映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

東京2020公式アートポスターについて

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東京オリンピックポスター


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


東京オリンピックのポスターが公開されました。

 

http://東京2020公式アートポスター

 

正式な名前は【東京2020公式アートポスター】というらしいです。


最近では「オリンピック」と限定した言い方をすると、パラリンピックが含まれていないような感じがするからでしょうか、「東京2020」というかなり曖昧な表現がされています。


でも一般的には普通にオリンピックと言葉にしているし、テレビでもわざわざ両表記は厳密にはされていません。


それはおいといて、とにかくポスターが決まったわけです。


今回はそのお話を少ししたいと思います。

 

ビジュアル表現として


まず、いずれのポスターも「ああ、さすがだな、カッコイイな」と思えるポスターでした。


恥ずかしながら存じ上げなかったアーティストも数名いたのですが、いずれも素晴らしいビジュアルだと思います。


個人的な好みで言えば、ヴィヴィアン・サッセンさんの手がけたポスターが一番「好き」です。

 

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「好き」と「適している」はまた少し違うのですが、このポスターに関しては「好き、だし、オリンピックのポスターとしても素晴らしいな」と思います。

 

選考に関して


メディアでこのニュースが扱われる際には


「マンガ家・浦沢直樹さんらが作成した~」みたいな表現をよく見かけました。


おそらく知名度で言えば浦沢直樹さん、荒木飛呂彦さん、蜷川実花さんあたりが広く一般的にも知られた方々と思います。

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狙いは当然ながら、国民全体に対してオリンピックに興味をもってもらいたいというメッセージです。


すごく極端にいえば、日立や日産が嵐を広告に使うのと同じです。


何故なら、浦沢直樹さんや荒木飛呂彦さんはマンガ家としては世界レベル、オリンピックで言えば当然金メダル級なわけですが、ポスターを作るという点においてはプロではないからですね。


あくまでも「浦沢直樹さんのマンガとしてのパワーを」→「ポスターにする」→「ことによって、オリンピックのイメージアップをはかる」という手順があります。


一方で、佐藤卓さんや大原さんら「グラフィックデザイナー組」はニュアンスがまた異なります。

 

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佐藤卓さんなんてグラフィックデザイナーで知らない人はいない方で、グラフィックデザイナー界では金メダリストです。


よって佐藤さんらに求められるものは「グラフィックデザインを通じ」→「オリンピックのイメージアップをはかる」とかなり直接的な力量が問われるわけですね。


このように同じポスターという扱いながら、それぞれ役割が少しずつ違うのが特徴ということが分かると思います。

 

 

過去のオリンピックポスターに関して


ここで、過去のオリンピックの公式ポスターを振り返ってみます。


過去の大会でも、いくつかのポスターが公式ポスターとして扱われています。


ただし、「メインのポスター」と「サブのポスター」でハッキリ使いわけています。


例えば近年ではリオ、ロンドンのポスターはこんな感じ。

 

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モスクワオリンピックのポスターは、少し政治色を感じさせるポスターですね。

 

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実際、複数の国がオリンピックをボイコットしたという苦い過去があります。


そして1964年の日本のオリンピックのポスター。


亀倉雄策さんという、日本グラフィックデザイナー界の父のような人が手がけたポスターです。

 

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日本びいきな感じも含めてですが、僕自身は過去すべての大会ポスターの中でも最も優れたポスターだと本気で思っています。


あのー、別にナショナリズムがどうこうとか言うつもりは全くなくて、単純にグラフィックデザインとしてあまりにも素晴らしいなと思ってるだけです(こういうこといちいち言わないといけないの時代ってのがちょっと面倒だよなぁと思ったり)。

 

今回のポスターに関して


公式サイトの言葉を一部引用すると【東京2020大会では、国内外のアーティストにオリンピックまたはパラリンピックをテーマにした芸術作品を制作いただき、それらを東京2020公式アートポスターとして機運醸成に活用していきます。 】とあります。


うん。


ちょっと何言ってるのか分からないサンドイッチマン風に)。


ようは、このポスターを使って「オリンピックを盛り上げたい」んですよね。


なるほど。


でも、メインのポスターというものは、ないんですよね?


2020年現在、世界中で「多様性」というものが求められるようになりました。


パラリンピックの注目度が増しているのも多様性に対する理解があってこそです。


このように公式ポスターが多様化しているというのも非常によく分かります。


コンセプトは分かります。


それでも僕はやっぱり、今回のポスターのあり方を好きにはなれません。


「結局のところ、誰も公式ポスターに対しての責任もとるつもりはないし、コンセプトも決める気がないだけでしょ」と思っています。


佐野さんの公式ロゴ騒動、メイン会場の設計の際から思っていたのですが、今回のオリンピックって何のためにやるんですか?


何故オリンピックをやらないといけないんですか?


そのコンセプトがついに決まらないまま進んだ結果のポスターだと僕はどうしても思ってしまいました。

 

責任者とコンセプトの不在


例えオリンピックのポスターであったとしても、基本的な目的は「集客」と「イメージアップ」です。


では、今回のポスターは「誰を集客したくて」「どんなイメージを目標としている」のでしょうか。


僕にはどうしてもそれが見えてこない。


というよりも、それを具体的に言葉に出来る人は日本にどれだけいるのでしょうか?
そのフワリフワリとしたイメージを、明確なビジュアルにすることを「グラフィックデザイン」と呼ぶのだと僕は思っています。


だとしたら今回のポスター群は、申し訳ないけどデザインとしては失敗しているのではないかと思いました。


「2020年の東京オリンピックのあるべき姿はこれだ」というビジョンのないままのビジュアル化。


その曖昧さがそのままポスターとして浮かび上がってきかたのようです。


繰り返しになりますが、一枚一枚のポスターはカッコイイんですよ。


でも、そのポスターを作るプロセスに大きな欠陥があったと思います。

 

あえて一つに選ぶのならば


では、たった一つ公式なポスターとしてメインにするならばどれが良いでしょうか?


僕はやはり公式ロゴデザインを作成された野老 朝雄さんのデザインポスターが最もふさわしいと思います。

 

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多様性を感じるポスターでもあり、かつ明確な日本らしさ、力強さを感じるビジュアルだと思います。


1964年の傑作ポスターに対するアンサーのようでもあり、2020年の新しいデザインとして最も適していると感じました。


これから先、日本や世界においてどのポスターが最も使用されるかは分かりません。


僕個人の理想で言えば、このポスターがメインになるといいなと思います。

 

まとめ


僕自身、もうオリンピックには全く興味はありません。


この5年以上のドタバタを観ていて応援する気は全く無くなりましたし、おそらくどの競技も観ることはないでしょう。


ましてや今回のアーティストの方々のように、仕事で直接関わっているわけでもありません。


すべては「オリンピックに関心はなく」「オリンピックの仕事もしてない」人間の負け惜しみだと思ってください。


ただそれでも、グラフィックデザイナーとしてはハッキリと今回のポスターのあり方には納得いかないな、と思った次第でございます。


それでは、また。

映画ポスターランキング2019 《1位は自分でも意外な一本》

 

 2019年映画ポスターランキング


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


スターウォーズEp.9の公開をもって、なんとなく僕の中で2019年も終わりになりました。


今回は、2019年の映画ポスターで優れていたと思うものをランキングにしました。
ルールとしては

 

  • 2019年に日本の劇場で公開されたもの(本国公開が2018年のもの含む)
  • 映画の出来とポスターの出来は関係ない
  • ビジュアルとしてカッコイイかどうかも大事だが、あくまで映画の内容を踏まえたポスターになっているかが重要


って感じです。


まぁエンタメである以上は個人の好みが多少入ってしまうのですが、厳密さを求めずになんとなく読んでいただけると幸いでございます。

 

 

第5位 JOKER

 

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ま、これはもう僕が評価するというよりも、世間的に十分評価されたポスターだと思います。


特に日本版ポスターもほとんど本国版と同じデザインを踏襲しているあたりが良かったのではないでしょうか。


このJOKERをキッカケに、日本のポスターも過剰に情報を詰め込んだポスターから離れてくれると嬉しいんですけどねぇ。


そんな期待も込みでランクイン。

 

第4位 グリーンブック

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2019年のアカデミー作品賞ですが、この作品が好意的に受け止められた理由の一つはこの映画ポスターも関係しているのではないかと思っています。


劇中に登場する車のカラーを活かしたポスターなのですが、パッと見て「なんか幸せそうな映画だぞ」と感じませんか?


