96時間 TAKEN《需要と供給と広告のバランス》
ポスターの点数…合わせて45点
映画の点数…合わせて70点
リーアム・ニーソン主演のアクションサスペンス。
この10年ほどでこの96時間、ジョンウィック、イコライザー、ジャックリーチャー、コンサルタントなどと「神経質な面を持つ殺人マシーン」というジャンルが乱立しました。
その主演俳優陣がすべて豪華で、何故このようなジャンル映画にオスカー俳優達がぞろぞろ集まってきてるのだろうとなかなか興味深い様相でございます。
映画ファンとしては単純に「どれが楽しいかなあ」などとポップコーンを片手にヘラヘラしてれば良いのですが、制作陣はたまったものではないでしょう。
今回はそのなかでも96時間【原題:TAKEN】のポスターワークから制作の苦労に迫ってみたいと思います。
いずれも似たような作品
上記にあげた作品、そしてそれぞれの続編もかなり大きな共通したテーマがあります。
- 主人公がめっちゃ強い
- 主人公がめっちゃ有名俳優
- 1人VS多勢
- 主人公が神経質
- 悪い奴をやっつける
という基本構造です。
さらに、ほとんどの作品はガンアクションです。
となると、自然とポスターの方向性が決まっていきます。
主人公は大きめにすること、銃をもたせること、ダークなトーンにすること、などです。
このあたりが、お客さんの需要に応える最低ラインとも言えるでしょう。
「ガンアクション映画が観たいんだよな」という方に対して、最低限伝えておくべき情報ということですね。
そこから先のデザインが、それぞれの映画の個性になっていきます。
シリーズ1作目ポスター
改めてシリーズ一作目のポスターです。
こちらは日本版ではありません。
こっちのポスターの方が興味深い点が多いです。
一作目の時点でみられる工夫はなんでしょうか。
まず一番分かりやすいのは、劇中でのセリフをポスター内にいれていることです。
特に「I WILL FIND YOU...I WILL KILL YOU」というセリフは劇中最もかっこ良く印象的なセリフの一つでしょう。
ポスターをみるだけで「娘がさらわれる話なんだな」ということや「主人公は冷静で怖い人なんだろうな」ということが分かります。
このあたりは誰にでも分かるように作られているメッセージと言えます。
その他にもポスターから分かることはあるのですが分かるでしょうか?
主人公の個性の説明
まず、主人公が前向きな殺人者ではないという点。
顔と表情に注目。
「よっしゃー!やってやるぜー!」という顔をしていません。
「参ったなー、やりたくねえなあ」という顔です。
これだけでも主人公ブライアンの個性が見えるわけです。
銃も構えているというよりは、隠しているという感じですね。
そして革ジャンを着ています。
「だから何だ?」と思われるかも知れませんが、これもまた大事な要素です。
この手の殺人マシーンというにおいて、革ジャンとスーツは定番中の定番です。
「 ブレード」や「ターミネーター」「007」などで使用されているように、衣装だけで強さを感じ取ることが出来るという大変便利なアイテムなのです。
あなたも是非、今日はちょっと殺人マシーンを気取っていきたいという時には革ジャンを一枚羽織って出掛けてください。
2作目のポスター
このあたりで早くもにネタに困っているような気がします笑
明らかに一作目のポスターの方が良く出来ていますね。
一作目のポスターの要素をおさえつつ、レイアウトを変えたバージョンといったところでしょう。
デザイナーとしては「これでいいのか?!」と思う部分もあるのですが、映画を観る方にとってはこれくらいがいいのです。
パッとみて「ああ、リーアムニーソンのあの映画の続編ね」と一瞬で理解できなければなりません。
広告的視点から見るとこのくらいのバランスもありでしょう。
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3作目のポスター
ついに、続編らしさすら消えました。
これだけではシリーズの3作目などということは分かりません。
映画の内容的に、今作では主人公が追われる側なので「隠れている」という構図にしたのだと思われます。
が、工夫と言えるものも特にないですし、映画同様にシリーズを重ねる毎にパワーダウンしていっているのがポスターからも伝わってくるようです。
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ポスターの評価のまとめ
ライバル映画達も多く、限られた条件のなかで作品作りが求められる映画とそのポスター。
今作96時間シリーズにおいては、残念ながら三作品やりきるアイデアと体力が持たなかった印象です。
「前作が好きだった人はきっと観てくれるはず」という気持ちでうまくいくほど単純なものでもありません。
どんな局面でも「これが最適解だ!」というのを追求していかないと、ポスターもたちまち陳腐になってしまいます。
そんなポスターが、多くのお客さんを映画館に連れて来られるとはちょっと思えないですね。
いずれジョンウィックなどのライバル達のポスターにも迫ってみたいと思います。
映画の感想
特に1作目は非常に楽しかったです。
アクション映画といえども近年は2時間とか2時間半を軽く超える映画が多いなか90分でコンパクトにまとめてあるのが素晴らしいですね。
「余計なドラマとかいらないんだよ」と言い切るような姿勢はとても好みです。
おかげさまで主役のブライアンは、一人の娘を救うためならば何人犠牲になろうと全く気にもしませんし、善悪の葛藤など全くありません。
とにかく一直線。そこが素晴らしい。
映画を見終わったあとに「うん・・・・・でもいくらなんでもやり過ぎだよね?」と考えてみるのもまた面白い。
そもそもジャンル映画は、ボケとツッコミみたいなものだと思うのです。
ツッコミありきで作って貰わないと、こちらがやることがないと思っちゃうんですよね。
ところが2作目以降ですよ。
ボケとツッコミの関係が崩れ出します。
優れたボケに対してはこちらも堂々と突っ込めるのですが、あまりにも突飛なボケをされるとこちらもノリきれません。
「えーっと、なんでこの人はここにいるんだっけ?」「なんでここに見張りはいないんだろう?」みたいなシーンが増えていき、そういう粗さが増える毎に「なんかどうでもいい」という気持ちになっちゃうんですよねー。
この手の映画をストレス無く楽しくみるためには、逆に丁寧な作りが必須なんだよなと思う次第です。
それでは。
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