映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

ブラックパンサー Black Panther《嘘はだめ。それはない。そんなキャッチコピー》

ポスターの点数…35点
映画の点数…76点

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意味不明なキャッチコピー


まず、ポスターのビジュアルの前に許しがたい問題があります。


キャッチコピーの「国王として守るか?ヒーローとして戦うか?」


いや、そんな映画じゃないでしょ。


どのような映画かも知らずにキャッチコピーをつけるとは思えないので、これには悪意を感じます。


このキャッチコピーだと、「国の守りを犠牲にしてでも正義のために戦わなければならないものがある」、みたいな解釈じゃないですか。


そんなシーンないでしょこの映画。


確かに映画の終盤では「自分の国のことだけでなく、他国とも協力しあっていこう」というメッセージはありますよ。


でも、戦うというのも違うし、他国と協力するのもヒーローとしてではなく国王としてです。


こういう勇ましいキャッチコピーの方がお客さんが入ると考えたのでしょう。


僕ははっきりと不快です。


こちらのポスターの「国王とヒーロー…2つの顔をもつ男。」だったら分かります。
少なくとも嘘はついていませんから。

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でも「国王として守るか?ヒーローとして戦うか?」は嘘でしょう。


この理屈は、どちらかと言えばヴィランのキルモンガーの理屈です。

 

ビジュアルの評価

 

前述の通りキャッチコピーは大嫌いですが、ビジュアルの方はとてもいいですね。


いずれのポスターも「ちょっと異質な未来文明」チックな雰囲気を出していてブラックパンサーの世界観をうまく表現しています。


それはそうと、ブラックパンサーがレクサスに乗っているのは日本人としてはちょっと嬉しいですね。
でもこれだけの技術国家なら自分たちの車くらい作ってそうですけど笑


ブラックパンサーは肉体で戦うキャラクターなので、筋肉の立体感や躍動感を感じるポージングなんかもうまく取り入れています。

 

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ヴィランの不在


とはいえ、ちょっと不満もあります。


僕は今回のポスターには、どこかに必ず敵であるキルモンガーを入れる必要があったのではないかと思うのです。


映画を観た方なら分かりますが、今作ほど血の通ったヴィランは他にいません

(ロキは魅力的ではありますが、多分血は通ってません笑)


そのヴィランとブラックパンサーが向き合い、対決することがこの映画の本筋だと思います。


決して「新ヒーロー!ブラックパンサー誕生!ヒューヒュー!」みたいな映画じゃないと思うんですよね。


どうにかその辺の考慮があればもっと良かったなと思います。

 

映画の感想


世間的な評価もとても高く、興行収入的にも本家のアベンジャーズを超えたりとメガヒット。


ましてやほぼ黒人スタッフ、黒人キャストでのビッグバジェットムービーでしっかりと結果を出したというのは歴史的なことであり大大大尊敬しおります。


とはいえ、映画の感想としては僕は世間ほどにはノレなかったです。


例えば同じマーベルで言えばガーディアンズシリーズの方が映画としては魅力的だと思いますし、同じ監督作で言えばクリードの方が面白いと思います。

 

王子様設定


まず主人公が「王子様で、王様で、力も強くて、尊敬もされてて、いい感じの元カノと、いい感じの妹がいて、信じられないくらい金持ち」という設定の時点で「ノレねぇ〜〜」と思ってしまうのです。


そして彼の悩みは「いい王様に俺はなれるだろうか」というもの。


「ごめん、俺にはそれ分かんないわ」としか思えないので、気持ちがあまり映画に入っていかないんですよね。


映画としては魅力的ではあるのですが、全部が他人事のような気がしてしまうんです。
せめて「他は全部そろってるけど、実は童貞」とか「金はあるけど、常識がない」とか、こちらが共感できる要素を何か入れるべきだったと思うんですよ。


まぁ別に童貞である必要はないですが、弱点がなさすぎてこちらが応援する隙もない感じなんですね。


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最高のヴィラン


一方でマーベルシリーズで最も魅力的なヴィランが登場します。


クリードの主演だったマイケル・B・ジョーダン演じるキルモンガーこそが、本作のメインテーマと言えるのではないでしょうか。


「お前らは弱者に何もしてこなかったじゃないか。だから俺がやる」というメッセージには普遍的な強さがあります。


はっきり言ってティチャラ王子よりも存在感も魅力も数段上でした。

 

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MCUらしい一歩先の映画


不満がない映画ではありませんが、やはりこの映画が存在する意義というのは大きいと思うんですよ。


映画の最後に王子が「困っている人がいるとき、賢い人は橋をかける、愚かな人は壁を作る」というセリフ。


これは明らかにドナルド・トランプ政権に対するメッセージですが、当然ながらMCUシリーズが生まれた2008年当時にはトランプ政権なんてありませんでしたし、現在とは世界情勢も大きく違います。


時代の流れとともに自分たちの映画もチューニングをなおしていってるわけですね。


そこにまだまだ新人のライアン・クーグラー監督をぶつけていく当たりが、本当に素晴らしい会社だなと思うのです。


いよいよアベンジャーズシリーズも終幕します。


今後のブラックパンサーの流れがどうなっているのかは分かりませんが、続編が出たら当然追いかけようと思います。


それでは。


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