近年のアカデミー作品賞はヘヴィな内容の映画が受賞してきました。


そのカウンターとして、全体として楽しい雰囲気のある映画が評価されたのではないかなとも思うのです。


このグリーンブックに関しても、日本版ポスターの青空加工がしてあるのもアイデアとしてありだなと思いました。

 

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第3位 女王陛下のお気に入り


どうしても本国版ポスターに比べ日本版ポスターは過剰な情報が多く文句ばかり言ってしまうのですが、なかには「いや、これは日本版の方が良いのでは?」と思うこともあるわけです。

 

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そしてこの《女王陛下のお気に入り》の日本版ポスターはかなりいいんじゃないかなと思っています。


キャッチコピーも主張しすぎずさりげなく添えられているのですが内容はというとシャレがきいてて皮肉っぽさがあるいいコピーだなと。


このキャッチコピーがあるおかげで「ちょっとコメディでもあるのかな」と予感すると思うんですよ。


この「ごめんあそばせ」の一言が映画全体の軽やかさと禍々しさをうまく表現できていますよね。


もしもこの作品が興行収入1000億円を目指すタイプの映画だったら、こうはいかなかったと思います。


ある程度小規模な作品だからこそ、自由度と完成度の高いポスターになったのかなと。
本来は逆だと嬉しいんですけどね。

 

第2位 ジョン・ウィック3

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ここにきてノリにのってるキアヌ・リーブス


今や代表作になったジョン・ウィックですが、シリーズ3作目では映画もキレキレだしポスターもキレキレでした。


こちらのポスターは正直に言うと「映画の内容に合っているか」はあまり関係ないです。

 

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それよりも「いかに!いかにジョン・ウィックがスタイリッシュでクールな映画なのか!!」ということを強烈に訴えかけるポスターですね。


この映画に関してはそういうポスターの方が相性がいいと思っていて、お客さんもキアヌ・リーブスにうっとりするために行くわけでしょう(半分以上は男性な気もするが)。


そういう意味においては「ポスターと映画の相性はバッチリ」とも言えますね。

 

 

第1位 ファーストマン

 

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これは日本版ポスターではなく本国版ポスターのことを指します。


以前ブログ内で日本版ポスターを激しく非難しましたが、本国版ポスターはとても素晴らしいポスターだと思います。


宇宙飛行士の孤独、もう今はいない子どもを思う父親、妻と心が離れていく夫。


家庭でもなくNASAでもなく地球でもなく、ここではないどこかへ行ってしまった人間の顔というものを極めて少ない情報で描き出しています。


映画を観る前は「なんでこんなにつまらなそうな顔なの?」と興味を引き、映画を観た後だと「彼の人生は果たして幸せだったのだろうか」と思いはせる。


まさにビジュアルも優れており、映画ポスターとしても優れている傑作です。


ライアン・ゴズリングとアートディレクターがいかに良い仕事をしたか分かるポスターですね。


映画そのものは「こりゃ傑作だ!」とまでは思いませんでしたが、今振り返ってみるととても素敵なポスターだったなと思います。

 

ワースト1位 キングダム

 

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うーん。


他にも「こんなポスターはダメだ!!」みたいに怒ったポスターはたくさんあった気もするんですけど、ここはキングダムをワーストで選ばせてもらいました。


「情報過多なくせに、何が言いたいのか分からない」点や、「過剰に言葉で映画を説明してしまう」あたりなんかが「よ!!これぞ伝統的ダメな日本映画!」みたいな感じがしちゃって。


これよりダメな映画はたくさんありましたが、いつまでたっても日本の大作映画ってこんなレベルなのかなぁと考えると悔しくなります。


そんなわけで申し訳ないけどワーストです。


まとめ


映画の興行収入とはあまり関係のないランキングになりましたね。


アカデミー作品賞をとったグリーンブックが特別な輝きをもっていますが、その他は基本的には「商業主義な作品ではないが、映画としての完成度をギリギリまで追求した意欲作」が多いように感じます。


温度の高い映画だからこそ、ポスターのディレクションも熱くなるのかなと思ったり。


さて、来年も色んなポスターが観ることが出来たらいいなと思いますよ。


それでは、また。

映画ランキング2019 《ベッタベタなランキングです》

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2019年映画ランキング


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


スターウォーズEp.9の公開をもって、なんとなく僕の中で2019年も終わりになりました。


今回は2019年の映画ランキングを一応つけてみようかなと。


ルールとしては


2019年の映画であること


本国公開が2018年とかであっても、日本で2019年に上映されていたら2019年としてカウントすること


としてます。


まぁ、別に厳密なルールはないですけどね。


何の権威があるわけじゃあるまいし。


では、ご興味がある方は読んでいただけると嬉しいです。

 

第5位 ブラック・クランズマン

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鑑賞体験そのものが思い出になるような映画でした。


観ている間、イヤな気持ちになったり笑っちゃったり勉強になったりハラハラしたり。


映画の最後にはトリップした演出もあったりと、とても多角的に楽しめた映画でしたね。


人種差別を取り扱った映画は観るのに体力が必要ですが、このような手法もあるのだなと感心した次第。

 

第4位 トイストーリー4

 

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日本では低評価も目立った今作。


自分のまわりでも「3で終わっていて欲しかった」と言う人もいましたね。


でもやはり僕はこの作品は何があっても擁護したいと思っていて。


今までずっとアンディやボニーの気持ちを考えてきたウッディが、ついに自分の内なる声に従い出すというストーリーに涙が止まらなくて。


「自分の為に生きる」ということが、誰か大切な人とのお別れを意味することだという、ピクサースタジオめ、なんてこと考えやがる!という。


この20年以上、僕自身もウッディに幸せにしてもらったんだな、と本当に思いました。


ただただウッディに幸せになってほしいと願うばかり。


映画の出来としてはちょっと無駄な点も多かったという印象ですが、そんなの飛び越えての感動がありました。

 

 

第3位 グリーンブック

 

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世間では「クラッシュ以来の最低のアカデミー作品賞だ」なんて声もあったみたいですけど、個人的には「ディパーテッド」以来の10年ぶりくらいに好きな作品でしたよ。


この作品が所謂【白人の救世主】として描かれているじゃないか、という批判も理解できるのですが、その苦々しさも含めての素晴らしい映画だなと思ったんですけどね。


僕は別にこの作品が「完璧だから好き」というわけでもなくって、不完全さも含めての良さだと思っています。


でも何よりもこの映画が好きなのは、演技、演出、旅の風景、心情の移り変わり、そして音楽が非常に高いレベルでミックスされているという点です。


映画が終わる二時間たっぷりとロードムービーの心地よさを味わうことが出来て「ああ、映画館に来て良かったなぁ」と幸せな気持ちを噛みしめました。

 

第2位 スパイダーマン:スパイダーバース

 

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映画を見終わってしばらく、あまりの衝撃に興奮と絶望がグチャグチャになったような感情でした。


コミックスを映像化する、という手法の一つの完成形を見せつけられた気がして、「ああ、これはもう同じやり方では日本アニメは勝ち目が絶対にない」と思い知らされましたね。


映像レベルで遥かなレベルの差を見せつけられたうえに、ストーリーも一流、社会的テーマも押さえてある、キッズ向けアニメとしても十分(なんと2歳の息子までハマって見てました)、そして音楽が半端じゃなくカッコイイという、奇跡みたいな作品でした。


今年一番回数を多く観た映画でしたね。

 

第1位 アベンジャーズ エンドゲーム

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これを1位にしちゃうってのもバカっぽくてイヤなんですけど、ここはもう気持ちに素直な評価にしようと思いまして。


別にこの映画を“単体の映画として”完璧だとは思ってなくて、3時間はやっぱり長すぎるしストーリーの展開も納得いっていない部分も多いです。


とはいえ、エンドゲームの公開前後、これだけ多くの人と「エンドゲーム観た!?どうだった!?」と語り合ったことはないですし、SNSでもかなりの情報がエンドゲームに占められていたし。


日本での興行収入は大したことなかったみたいですが、それでも観た人の心を大きく揺さぶり、とにかく「語り合いたくなる」映画だったという点でエンドゲームが2019年ベストだと思いました。


僕なんかは別にマーベルオタクでもなんでもないんですけど、それでもこの10年間、彼らと共に過ごせた映画ライフは楽しかったなぁとしみじみ思います(まだ続いていくけどね)。


ありがとう、アベンジャーズ

 

 

 

次点


順不同ですが、他にも大好きな作品はあったのでいくつかご紹介。


スパイダーマン ファーフロムホーム
ジョン・ウィック パラベラム
ワンス・アポン・ア・タイム・イン ハリウッド
JOKER
女王陛下のお気に入り


あたりは、第5位に入ってもおかしくなかったかなと思います。


でもトップ4はガチガチに決まってるかな、みたいなランキングでした。


正直なことを言うと、2019年自体は映画の当たりは少なかった印象です。


全体的に小粒な作品が多かったなって気がしていて。


来年はもうちょっとぶっ飛んだ映画が観られたらいいなぁなんて思います。


そういえば、邦画が一本も入っていないのは残念ですね。。


どうしても時間がとれなくて「蜜蜂と遠雷」を観られなかったのですが、もし観ていたらランキングに入ったかな??


