映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

エンジェルウォーズ Sucker Punch 《映画もポスターも、ノレる人だけノレる作品》

ポスターの点数…70点
映画の点数…45点

監督・脚本 ザック・スナイダー
あえて言うならその他音楽衣装撮影キャスティング何から何までザック・スナイダー風味

 

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ザック・スナイダー監督について

こんにちは。ピースマイルです。


今回はザック・スナイダー監督のエンジェル・ウォーズについての文章です。


まず個人的なザック・スナイダー監督への思い入れですが、彼のフィルモグラフィー上で好きな作品というのは特にありません。


なんなら一本も好きな作品はありません。


ですが、気付けばなんだかんだ彼の作品はほとんど観ています。


観ると文句を言いたくはなるのですが、どうにも引きつけられる魅力のある監督なのだなと思います。


そのくらいクセの強い監督ですし、観れば必ず「まーたザックが馬鹿なことやってんな」という気持ちになる不思議な人です。


そんなザック・スナイダーの、初めて企画から脚本監督までこだわりぬいて作られた本作をレビューしてみます。

 

映画の感想

 

まず映画の感想からですが、前述通りですね。


「ザック、馬鹿やってんな〜」です。


少女の観る幻想(妄想)を具現化し幻想内のミッションをクリアすることで、現実でのミッションも解決していくというストーリーなのですが。


ミニスカ、セーラー服の金髪白人が刀と銃を手に大暴れするっていう設定。


もう、「これがやりたかったのねザック」の一言です。


発想は嫌いじゃないです。むしろ好きです。


時代設定とかそういうのを守る気はさらさらないし、傷ついても血もろくに出ないくらいリアリティはないのでこちらも「あ、そんな感じなのね」と安心して観ることが出来ます。


こういう開き直り方は好感がもてますね。


アクションシーンの映像の作り込みも「よっ!名人芸!」みたいな感じでテンション高く進みます。


むしろ最近のDCヒーローものの方がアクションシーンが大人な演出にしているくらいだなと感じます。


このくらい馬鹿っぽいのも久々に観てみたいですけどね。

 

不満点


とはいえ、やはり前述の通り僕はザック作品で好きな作品なんて特にないのです。


この作品も例外ではなく、不満点はやはりあります。


ワンダーウーマンもそうだったのですが、ザック監督は「強い女性」と「性的に魅力的な女性」を描き分けるのが苦手なように感じます。


苦手というよりは、描き方が不用意よいった感じでしょうか。


この作品の売りは「セーラー服の金髪日本刀ガール」なわけじゃないですか。


どうしてもそこからは「性の匂い」がつきまとうと思うんです。


ザック監督自身だって、その性的な魅力を理解したうえでこのような設定で映画を作ったと思うんですよね。


でも、この映画からはそのような性的な要素は限りなく排除しています。


平たく言えば、女の子がエロくない。


すごいエロい格好をしているのに、エロくないわけです。


それはさすがにテーマと一致しないのではないでしょうか。


この映画には「性的搾取をされている女性が自由を求めて抵抗する」というテーマがあります。


「セーラー服の金髪日本刀ガール」は分かりやすいメタファーだと思うんですよ。


だとしたら、やっぱり映画内で最低一箇所はむせびかえるような性的な演出が必要だったのかなと思います。


それが「男性を興奮させる」ことに成功していたら、そのカウンターとして「男性の愚かさ」も表現できたと思うんですよね。

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その裏返しの不満点


上記のように「性的要素を描く気がない」というのであれば、いっそのことそういう「抑圧された女性」みたいなテーマは入れない方が良かったと思います。


観ている間中こちらは「でもこのウラでは主人公達はひどい目にあってるんだろうなぁ」と思いながら鑑賞することになります。


そうすると、どんなアクションシーンを見せられてもノレないわけですよ。


爽快であればあるほど悲しくなる。


それが監督の意図したことだとは思うのですが、だとしてもちょっと重たすぎます。


それくらいなら、笑顔で楽しそうに日本刀を振り回す楽しそうな女の子を観た方が楽しいじゃないですか(そんな奴会いたくないけど)


やっぱりこの映画は「不快感を感じるくらいヘビーな映画」にするか「カラっとエロいエンターテイメント」にするかどちらかしか無かったように思います。

 

それはそうと


それはそうとしても、やっぱりザック監督の映画には一定の魅力があるなと感心します。


どう転んでも「一言二言言いたくなる作品」を必ず提供してくれるわけじゃないですか。


毒にも薬にもならない作品を100億円かけて作られてもこちらは面白くないですからね。


そういう意味では現代において最も「毒成分の強い」映画をきっちり提供してくれる希有な監督なのだなと思います。

 

ポスターの評価

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ポスターの評価も、映画の評価と同じになってしまいます。


そういう意味では「映画を的確に表現している」いいポスターですね。


細やかに作り込まれたスチームパンク風な背景に、人形のような美しさの少女達が威風堂々と立っているという構図。


なんというか、悪いところは全くないし、これで完璧だと思っているのですが、やっぱり物足りないなと思ってしまいます。


やはりポスターからも「にじみ出るエロ要素」は感じさせないといけなかったと思うんですよ。


確かにそれだと女性客が減るのかなとは思いますが、のこのこと鼻の下をのばしてやってきた男性にはまさに「サッカーパンチ(不意打ち)」出来るじゃないですか。

 

キャッチコピー


特筆すべき点と思いますが、キャッチコピーは素晴らしいと思います。


「お前の世界は自由か。」


いいですねー。たった9文字で映画の全体像を表現できている素晴らしいキャッチコピーです。


綺麗な少女達が「お前」と挑戦的な言葉を使うのもドキッとして良いですし、「世界」と「自由」はまさにこの映画の本質を表す言葉です。


この言葉を頭の片隅に入れたあとに映画を観ると、何か自分の中で考えるものがあるのではないでしょうか。とてもいいコピーでした。

 

まとめ

 

今日の文章だけ見ると、とにかく僕が「エロい女を見せろ」と主張しているばかりになっているのが気になりますが、まぁそれはそれで観たいという欲求はあるのですが、そういうのは別に他のポルノでもなんでもいいわけですよ。


そうじゃなくて、映画内に「エロを思わせる要素」を持ち込むならば、そこはかなり神経をつかわないと失敗するよっていうことです。

 

僕の大好きな女優さん、松岡茉優さんは、性的要素を出さない方が良い映画では胸元を絶対に主張しないような服装にするなど気を配っているそうですよ。
素晴らしいです。

 

というわけでザックよ。


次に何か映画を作る際には、松岡茉優さんをアドバイザーに加えるといいと思いますぞ。

 

それでは。

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感想(1件)

 

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