映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

ボヘミアン・ラプソディ Bohemian Rhapsody

監督 ブライアン・シンガー

脚本 アンソニー・マクカーテン(英語版)

製作 グレアム・キング ピーター・オーベルト ブライアン・メイ ロジャー・テイラー

出演者 ラミ・マレック

 

ポスターの点数…65点

映画の点数…87点

 

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日本版ポスター


ビジュアルとしては最高点


映画のポスターについて。


日本版ポスターとアメリカ版のポスターで大きな改変はなく、どちらもとても良いポスターになっています。


映画を観て見ると分かりますが、ラストのライブエイドの映像も含めこのような夕方をイメージするようなライブシーンはありません。


では何故このビジュアルが素晴らしいかと言うと、このオレンジ〜紫のグラデーションがこの映画のストーリーと密接につながっているからなんです。


自分のセクシャリティに揺れ動いたフレディ。


「バンド」「家族」「孤独」の中を揺れ動いたフレディ。


「栄光」と「絶望」を揺れ動いたフレディ。


出生名「ファルーク・バルサラ」と「フレディ・マーキュリー」の間を揺れ動いたフレディ。

 

このように、劇中での心の動きをビジュアル一枚でうまく表現できていると言えます。


もちろん、このポスターを見た人が全て「なるほど、これはフレディの二面性を〜」なんて思いつくわけではありません。


ですが少なくとも「明るいだけ、暗いだけの映画ではなさそうだな」と感じるはずです。


アートディレクターの方がどこまで意図したのかは聞いて見ないことには分かりませんが、そういうプロセスを意識したのは間違いないと思います。

 

タイトルのフォント(文字)について

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アメリカ版ポスター


タイトルであるBohemian Rhapsodyの箇所に注目してみてください。


Bohemianの部分はゴシック体、Rhapsodyの部分は明朝体で書かれています。

(当然英語では明朝体とは言いませんが、便宜上そう書いてます)


これもまたこの映画における二面性を表現しているようです。


ゴシック体と明朝体の組み合わせ、あざとさに気付かれないように表現するのは結構難しいんですよ。

 

日本語版のポスターでもゴシック体と明朝体の組み合わせですね。


ただし、英語版よりも「ラプソディ」の文字がより女性的なフォントになっています。

 

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ラプソディというフォントに注目


普通の明朝体よりも、もうちょっとゴージャスな感じですね。


なんとなくですが「ベルサイユの薔薇」っぽいフォントです。


少し幼さが出てしまっているとも言えますが、このような改変は有りではないでしょうか。

 

キャッチコピーが残念

 


今までかなり褒めてきましたが・・・・・・


残念ながら見逃せない点があります。


日本版におけるキャッチコピーですね。

 

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コピーがボヘミンてない


この映画、かなりロングラン公演になったので途中で色々とコピーが変えられてきたのですが、少なくともこのコピーはいただけない。


「伝説のバンド〈クイーン〉

彼らの音楽を唯一超える

〈彼〉の物語−。」

 


えーー・・・・・・。

 


このコピーを決めた人は、この映画を見たんでしょうか。。。??


そんな映画でした、これ?


フレディについて、クイーンについての知識があるとかないとかの話ではありません。


映画を見ればそのような内容ではないと分かると思うのですが。。。

 

この映画においてフレディは、

エゴ〈個人〉を全て捨て去りクイーン〈家族〉の元に帰っていく、そしてライブエイドにおいて人生の全てを取り戻す!


というストーリーです。

 

コピーにある「クイーンを超える」というのがまず意味不明です。


超えるとか下回るとかそういう対象としてクイーンは描かれていません。

 

では、「クイーンの音楽よりも感動する、彼の壮絶な実話」という意味でしょうか?
それも意味不明です。


この映画内ではクイーンの音楽をガンガンに流しまくり、そのメロディや歌詞を引用しながらストーリーを進めていきます。


クイーンという素晴らしい音楽ありきの映画であり人生物語です。


なんでこんなコピーがついちゃったのでしょうか・・・

 

そもそもですが、この映画を観た観客の中には「クイーンも聞いたことない、フレディとか誰か知らない」という人もたくさんいるわけです。


そういった方を映画館に呼び込むのに「伝説のバンド〈クイーン〉彼らの音楽を唯一超える〈彼〉の物語−。」というコピーが効果的とは思えないんですよね。


というわけで、コピーの分をまるごとマイナス点として65点としました。


アメリカ版ポスター2


ちなみに、アメリカ版ではこちらのビジュアルも多く使われているようです。

 

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こっちもいいデザイン


アメリカでどちらが多く使われていたなどは不明ですが、少なくともあまり日本では宣伝に使用しなかったのは正解ではないでしょうか。


このポスターだとあまりにもフレディの個人伝記のような雰囲気が強すぎます。


フレディに興味のない方を呼び込むには、ちょっと難しいデザインではないでしょ

うか。


ま、音楽性とかを全部抜きにすれば、フレディもヒゲのはえたオジサンですからね。


決してイケメンとして売れたわけではないフレディとクイーンですから、女性客をグッとこさせるのは厳しいでしょう。


個人的にはとても好きなデザインですけどね。


ここまで堂々としたポスターを作れるのはとても羨ましいです。

 

 


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映画の感想


個人的な音楽の嗜好としては、中学くらいからパンクスやグランジにはまっていたこともありクイーンというバンドはほとんど聴いたことがありませんでした。


むしろそういった音楽側からすると真逆の音楽というか、生理的に相性の悪い音楽だと言えます。


なので、音楽が好きとかではなく映画として興味があったので鑑賞しました。


その結果から言うと・・・・・

 

クイーンにどハマりしちゃっています笑

 

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ライブシーンは反則級

 

とにかく音楽、音楽、音楽


この映画はかなり難産だったのは広く知られるところですが、監督や脚本や演者がコロコロ変更されていくうちになかなか歪な作品になったと思っているんですよ。


特に脚本に関してはうまくいっていない箇所が多いと思っていて、
「いくら史実とはいえ、このエピソードは映画に不要では?」といったシーンも多かったです。


では何が素晴らしいか。


そりゃあ音楽が素晴らしいんですよ!!


「今までクイーンをちゃんと聴いていなかっただけでは?」というわけではありません。


この映画の仕掛けとして「この音楽、このライブシーンでいかに観客を感動させるか」ということに注意を払って物語が作られているんです。


シーンごとに密接に音楽が絡み合っているんですね。


だから多少脚本がおかしかったりもすると思うんです。


それでもクイーンの音楽の力を信じて映画全体を構成した。


この潔さこそがこの映画の成功の秘訣だったのでしょう。

 

アナ雪と似ている現象


この仕組み、実はアナと雪の女王の作りと少し似ています。


アナ雪の方も、実は脚本(特に後半)はおかしな点が多々あります。


ですがあれだけのヒットを記録した。


それは間違い無く、レット・イット・ゴーという信じられないような名曲があったからです。

 

あの曲が誕生したあと、製作陣は楽曲に合わせて物語を変更したそうです。


それくらい音楽の力がすさまじかった。

 

映画のつくりとしておかしな点があること踏まえても、現にこちら観客は感動し涙を流したわけです。


その時点で製作陣の勝ちですね。

 

100億円超えに納得の一作


というわけで、この作品が2018年最大のヒットとなったことにはホッとしています。


そうでなかったら、もしかしたらヘリコプターの映画とか、少年探偵の映画とかが一位だったかも。。。


いや、みなまで言うまい。



というわけで、もしも劇場でまだ見てないかたはオススメです!

 

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もう一度クイーンを聴きなおそう

 


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