去年は「勝手にふるえてろ」と「カメラを止めるな!」という素晴らしい邦画に出会えたのもあったので、来年は期待したいと思います。

 

ワースト1位


一応ですけど、今年のワースト映画ものせとこうかなと。


えー、ファンのみなさん、ごめんなさい。


アクアマン


です。

 

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こんなこと書くと「お前がマーベル好きなだけだろ!!」って言われちゃいそうなんですけどそんなことなくって。


アクアマンは「脚本に無駄が多いし、キャラクターの作り込みが甘いから共感も出来ないし観ていてイライラする」というような状態が常に続いていた印象。


DCもJOKERのような最高の映画を作る実力派あるスタジオだし、今後も公開されたら観るとは思いますが、今作のような出来が続くならちょっと厳しいかなぁ。

 

まとめ


結果的に「映画史上で最も売れた映画」と「オスカー受賞作」がトップ3にくるという非常に恥ずかしいランキングになってしまいましたね。


でもランキング内の作品はいずれも忘れがたい名作ばかりだったので仕方ないですね。


毎年そうなんですけど、今年は特にリメイクや続編ばっかりだった気がする2019年。


来年は可能で有ればオリジナル新作の傑作に出会いたいものですけどいかがでしょうかね。


それでは、また。

ブラック・クランズマン 《すっきり飲みやすい猛毒》

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映画の点数…92点
ポスターの点数…75点

 

ストレートに面白い映画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《ブラック・クランズマン》です。


僕がこの作品のことを知ったのは、監督のスパイク・リーが今年のアカデミー作品賞の《グリーンブック》を批判していたことが最初だったように思います。


けっこう色んなことに積極的にガブガブ噛みつくタイプの監督ですが、個人的にはグリーンブックは大好きな作品なので「まぁそこまで言わんでも…」とも思ったのですが、指摘されていた点も「なるほど確かに」と思うところもあり。


やはり映画で差別というものを表現するのは難しいのだなと改めて思いましたね。


ではそんなスパイク・リーが描く「黒人(ユダヤも含む)差別」映画はどうなっていたのか。


まず素直に思ったのは「想像していたよりも、ストレートに面白い映画だな」ということでした。

 

映画のストーリー


まず映画の脚本が優れているのだと思います。


KKKや黒人差別、ユダヤ人差別、ホロコーストが無かったという発言、そして実際に怒った事件を背景に映画は進んでいくのですが、それらヘビーな史実をうまく脚本に取り込んでいます。


時には時系列をバッサリ無視して「映画として面白いかどうか」で映画を組み立てているようです。


KKKに潜入捜査を試みる黒人警察が、いかにしてKKKの犯行を阻止するか、逮捕までもっていくかが映画の基本設定となっています。


差別を取り扱った映画ながら、「バレるかバレないかサスペンス」だったりコメディだったりするわけですね。


シンドラーのリスト」や「デトロイト」のような描き方の映画もあるしどちらも好きな作品ですが、少なくとも2018年~2019年はブラック・クランズマンやグリーンブックのような軽やかなタッチで描く映画がウケたのでしょう。


近年は特にポリコレだったりフェミニズムが一部暴走したような事例もいくつか散見されたので、もしかしたら「もうちょっとライトに表現できないだろうか」と世界中がなんとなく感じていたのではないか、なんて思ったり。


そんな空気感の中でこの映画は軽やかに世間を驚かせたんじゃないかなと思います。

 

映画の良い点


上記にあるように、まず何より映画が面白いということです。


当たり前のことを言うようですが、これって結構難しい。


例えばトイストーリー4やアナと雪の女王2。


僕は大大大好きな作品ではあるんですけど、一部ストーリーがグラグラしている部分があるのも事実。


でも作品がどのようなメッセージを持っているのか紐解いてみると、実に考えに考えに考え抜かれたストーリーだということが分かります。


「メッセージが考え抜かれている」からこそ、それを映画化するに当たって脚本に不具合が出てくることってよくあると思うんです。


だから、その不具合だけを観て「この映画面白くなーい」と言われちゃうのは可哀想だなと思いますが。


ですがこのブラック・クランズマンは「映画として面白い」し、「メッセージもドッシリとある」映画です。


しかも色んな映画ジャンルのいいとこ取りでもあって。


ヒヤヒヤサスペンスもあれば、素直に笑えるコメディでもあるし、歴史的な重厚さも感じるし。


だから気付きにくいのですが、非常にすっきりしていて飲みやすいのに実は猛毒っていう映画で。


見終わったあとはしばらく体が麻痺しちゃうような感覚になりますね。

 

映画のラスト


ネタバレとまでは言いませんが、映画のラストにトリッキーな演出が待っています。


あれを映画の文法としてとらえると色々な意見が出そうですが、個人的はとても良かったと思いますね。


あれがあるおかげで「お前ら何安心して映画観てるの?ちょっとこっちこいよ」と現実に無理矢理放り込まれるような感覚になります。


それが映画を激辛にしてていいなと。


政治的主張の多い映画は好きでは無いんですけど、ホロコーストと同じで「実際にあったことは、実際にあったこと」として真正面からとられるのは必要なことと思うので。

 

ポスターの感想


英語オリジナルのバージョンと、日本のポスターのバージョンを見比べてみたいと思います。


まずこっちが本国版。

 

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主演の二人を左右に分割して、中央に“色的な意味で”白を配置して綺麗なレイアウトになっています。


文字情報も目ですぐに可読でき、洗練さを感じます。

 

一方、日本語版ポスター


なんだか急にガチャガチャしだしましたね。

 

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違いは「ポスター上部のキャッチコピーの面積がでかい」こと「主演の二人が画面中央に寄ってきている」こと「中央のKKKをイメージさせる白い布に、目がついている」という点がパッと目に入ります。


このうちの「主演を観やすくする」ということと「KKKを分かりやすくする」という点に関しては理解できます。


この時点でワシントン息子さんはまだまだ無名だし、アダム・ドライバー知名度も映画ファン以外にはそこまで無いでしょう。


KKKに関しても、近年再び話題になっているとはいえ知らない人も多いでしょうから。


ただそれは配慮したとしても、いくらなんでもこれだけ文字がゴチャゴチャしているのはやはりどうかと思います。


元々あったスタイリッシュさがほとんど無くなっていますからね。


痛快リアル・クライムエンタテインメント、みたいなコピーは不要ではないでしょうか。


結局何言ってるのかわかないし。


中央の「俺たちがすべて暴く」ってコピーも不要だと思います。


別にいいコピーでもないし、特にそういう映画のトーンでもないですから。

 

別案


個人的にはすべてこのポスターで良かったのではないかと思います。

 

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アメリカ国旗が黒くひっくり返っている、そこに黒人男性が立っている、というだけでもはや一つのメッセージを感じます。


タイポグラフィもオシャレで、この映画の持つ皮肉めいた姿勢やスマートさをうまく表現できていると思います。

 

まとめ


はからずもグリーンブックと鏡合わせのような映画であるブラック・クランズマン。


どちらが面白いかは人それぞれだとして、僕はどちらも鑑賞することでより自分の知識がより立体的になると思います。


グリーンブックにしろブラック・クランズマンにしろ、こういう映画がそんなにお客が入ってないってのはどういうことなんだと思っちゃいますけどね。


良かったら見てみてください。


それでは、また。

 

 

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スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け 《ネタバレ注意!!》

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映画の点数…53点(大甘で)
ポスターの点数…70点

 

新シリーズ、ここに終結


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はスターウォーズ スカイウォーカーの夜明け》です。


スカイウォーカーの夜明け(邦題)と、ライズ・オブ・スカイウォーカーではさすがに意味が違いすぎるのではないかと思っているので、これ以降は「エピソード9」で表記します。


さてスターウォーズの新シリーズ7~9が、本作で決着を迎えます。


今後もスターウォーズシリーズは一年にひとつずつくらい関連作品を作る計画があるとディズニー社は発表していますが、真偽はともかくとしてそれも今作エピソード9の評価次第となるのではないでしょうか。

 

僕とスターウォーズ


おそらく映画ファンと同じ数だけ「僕とスターウォーズ」という思い出や思い入れがあると思います。


スターウォーズが嫌いだという人も、それが映画史や現代デザイン史に大きな影響を与えたことは否定しないでしょう。


で、僕にとってのスターウォーズというのをほんとに軽くお話すると、最も偉大な作品はやはりエピソード4「新たなる希望」だと思っています。


あとは多くの方の意見と同じくエピソード1~3は残念な出来だと思っていて。


個人的には“最も好きなエピソード”は実はエピソード7「フォースの目覚め」なんですよね。


というのも、とにかくレイというキャラクターが好きすぎて。


キャラクターとしても好きだし、こればっかりは仕方ないんですけどタイプにも程があるくらいタイプってのは大きいです。


もはや完全に「好きな女が出てるからその映画も好き」という、最もダメな映画ファンなのです。


ところがその次のエピソード8「ラストジェダイ」は、もうぶっっっっっっっっっちぎりで嫌いな作品でして。


僕はこのスターウォーズ8を観るために往復200キロをバイクで移動したのですが、その思い出も含めて悲しい気持ちでいっぱいです(アイマックスの良い環境で観たかったので、県をまたいで観に行った)。


その間に公開された《ローグワン》と《ハンソロ》も結構ダメな作品だと思っていて、はっきりと自分の中で「ああ、もう僕の大好きなスターウォーズは無くなったんだ」という気持ちを感じていますした。


ダークサイドに落ちきった状態で観るエピソード9、僕と世界中のフォースのバランスを取り戻すことは出来るのか??

 

以下、作品の完全なネタバレを含みます!!

