陣たちは人類を信じていなかったのでしょう。
その感性自体は映画の公開から60年以上たった今でも残っていて、例えばアベンジャーズ・エイジ オブ ウルトロンなどは同じようなテーマを持っています。
ゴジラは、無慈悲な大量破壊兵器に対する怒りであるとともに、人類に対する強烈な批判でもあったのだと思います。
ポスターの感想
映画もかなり踏み込んだ表現をしていますが、ポスターもかなりイってます。
現在では絶対に使うことができないコピーが堂々と並んでいます。
「水爆大怪獣映画」
「放射能を吐く大怪獣」
この二つだけで完全にアウトでしょう。
これだけでもいかに当時の日本人が原爆や水爆に対して怒りを持っていたのか分かります。
グラフィックデザインとしても非常に面白いですね。
画面左半分を使って真っ赤な文字でタイトルを表記するというバランス。
今の映画ポスターでここまで振り切ったバランスのポスターはちょっとありえないですね。
ポスターの全面からゴジラに対する圧倒的な恐怖と絶望感を感じることができます。
それでは。
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