観てない人は観てから読んでくださいね。

 

映画の感想

 

まず最初に結論的なことを言います。

 

J.Jエイブラムスよ。 

君の意思は受け取った。

でも、ダメだったよな、わかるよ、しょうがねえ、とりあえず乾杯でもしようか

 

て感じです。

 

前述の通りですね、僕はエピソード8でスターウォーズは死んだものだと思ってるんですよ。

 

でもそんなことディズニーにもJ.Jにも言えないしさ。

どうにかするしか無かったわけじゃん。

 

で、どうしたかと言うと

スターウォーズ1〜7で積み上げた貯金があった→

しかし、エピソード8で信じられないくらいの借金を背負った→

仕方ないので、エピソード5〜6の貯金を下ろして返済した(しようとした)。

という方法でした。

 

皇帝の復活

映画の冒頭、画面がスクロールしていくオープニングがありますよね。

 

その一行目でもう笑っちゃったんですけど、『皇帝が復活した』っていう笑

 

皇帝が復活するのはもうCMとか観ていて分かっていたこととはいえ、まさかオープニングで言い出すとは思わなくて。

 

これってエピソード8を帳消しにするためには、もう時間がどれだけあっても足りないからいきなりぶっ飛んだ敵を用意したんだろうなって。

 

で、これも噂になってたけど『レイは皇帝の孫』ってのを比較的早い段階で説明して「ダークサイドに落ちないように気をつけながら、皇帝をやっつける」ってのが最終目標ってのを観客に示します。

 

つまりエピソード6の焼き直しなんですけど。

 

この時点でもう僕は腹をくくりました。

 

おそらくこの先、映画が終わるまで驚くようなことは無いって。

 

でも、もういいじゃん。

 

一度死んだ映画を、どうにかこうにか閉じようとしている監督を応援しようって。

 

映画の良かった点

 

もちろん映画に良かった点もたくさんありました。

 

冒頭、カイロ・レンが皇帝の元に辿りつく→スターデストロイヤーが膨大な数浮上するっていう流れはテンポよくて良かったですね。

 

「お、面白そうな映画が始まったぞ」って感じはしました。一瞬。

 

市場調査はかなりしたのでしょう、エピソード8で不満が爆発した点をなんとかケアしようとしていたのは良かったと思います。

 

まずローズは完全な脇役になりました(女優さんに罪はないのですが、やはりあのキャラは不要だったと思います)。

 

ヨーダとかベネチオ・デルトロとかジェダイの島にいた鳥とか、余計は人達は退場させました。

 

前回ひどい結末を迎えたルークをあっさりと復活させて、どうにかこうにか形にしてました。

 

えーーーっと。こんなもんかな、良かった点は。

 

もっと色々褒めたい気持ちはあるんですけど、特に思い浮かびません。。

 

ここから、かなり膨大な量の悪口を言いますが、「そんなの読みたくねえ!」って人はご遠慮くださいませ。

 

映画の不満点

 

これはエピソード8の時もそうだったのですが、また同じ失敗をしてます。

 

それは「映画として無駄な要素が多すぎる」ことです。

 

映画の最初の段階で「16時間以内に皇帝のアジトを見つけてやっつけよう!」ってのがテーマとして示されます。

 

そこからがひどい、ひどい。

 

  • 砂漠の星にヒントを探しに行く→ダサい剣を見つける、チューバッカ死亡、剣も奪われる
  • ポーが昔活動してた星に行く→元カノに会って敵の船の鍵をもらう
  • 敵の船に侵入→チューイは生きてた、鍵も奪還
  • エンドアに到着、皇帝の場所を示す鍵をゲット→次の瞬間に壊される
  • カイロ・レン、お父さんに説得されていい奴になる(エピソード7でそうしろよ)
  • レイ、ルークのところに逃げ出す→よく分からない理屈でやる気を取り戻す
  • 皇帝のアジトを見つけて最終決戦

 

まどろっこしいわ!!!!!

 

どう考えても16時間で間に合ったように見えないし、それまでに大量の仲間が死んでたけどそんなに仲間がいたように見えなかったし。

 

ドラクエじゃないんだからさ、一個クエストをクリアしながら次の場所次の場所に移動していくだけってどうなのよ。

 

その度にレイは好き勝手な行動をしてみんなを困らせてばかりで。

 

今回レイは全然仲間のことなんか信頼してなくて、もうほんとに勝手なことばかりなんですよね。

 


キャラクターの描き込みがダメ


上記の理由で、映画を通じてたぶん1時間以上は「特に必要のない場面」がずっと続いているという。


理由はけっこう分かりやすくて、今作は「レイはダークサイドに落ちるのか」と「カイロ・レンは良心を取り戻すのか」がテーマとなっていて、その二つが解決すること=(イコール)皇帝に打ち勝つ、というストーリーになっているからなんですね。


よって、フィンやポー、ローズやチューイ、新キャラの数人なんかは全く映画に必要ないんですよ!!


いやぁ、それはダメでしょう。


J.Jはエピソード7で魅力的なキャラクターをせっかく作ったのに、なんでそれを放棄したんですか?


例えばフィンは「元ストームトルーパーが、ついに自分の居場所を見つける」とか「ローズ、あるいはレイとの恋物語」という描き方があったはず。


ポーは「レイアからレジスタンスを受け継ぐ」という大きな仕事があったと思うし、それを描く時間的余裕は十分にあったと思います。


でもそれがぜーーーんぶ中途半端で投げ出されちゃって。


フィンは「ほら、今じゃん、告っちゃえって!」みたいなグダグダの恋愛シーン。


ポーはラストバトルで「みんなゴメン、作戦ミスだった(オワタ)」とか言って諦める始末。


全然彼らは映画を通して成長してないんですよね。


そういうのがすごくもったいない。

 

デザインがダメ


ストーリーに隠れていて見えづらいですが、今回はデザインが非常にまずかったと思います。


元々スターウォーズは、映画としては不出来な箇所はありつつも1977年当時には考えられないくらいスタイリッシュなデザインが人々の心をつかんだわけです。


あれ以上のインパクトを与えるデザインを再発明するのが難しいのは理解できますが、それにしたって今作はデザイン要素がひどかったと思います。


例えば「隠し場所を示す剣」のデザインもダサい、新キャラのドロイドもドライヤーにタイヤがついたみたいでダサい、アントマンワスプみたいなキャラも新鮮味がない、元トルーパーの女性が身につけている衣装も安っぽい、洞窟にいたヘビみたいなモンスターもダサい。


ちょっとくらい新しいデザインはないのかと探すものの、全然ない。


それはスターウォーズとは呼べないですよね。


結局はルークのXウイングやヘルメットをかぶって出撃するとかおいしいところはC3POが持って行くとか、過去のデザインに頼りっぱなし。


ラストバトルの不幸


この映画で一番盛り上がった(盛り上げたかった)シーンの話ですが。


それは音楽の使い方からも分かる通り、圧倒的戦力差のあるファイナル・オーダーとの対決にランドが民間からの応援を大量に連れてきたシーンですね。


「こんなに…こんなに味方が来てくれたんだ!!」みたいなシーン。


ごめんなさい、ちょっと笑っちゃいました。


理由の一つは、「じゃあなんで今まで助けてくれなかったの?」という疑問に対しての答えが特にないから。


それで今更来てもらっても「いや遅い!こっちはもう大半の人間が死んだわ」としか思えなくて。


まぁこれも前作の「誰も救援に来てくれない!」というストーリーを作ったことが問題だとは思いますが。


それともう一つ笑えちゃった理由。


それは、半年前にアベンジャーズで似たシーンを見ちゃってたから笑


しかも圧倒的にそっちのシーンの方がかっこ良かったし音楽の使い方も良かったから。


「うわ〜かぶってる〜、アッセンブル〜」って誰もが思ったのではないでしょうか。


ただし、アベンジャーズスターウォーズも同じ理由で不満な点があって。


それは「総攻撃 vs 総攻撃」で戦っているというシーンを用意したわりには、結局アイアンマンやレイ個人の頑張りによって一気に物事が解決してしまう、という点。


これはちょっと冷めちゃいますね。


ていうかそうじゃなくっても、なんでラストでレジスタンスが勝利したのか僕はよく分からなかったんですけどね。。。


敵の親機をやっつければ、他の艦も誘爆するの??


まさかあの量をやっつけれるとはとても思えないのですが。。。


既にこのあたりでは映画に対してとても温かい目線で観てたので別にいいんですけど。

 

まとめ


散々な書きようで文句ばかり言ってきたうえで言うのもあれなんですけど、僕はこのエピソード9に対してはそんなに怒りはないんです。


というのも、やはりスターウォーズはエピソード8で終わったと思っているから。


もちろん僕だって、エピソード9が尋常じゃ無いくらい出来がよく、前作を帳消しにするような作品が出来ることを期待はしていました。


でもそれはルッソ兄弟だろうとJ.Jだろうと、そしてジョージ・ルーカスにも不可能なミッションだったと思います。


なので僕はこの映画を、「かつて大好きだった友人のお葬式」だと思って鑑賞していました。


お葬式ですからね、今更故人の事を悪く言ってもしょうがないじゃないですか。


「ああ、こんな楽しい日々もあったよね」なんて振り返りながら2時間楽しみましたよ。


これからもエピソード1〜7までは何回も見直すと思うんですよ。


もうそれでいいのかなって。


それに今シリーズはデイジージョン・ボイエガアダム・ドライバーという素晴らしい役者を発掘したというだけで既に偉大だと思ってるんです。


さようなら、スターウォーズ


4年前、あれほどワクワクした日々のことを懐かしく思いながら、お葬式を終わりにしたいと思います。


それでは、また。

 

 

 

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X-MEN ダークフェニックス 《最後がこれってどうなのX-MEN》

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映画の点数…68点
ポスターの点数…30点

 

19年目にしてシリーズ最終作


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《X-MEN ダークフェニックス(2019)》です。


2000年より始まったX-MEN映画シリーズ。


ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマン最大の当たり役としてスタートしたわけですが、シリーズもついに19作目。


ヒュー・ジャックマンは先日X-MENから引退。


映画シリーズもついに今作をもって一応の締めくくりとなります。


シリーズの最終作で言うと、同じマーベルのアベンジャーズも一旦ファーストクラスのメンバーが卒業。


スターウォーズも最新の3作が終了、トイストーリーも一つの終わりを迎えたりと、考えてみるとなかなか切ない1年になりました。


さて、では世界最高の興行収入を叩きだしたアベンジャーズに対し、先輩であるX-MENの最終作はどうだったのでしょうか。

 

映画の感想


いや………面白い………けどさ。。。。


ストーリーは、けっこう王道のスタイル。


というよりも初期X-MEN3のジーンが暴走する話と通じる箇所は多く、「ダークサイドに落っこちちゃった仲間を救い出せ!」ってのが話のベースです。


「ここがおかしい!」みたいな点はそんなにないんですよ。


ちゃんとまとまっている。


でも正直、「え、これでシリーズ最終作なの?」という感想の方が大きいです。


X-MENっていうのは、コミックスがスタートした1960年代から一貫して「虐げられているマイノリティ達のカウンター」というテーマがあるものだと理解してます。


でも今作はそのテーマの扱いは極めて薄く、「あいつは仲間だから助ける!」とか「あいつは裏切ったからころす!」とか、その程度の話なんですよね。


今まで「差別してきた側の人間」は今回ほとんど登場することはありません。

 

ラスボスがあれって…


ネタバレになってしまいますが、今回のラスボスはなんと………宇宙人です。


う…宇宙人!!?


ミュータントでもなんでもなく、ちょっと力が強めくらいの宇宙人。


これで盛り上がれと言われてもけっこうツライ。


今の今まで「差別されないよう社会貢献してきた」とか「人里離れて暮らしてきた」とか描いておきながら、最終的には宇宙人をやっつける話になっちゃうって。


それはX-MENシリーズの幕引きとしてはどうなんでしょうか。


おかげで映画の終わりも「なんとなく人間とは仲直りしたともしてないとも言えません」みたいな非常に中途半端な形で終わっています。


2019年はブラック・クランズマンやグリーンブックといった差別を取り扱った映画が評価されました。


というより近年は良くも悪くもマイノリティに対する表現の仕方は映画界全体のテーマとなっています。


そのなかにおいて、X-MENってかなり早い段階から「子どもも観るアメコミを通じて差別が蔓延する社会を立体的に浮かび上がらせる」ことに成功した作品なわけです。


そのX-MENのラストがこれって……いやぁ。。

 

映画の問題点


この映画の最終的な敵を宇宙人にしたことで、確かに利点も少しはあります。


まず映像的な見せ場として、今まで敵対していたマグニートーと手を組んで「X-MENオールスターズ」として敵と戦う、というのは観てて楽しかったです。


それと、無理矢理解釈するならば「俺たちは差別なんかしている場合じゃない!もっと大きな脅威に対して手を組んで戦うべきだ!」というメッセージという風に、とれなくもないっちゃない(どっちだよ)。


例えば自然災害、環境問題とか?


あるいはテロルとの戦いとか?


でもやっぱりそれって無理矢理すぎますよね。


X-MENに求めるのはそれ以前の問題で、「差別は未だこの世にはっっきりとした形で存在している」ということを描いて欲しいんですよ。


今作ではジーンが暴走することで市井の人から恐れられるわけですが、それもホントに形だけしか描いてなくて。


X-MENがスタートしたのが2000年なわけですから、2019年度版、決定版としての「X-MENとは何か」を真正面から描いて欲しかったですね。


映画としてつまらなかったわけではないので点数的には低くはないですが、個人的にはけっこうガッカリしているところです。

 

ポスターの感想


ポスター……うーん、ポスターも別になんというか…。

 

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良くないですよね笑

 

登場人物達をとりあえず並べたのはいいんですけど、そう、この映画って主要な数人のキャラ以外はけっこう暇な時間が長くて見せ場もそんなに無いんですよ。


だからこうして「ポスターの中にはいるけども、特にやることがない」みたいな感じに見えるんじゃないでしょうか。


だったらもうここは一気に振り切ってしまって、ジーン役のソフィー・ターナーをもっともっとデカくして「この人の映画です!!」とするくらいでいいんじゃないかと。

 

別案


そんなことを考えていたらこういうポスターもありました。

 

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うん、こっちの方がいい気がしますね。


背景の「X」の文字がなんとも言えないダサさを演出していますが、もうそこは逆にアリってことで。


こっちの方がよほどいいビジュアルだと思うんですけどね。

 

まとめ


それなりに期待していた作品だっただけに、けっこうテンションが低めになってしまいました。


やはりアベンジャーズが奇跡だっただけで、続編をまとめあげるってのは非常に困難なのだなぁなんて思いますよ。


とはいえね、別にX-MENが今更「やっぱり続編作るわ!」とか言い出したところで別に誰も反対しないと思うんです。


もしもこの世に、どうしても描く必要のある差別が表出してきた時にはX-MENが再びやってくるんじゃないですかね。


と、言い訳なんてしつつ。


それでは、また。

 

 

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キングダム 《このやり方ではいつまでたっても…》

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映画の点数…52点
ポスターの点数…6点

 

2019年度邦画実写No.1


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《キングダム》です。


ヤングジャンプ連載マンガの実写化。


主演には山崎賢人さんや吉沢亮さん、橋本環奈さん長澤まさみさん、一番おいしい王騎将軍役に大沢たかおさん等。


ちゃんと10億円くらいの予算をとって制作された日本では大型作品になりますね。
シンゴジラよりも多いのかな?


若手の主演映画でここまで予算をとったってのは今の日本映画産業を踏まえるとなかなか偉いなと思う次第。


日本での興行収入も2019年度でトップ10に入ります。


評判も上々で、近年のマンガの実写化作品の惨敗の歴史を考えると「よくやったぞ!」って感じじゃないでしょうか。


で、僕の感想としては………


ごめんなさい、けっこう普通にダメでした。

 

キングダムというマンガに対して


まず僕自身は、キングダムのマンガのファンです。


全巻所持してるマンガだし、ここ10年のマンガの中で最も優れたマンガの1つだと思ってます。


すでに50巻を軽く超える巻数出ているにも関わらず、大きな息切れもしない作者さんの力量が素晴らしいですね。


そんな大好きなマンガの実写化なので思うところは色々あるんですけど、基本的には「マンガと映画は別物」として観るようにしているので「マンガより良いとかダメ」という感じでなく「普通に映画としてどうか」で考えるようにはしています(もちろん完全には無理だけどさ)

 

映画の良かった点


映画全体の印象になりますが、全体としてはとても良かったです。


まず、「スケール感」に関しては非常に計算されたのだろうなという印象。


2時間の映画の中で、安っぽさを感じるシーンはかなり少なかったです。


登場人物達の衣装もかなりしっかりしており、コスプレ感がする人も少なかったですね(長澤まさみさんはちょっと危なかった気もしますが。)。


CGでの処理や中国でのロケをうまーーーく利用して、「大きく見せる場面では大きく!!」「粗が見えそうな場面では小さく」写すなど工夫が見えて良かったです。


ちゃんと身の丈にあった映画の作り方が出来ていたと思います。


「そういう工夫そのものが安っぽいってことなんじゃないの??」って意見が飛んできそうですが、そんな事言ったって隣の劇場では《エンドゲーム》のような300億円かけた映画も同時にやってるわけですから。


同じ土俵で勝負する以上は、言い訳なんてしてないで精一杯工夫していい映画を作ろうとする姿勢の方が僕は好きです。


マンガのオリジナルストーリーの部分を残す箇所は残し、省略する部分はバッサリ切るあたりも潔くて良いと思いました。


そりゃ一本の映画として考えると河了貂(ハシカンさん)は丸ごと必要なかったし邪魔だなぁとは思いましたが、そこまで言い出すとマンガファンからの反発もありそうだしなぁとか。

 

アクションシーン


アクションシーンはかなり良かったです。


ワイヤーアクションで思い切り人がぶっ飛んでいくのですが、なかなか思い切りが良くて。


「そんなに人は飛ばねぇだろ!!」というツッコミなんてお構いなしにブンブン人が飛び散らかっていくので観ていて気持ち良かったです。


まぁマンガの実写化ですからね。


あのくらい勢いがある方が観ていて楽しいですよね。

 

映画の不満点


これを言っちゃうとお終いなんですけど。。。


でも言わないとしょうが無いので言いますが、主演の山崎賢人さんがダメでした


彼が脇役とかだったら別にいいんですよ。


でも彼が主演である以上、彼を中心に映画は進むし彼の印象そのものが映画の印象になります。


彼の演技が気にならない人ほど、この映画を楽しむことが出来たのだろうと思います。


逆に言えば、彼の演技に引っかかってしまった僕なんかは映画全体に大きくストレスがかかってしましました。。。


山崎賢人さんは、この映画の中での演技パターンが二種類しかないんですね。


「チンピラっぽく(奴隷の身分なので言葉遣いがなっていない)強がる演技」「うわあああああと泣きわめきながら怒る演技」の二種類。


ハッキリ言って、そのどちらも「演技」にしか見えなかったです。

 

演技パターン


まずチンピラ演技の方ですが、おそらく山崎賢人さん自身はとても「いい人」なんじゃないでしょうか。


あのー、全然チンピラ感が出てないんですよね。


怖くもないし、強そうでもない。


ただうるさいだけで、彼が喋る度にストーリーが止まってしまうので邪魔なんですよ。主演なのに。


「泣きわめき演技」の方は、なんていうかホントにいつもの「日本人的泣きわめき演技のフォーマット」でしかなくて。


どっかで観たことあるなと思ったら、進撃の巨人三浦春馬さんとかデビルマンの主演の双子とか(名前も分からん)と一緒なんですよね。。。


なんであの泣き方しか出来ないんだろう。


その泣きわめき演技が映画の中で5回とか6回出てきます。


まぁ落ち着けよ。


親友が死んで悲しいのは分かるが、2時間の映画の中で5回も回想しないでよ。


ひどい時には死んでから2分後くらいには回想してたでしょ。


こっちも一応義務教育は受けてるから、そんなに頻繁に思い出さなくてもちゃんと君の悲しみは覚えてる。


だからもう泣かないで。


映画が止まっちゃうし、なんか敵の人も泣き終わるまで待っててくれてて可哀想。

 

演出の問題


この演技がダメな問題って、佐藤監督の演出の問題なのかなとも思いました。


何故なら、山崎賢人さんとか橋本環奈さんとかはダメなんですけど、吉沢亮さん、長澤まさみさん、大沢たかおさんとかは普通にいいんですよ。


特に吉沢亮さんなんて一人二役という難しい役どころなのですが、本当に別人に見えたし素晴らしかったです。


大沢たかおさんに至っては、一人だけ「完全にマンガ的なキャラ」にも関わらず、ギリギリ魅力的に見えるラインで演技を見つけ出してて感動しました。


これってたぶん、「もともと演技レベルが高い人は良い」ってことなんじゃないでしょうか。


つまり、それぞれの役者のレベルがそのままキャラクターの良さに繋がっているんじゃないかと。


例えば長澤まさみさんは、「普通に喋る演技」の時は良いんです。


ですが、アクションシーンになると急にダメダメになるんですよ。


これって、長澤まさみさんのアクションの演出がうまくいってないってことですよね。


アクションシーンがダメならダメで、ちゃんと「最強の女戦士」に見えるように演出するべきでしょう。


めちゃくちゃ鍛えて練習してもらうのか、CGで誤魔化すのか、アクションダブルを使うのか。


そのへんが全て役者さんまかせになってるから、映画全体の役者さんのトーンがチグハグに見えるんだと思います。


僕は別に山崎賢人さんが嫌いとかではありません。


でもね、そりゃ人には向き不向きがあるでしょうよ。


ジョジョの奇妙な冒険の実写化を観て、誰もが分かったはずです。


山崎賢人さんに、オラオラ系の役は向いてないです。


これはもう、キャスティングの時点でまずかったんだろうなと思います。

 

ポスターの感想


うーん、、


ポスターもなんていうか、いつもの日本ポスターって感じですね。

 

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キャラクターをどんどん積み上げていったら、そりゃ迫力は出るけどカッコイイかと言われるとどうにもなぁという感じ。


こういうポスターって、「今までのキャラクター達が大集合!」してるからカッコイイ部分ってあるじゃないですか。


例えば《エンドゲーム》のポスター。

 

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11年かけて積み上げた歴史があるからカッコイイんですよね。


でもキングダムは初の映画化なんだし、誰も知らない人達なわけでしょ。


こんな風に積み重ねても、単純に見にくいだけだと思いますよ。


ここはもう、山崎賢人さん一人、もしくは山崎賢人吉沢亮&本郷さん3人とかの方が良かったでしょ。


そして、ビジュアルとしての美しくない原因は配色に問題があるようです。


全体的にホコリっぽくしてあるうえに色もバラバラ大きさもバラバラで何がなんだか分かりづらい。


このへんも進撃の巨人と全く一緒。

 

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ていうよりポスター作った人まで同じなんじゃないかと思うレベル。。


例えばですが、スターウォーズのポスターはこんな感じです。

 

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全体を青と赤の2色で統一して、敵と味方で分けています。


キャラクター自体は多いのですが、大きいキャラ、中くらいのキャラ、小さいキャラと大きさのバランスも揃えてあり、それぞれがあまり重なりあっていないのでスッキリして見えます。


キャラクターが多いからってゴチャゴチャするかどうかはあまり関係ないわけですね。

 

まとめ


けっこうお金もかけたチャレンジングな映画だったし、ハッキリと良いところもたくさんあった映画だと思います。


それでもやっぱり、今のような映画の作り方をしている以上はとても世界に輸出出来るような映画は出来ないと思うし、そうなると産業として先細る一方なわけですよ。


そういう意味においては個人的にけっこうガッカリした部分も大きかったです。


続編があったら観てみたいとは思いますが、とにかく「まず一本の映画として面白いものを作ろうぜ」という映画を作ってほしいなと。


今年日本で最も売れた映画は「天気の子」ですが、あれなんかは「売れるかどうかは知らんが、こういう映画を俺は作りたい」という極めて作家主義的な映画でもあったと思うんですよ。


映画に希望があるとしたら、そっちの方向だと僕は思うんですけどね。。。


そうやって映画全体のレベルを上げたあとに、ちゃんと商業的な映画が作られると思うのですが。


それでは、また。

 

 

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エンド・オブ・ホワイトハウス 《ちょうどいい映画、ポスターワーク》

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映画の点数…78点
ポスターの点数…95点

 

きたぞ、ちょーーーーどいい映画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はエンド・オブ・ホワイトハウスです。


ホワイトハウス・ダウンではありません。


エメリッヒの方では無く、アントニーさんのエンド・オブ・ホワイトハウスです。


まぁそのうち僕も絶対にどっちがどっちやら分からなくなるので、「しまった!借りる方間違えちゃった!!」という方もそんなに気にしなくていいと思います。


どっちの映画も、貴方の人生を変える一本ではありません(断言)。


とはいえ《エンド・オブ・ホワイトハウス》の方はなんだかんだで好評なのでしょう、続編が作られており、先日も《エンド・オブ・ステイツ》が公開されたばかりですね。

 

B級映画


近年、ジョンウィックやイコライザーなど、味のある「皆殺しアクション」が乱発されました。


おそらくきっかけは「え、オスカー俳優なのにこんなアクション映画出るの?」と話題になったリーアムニーソンの「96時間」でしょう。


それ以降、ビッグ俳優がアクションのプロと組んでかなり本格的な「B級に見せかけた超A級映画」を作ってきました。


僕も大好きなシリーズです。


そのなかにあっていまひとつ話題にならない「エンド・オブ・ホワイトハウス」。


理由はおそらく「そもそもアクション映画に出てるジェラルド・バトラー主演だから話題にならない」点と、「B級映画に見せかけた、超B級映画」だからじゃないでしょうか笑


でもね、それで良くない?(唐突なタメ口)


「俺の今日の心の傷は、B級映画でしか癒やせない」なんて日もあるじゃないですか?


そんな日はセガールやヴァンダムに泣きついてもいいじゃないですか?


この《エンド・オブ・ホワイトハウス》もまた、そうした男達の心の傷を埋めるための映画なんですよ。知らんけど。


日本中の女子がタピオカで心の傷を慰めるのなら、僕たちはジェラルド・バトラーに抱かれて眠ろう、今日はそんなお話です(もちろん違います)。

 

映画のストーリー


ホワイトハウスが襲撃されて、大統領が人質になったから助けに行く映画です。おしまい。


いや、でも本当にこのまんまの映画なんですよね。


一応途中で「妻を亡くした話」とか「大統領の子どもが何処に行ったか分からん」とかサイドストーリーもあるんですけど、まぁそんなものはそのうち解決しますから(暴論)。


見応えとしては「いかにしてホワイトハウスが制圧されるか」と「いかにジェラルド・バトラーが無双して敵を全滅させるか」を楽しむ映画ですから。


国際的事情なんか知らなくても楽しめます。


ただ他の映画との違いとしては、テロリストがイスラム系とかロシア系というお馴染みの方々ではなく「朝鮮半島統一党」みたいな北朝鮮よりの人達だというのが特徴ですね。


アジア人がFBIとかをメッタメタにするって映像はフレッシュでした。

 

映画の良かった点


とにかく「ホワイトハウスの制圧」シーンはお世辞でなく100点です。


いや、そりゃ「どこにこんな武器隠してたんだよ」とかそういうツッコミはありますよ。


でもそうじゃなくって、かなり徹底的に民間人も軍人も殺害しまくる映像ってかなり衝撃的でした。


人を撃ち殺すシーンに対しての遠慮がなく、こちらが不快感を感じるくらいにとにかく人が死にます。


それを逃げずに映像として見せてくるのでこちらも「あいつらだけは絶対に許さん!」となるわけですね。


監督のアントニー・フークアさんはこの翌年に《イコライザー》を撮るのですが、イコライザーはけっこう“スタイリッシュな暴力”だったのに対し、エンド・オブ・ホワイトハウスはかなり凄惨は暴力。


この映画のニュアンスに対してとても正しい姿勢だったと思います。

 

映画の不満点


褒めといてなんなんですが、最初のホワイトハウス制圧シーンがピークであとは結構グダグダなんですよ笑


いくらなんでも無茶だろう!みたいなシーンの連続がインフレしていって、最終的に「よっしゃ、タイマンだやろうぜ!」みたいなノリというか。


それでいいのかよテロリストって感じはあってですね。


でもそんなのいいじゃないですか。


これ以上の出来を期待する方が悪いんですよ(ハッキリ)。

 

ポスターの感想


ポスターの点数に95点という高得点をつけてます。


これはですね。ポスターのビジュアルの完成度が高いというわけではありません。

 

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むしろ低いと言ってもいいでしょう笑


でも映画に対してのポスターとしては完璧に近いと思うんですよ。


これらのポスターを観ても「こ……これはアカデミー狙えるんでは?!」なんて誰も思わないでしょう。


「ほんほん、ホワイトハウスが陥落する。こいつは楽しそうだぜ!」っていうノリ。


それを過剰にもせず、引きすぎもせず非常に正しく伝えています。


このポスターを観たときの印象と、映画の内容の面白さのバランスが大変素晴らしいと思うんですよね。


映画ポスターとしては、これはもう文句無しでしょう。


すばらしいです。

 

まとめ


これはなかなか上質なB級映画が誕生したなと嬉しく思います。


どこからどう観てもB級映画


それを面白いと思うかどうかは人それぞれなのですが、僕は非常に好ましい映画だなと思いますよ。


適度な映画、適度なポスター、そして適度に楽しみたい気分の観客。


これってとてもビジネスとエンタメとして正しいですよね。


もうじきスターウォーズなんかも公開されますけど、スターウォーズなんかはビジネスの方が実際の映画の内容をはるかに超えてしまったと思うんですよ。


いや、もちろんエピソード9には期待はしますけど。。。


B級映画だって、扱い方さえ合ってればどんな一流映画よりも楽しめるぞというのが分かりました。


それでは、また。

 

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未来のミライ《低評価は納得、だけど…》

 

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映画の点数…82点
ポスターの点数…95点

 

細田守監督作品


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は細田守監督作品未来のミライです。


まぁ細田守作品といえば、映画ファンならマスト、映画ファンじゃ無くても一応観ておこうとなるくらいのブランドは既に獲得していると思います。


僕自身はというと、大ファンだとは言いませんが作品が出る度にやはり感動し感心し嫉妬してしまうような素晴らしい作品群だなと思っています。


ところが今作《未来のミライ》、公開当初から「こ…これはどうなんだ???」とまわりがザワザワしていて、結果的に興行収入的には全作バケモノの子などには遠く及ばずとなったようです。


というわけで僕自身もそこまで期待せずに鑑賞したのですが、いやいやどうして、個人的には「やっぱすげぇ面白いじゃん!」と思いましたよ。

 

映画のお話


お父さん、お母さんと愛犬と仲良く暮らす「くんちゃん(4)」の元に、妹となる「未来」がやってきました。


最初こそ可愛がることを約束したくんちゃんですが、お父さんもお母さんも妹につきっきりになることに嫉妬してしまいます。


どうしても妹を可愛いと思えないくんちゃん、そしてその子育てに奮闘するお父さんとお母さんの成長物語です。


と、言えば普通の物語なんですが、細田監督らしいファンタジー要素もたっぷり詰まっており、擬人化された愛犬や未来からやってきた妹、青年時代のひいじいじ等との出会いと体験を通じながらくんちゃんは成長していきます。


この映画が低評価だった理由の一つに「事件おこらなすぎ」という問題があると思います。


大人が全部消えてしまうような危機は訪れないし(オトナ帝国の逆襲)、くんちゃんが車にひかれたりしないし(赤ちゃんと僕)、人類を超越した存在・スターチャイルドになることもありません(2001年宇宙の旅)。


「新幹線のオモチャで妹を殴る」とか「黄色いパンツが洗濯中だから履けない」とかそういうレベルの事件しか起こらないのです。


それをもって「つまんねぇよ」と言う人の気持ちも分からんではないのですが、前述の通り僕は楽しかったです。

 

映画の良かった点


まずは何を置いても「くんちゃんが可愛かった」という点が最大の魅力です。


逆に言えば「このガキ全然可愛くねぇな!」と感じた人にはこの映画はツライでしょうね。


これは「男の子を子育てしたことあるか」で決定的に映画の評価が変わると思いますし、細田監督もそんなこと分かって作っているはずです。


観ていたらもう本当にあるあるというか、まず映画冒頭「おもちゃ片付けといてね」と言った数分後に何故か壮大な散らかり方をしているとか日常茶飯事です。


お尻をプリリンとさせて寝る姿勢とか、信じられないような寝癖をつけて起きるとかもあるあるですね。


そして「可愛いと思えないくらい憎たらしい」点の描写すらも見事です。


こちらの言うことを聞いているようで理解はしてないとか、我が儘を言ってもしょうがない場面でこそ傲慢になるとか。


あらゆる子どもが出てくる映画に比べてくんちゃんは本当に「可愛くない」んですよ。


つまり、それくらい実在感があるということなんですけど。


「こんな子がいるとしか思えない」というレベルでキャラクターを作り上げる細田監督はやはり世界トップレベルだと言い切れるし、そこだけ観るだけでも十分に魅力のある映画です。


そんなくんちゃんが、色々な不思議な体験を通じて少しずつ成長していくのを観ているだけで泣けちゃうんですよね。


自転車の練習シーンとかたまらんかったです(でもいくらなんでも4歳児にはハードすぎないか?)。

 

映画の不満点


この映画の不評な点を観てみると、「未来から妹がやってくる設定の意味が解説されていない」とか「東京駅で迷うシーンが意味が分からん」とかあるようです。


これはですね、僕にもさっぱり分かりませんでした。


とはいえ、僕はそこはそんなに不満を感じなかったんですよ。


そういう「よく分からんところ」を楽しむのも映画だと思ってるし、子どもって「いつ学習したのか全く分からないことをいつの間にか知っている」ということが本当に良くあるので。


そんな時は「ああ、この子もきっと時空を飛び越えて学習したんだな」と思うことにします。


それよりも何よりも、僕ははっきりと一点不満があります。


それは「くんちゃんの声優」です。

 

声優問題


メインキャストの方々の多くは俳優さんや女優さんがやっています。


これは細田監督がかつて所属していたスタジオジブリのやり方と似ています。


そのやり方による成功例もたくさんあると思います。


例えばトイストーリーの唐沢&所コンビなんて完璧な組み合わせだと思いますし、近年でもアナ雪の松&神田コンビも素晴らしかったですね。


でも今作はダメだ。。。


あえてここでは名前を出しません。


だってその方は、ちゃんとオーディションで選ばれて全力で演じたのですから。


でもどこをどう観ても「まっっっっったく4歳の声に聞こえない」んですよ。


仕方ないから、観ているこちら側で「大人の女性の声を4歳児にもう一度変換して観る」というような工夫をしながら観ていました。


そんなのおかしいでしょう。


途中、公園で出会う少年達がいて、彼らはおそらくプロの声優さんが声をやっていると思われます。


ああ、あの声優さんでこの映画を観ていたらもっと楽しめるのに、と強く思いましたね。


だってレベルがあまりに違いすぎるんだもの。


俳優さんが声優やった方が本当に宣伝になりますか?良い効果生みますか?


この映画ほど「子どもとしてのリアリティ」が求められる作品はないのですから、ちゃんと声優を決めてもらいたかったです。


最近は映画版のアンパンマンドラえもんもゲスト声優がやるのが定番になっていますが、はっきりとレベルが低いものが目立ちます。


重ねて言いますが、俳優さん達が悪いとは言いません。


そんなのサッカー選手が「お、お前サッカーうまいから運動も出来るだろ、ちょっと野球やってみろよ」と言われていきなり東京ドームに立たされるようなもんでしょ。


今回ははっきりと声優さんの件でガッカリしました。

 

ポスターの感想


未来のミライのポスターの感想というよりも、もはや細田守監督作品のポスター全体に通じるものです。

 

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共通点は、黄色い文字、もしくは白い文字、であること。


ゴシック体のフォントで作られていること(というかどれも受ける印象は同じというくらい一緒)。


いずれも青空が背景にあること。


なんなら入道雲の形すらほぼ一緒だということ。


などですね。


特に未来のミライ時をかける少女のポスターをかなり連想させるし、それが狙いなのでしょう。


変わっていないところがないというわけではなく、人物の描写などは作品を重ねる毎にむしろシンプルにフラットになっています。


それでいて人物の実在感はむしろ増しているというのだから怖ろしい話ですよ。


これらのポスター達を観ていて感じるのは「もはやキャラクターとシンプルなレイアウトだけで細田守監督作品と瞬時に理解出来るほどにブランドが確立した」ということ。


そしてそれを可能にしている極めてレベルの高いグラフィックデザインだということです。


素晴らしいの一言ですよ、本当に。


いつの日かは分かりませんが、今までの細田守監督作品とは全く違うルールのポスターも観てみたいですね。

 

まとめ


やはりというべきか、僕は今作も「なんだよ、やっぱりちゃーーんと傑作じゃん」という感じです。


不満点がないとは言いませんが、それでも「日本には細田守という人がいる」というだけでも感謝感謝じゃないですかね。


特に3〜4歳のお子さんがいる方は観ないなんて選択肢ありませんよ。


是非ご覧になってくださいませ。


それでは、また。

 

 

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ミスターガラス 《こうなるかな、と思ったらこうなった映画》

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映画の点数…75点
ポスターの点数…85点

 

20年におよぶ三部作


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《ミスターガラス》です。


シャマラン監督のアンブレイカブル》《スプリット》に続く3部作にして一応最後の作品になります。


アンブレイカブル以来となるブルース・ウィルスやサムエル・ジャクソンが再登場。


特殊能力を持つ【ヒーロー】達の結末を描きます。


シャマラン監督は、好きとか嫌いは置いておいて、「独特」としか形容しようのない不思議なテンポの映画が持ち味です。


もちろん僕は「好き」な部類で、全作とは言いませんがけっこう多くの作品を観ていると思います。


そのなかにおいて「ミスターガラス」はというと。。。。


うーーーーん!もうちょっと凄いのを期待しちゃったな!ってところです。

 

 

映画のストーリー


アベンジャーズみたいに「当たり前に超人がいる世界」ではなくて、誰にも知られないところで少しだけ存在している超人達を描いています。


精神病棟に「治療」のために閉じ込められた超人達は、自分の能力をネガティブに思い悩みます。


三部作の最後となる今作は、超人達の自己肯定やカムアウトが描かれていたりして近年の社会情勢も踏まえた上での映画になっています。

 

映画の良かった点


映画の基本的なストーリーはよく出来ていたと思います。


それぞれの超人達に対して、一応の決着がつくように作られています。


超人達の活躍だけでなく、今まで彼らを支えてきた人物達も再登場するなどファンサービス的要素もしっかりしています。


精神病棟での「治療」のシーンは、登場人物達だけでなく観ているこちら側も「あれ、もしかして超人なんていないのかも知れない」というくらいグラグラ揺さぶりをかけてきます。


そしてシャマラン映画といえば「最後のどんでん返し」ですが、今作もちゃんと用意されていました。


そのどんでん返しこそが今作のテーマそのものに通じているので、見終わって初めて「こういう映画だったのか」と理解することが出来ます。

 

映画の不満点


贅沢な言い方かも知れませんが、思ったよりも良く出来ていてちょっと拍子抜けしました。


物語全体に大きな起伏がないように感じられ、映画を見る前に予想していたような展開のままに進んでいったような感じがしたんですね。


別に「もっとたくさん人を殺せ!」とか言うつもりはないのですが、この映画は病室で細々しているシーンが多いです。


せめて最初の方でキャラクター紹介時に大暴れしてくれるとかあってくれたら良かったのかなとは思うんですが。


物語の結末が「ああいう結果」ということには納得してるので、だったら他の箇所で見せ場が欲しかったかなってところです。

 

ポスターの感想


ポスターは非常にカッコ良いものと、普通のものがあります。


まず良く見かけたポスター。

 

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こっちはまぁ普通っちゃ普通。


キャラクターが色分けされていて見た目としてはスッキリしています。


とはいえ特に秀でた点があるとも言いがたく、ある意味映画と同じようなテンションというか。


もう一案のポスターの方がはるかにカッコイイですね。

 

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こちらのポスターでは影を利用して「人間の姿」と「超人の姿」を描き分けています。


この場合あくまでも超人の方が影になっているのがポイントですね。


「本当に超人は存在するのか、ただの幻想なのか」ということを描いた映画のポスターとしてビジュアルがマッチしています。


先ほどと同様にキャラクターごとに色分けし個性を演出しています。


ビジュアルとしても良し、映画ポスターとしても機能しているいいポスターじゃないでしょうか。

 

まとめ


簡単ではありましたがミスターガラスのご紹介でした。


この映画は是非とも「アンブレイカブル」→「スプリット」と並べてご覧になってください。


「傑作映画だ!」とまでは言いませんが、ほどよい良作達だと思っています。


それでは、また。

 

 

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スカーフェイス 《コントラストの美しいポスター》

 

映画の点数…50点
ポスターの点数…87点

 

「苦手」な映画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はスカーフェイスです。


あらかじめ言い訳しておきます。


今回映画の点数を50点としてますが、これはもうすごく単純に「僕がデパルマ監督作品が苦手だから」です。


映画の出来が悪いとかそういう話ではありません。


実際、公開から35年くらい経っても愛されている作品ですからね。


なので点数はもう無視してもらっていいです。


1983年公開のギャング映画。


主演は僕が最も好きな俳優、アル・パチーノ


上映時間も3時間近くある大作ですね。


えー、それでもなお、僕はどうしても苦手なんですよね笑

 

映画のストーリー


ストーリーはシンプルです。


キューバのチンピラに過ぎなかったトニー(アル・パチーノ)は、アメリカでギャングに取り入り、出し抜き、コカインの売人として成り上がっていく。


巨大な権力を手にしたトニーであったが、それと引き換えに妻や友人に対しても疑心暗鬼になっていく。


と同時に自信もコカインに溺れ、ついには身を滅ぼしていく。


みたいな話です。


ギャングのサクセスストーリー×アル・パチーノというこの上ないくらい大好きな組み合わせなのです。


ところが。。。

 

映画の苦手な点


前述の通り、僕はどうしてもこの作品が苦手でして。


この10年後くらいに公開されるカリートの道も苦手だったので、やっぱり僕はデパルマ監督と合わないんでしょうね。。。


「全体的に淡くぼんやりしたショットが多い」ことや「音楽の使い方がやたら説明的なうえにくどい」という二点が特にダメで、トレンディドラマを観ているような気恥ずかしさがあるんですよね。


女性が出るシーンではやたらとキラキラしたエフェクトがかかるような映像になったり、悲しいシーンでは何回も何回も同じ音楽が流れるし。


こういうのって時代によって評価は変わるのだろうし、この手法が不正解だとは言いませんがとにかく僕が苦手ってことです。


まぁあとはこれも時代的なことでしょうかね、あまりにも女性がバカっぽく見えちゃうというか。


シーンとしては「バカな男性と違い、大人な視点を持った女性」みたいな描かれ方をしてるんですよ。


でも実際におかれている状況は「男性に金だけ出して貰って偉そうにしている」ようなヒロインだったりして。


それじゃ魅力も何も感じないなぁなんて。


やたらエロい服装をしているのもバカっぽいななんて。


これを言ってもしょうがないか。。。

 

ポスターの感想


この映画は、映画以上に映画ポスターがとても良いと思ってます。


まずとても有名なビジュアル。

 

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画面を真っ二つにバキッと大胆に分割したレイアウト。


その中心に主人公トニーが立っています。


白と黒の分割が、「チンピラから麻薬王へ」とか「親不孝なヤクザと家族思いな青年」とか「裏切るか裏切られるか」とか「天国から地獄」とか、映画に度々出てくる極端な二面性を感じさせます。


銃を手に不遜な態度を感じますが、決して幸せそうだったり豪胆さは感じません。


もっと陰湿で不穏な暴力の匂いを感じます。


タイトルは赤と白に映える赤で、これはもちろん暴力性の表現であると共にデザイン的な美しさも持ち合わせています。


単純なレイアウトのように見えますが、単純だからこそ美しく見せるのに苦労するデザインです。

 

日本語版ポスター


なんかちょっと笑っちゃうデザインのポスターです。

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一個もいい点が見当たらないけどどういうことでしょうか笑


なんでアル・パチーノの文字が鮮やかな青色なのでしょう。


なぜタイトルがこんなに肉太でもっさりしているのでしょう。


それより何より、なんで主役のアルの写真がこんなにかっこ悪いものを採用しているのでしょうか笑


いちいち文句を言うようなことでもないくらい変なポスターですね。


添えられているコピーもなんか勢いで言ってるだけでよく分からない笑


まぁちょっとした紹介でした。

 

まとめ


「良い映画なのにポスターがダメ!」とか「ポスターが映画の内容を誤魔化してる!」

 

とかそういう意見をいつも書いている気がするのですが、今作に関しては「そもそも映画が苦手」というなんとも言えない姿勢での感想になってしまいました。


このブログを書く前に、10年ぶりくらいに映画を見直したんですよ。


改めて観るとよく見えるかもしれないって。


でもやっぱりダメでしたね笑


いつかデパルマ監督作で好きな作品に出会えたらいいななんて思ってます。


それでは、また。

 

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オールドボーイ 《ポスターで損をしてる?傑作映画》

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映画の点数…87点
ポスターの点数…40点

 

今につながる韓国映画の傑作


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はオールドボーイです。


2003年の作品なのでもう15年以上たつんですね。


ちょうど韓国映画が日本でも流行していたのが2003年くらいでしょうか。


冬ソナが2003年に放送していたらしいです。


当時は「まぁ、悪くはないけど日本の映画やドラマのパクリだよな」みたいなクオリティの作品も多々あったと思ってます。


そのなかにおいて、オールドボーイは飛び抜けた傑作で。


今となっては悔しいけれど韓国映画のレベルは日本映画のレベルを軽く超えていると感じています。


オールドボーイ》はその韓国映画のレベルを向上させたきっかけの一つでもあるんじゃないかなと思ったり。


公開から15年以上たった現在でも、オールドボーイを超えるような邦画ってないんじゃないかなぁなんて思います(というか、こういうジャンルの映画自体が少ないんだけど)。

 

映画のストーリー


謎の組織に15年間誘拐・監禁されてしまっ主人公、デス。


監禁されている間に妻は殺害され、娘とも生き別れます。


15年たったある日突如解放された主人公は、わずかな情報を頼りに自分を監禁した犯人と、犯行の目的を見つけるために奔走します。


そのなかで犯人捜しを手伝ってくれる女性や昔の友人の力を借りて、少しずつ犯人像が見えてきます。


真相が判明していくにつれ、全く予期しなかった事実が明らかになっていき……


みたいな話です。

 

基本的な話は「15年も監禁したやつに復讐だ!」という話です。


そこだけでも十分に面白いと思えるレベルの映画なのですが、後半そこからさらにツイストしてくる「本当の地獄」にかなり驚かされました。


元々日本のマンガが原作なのですが、だとしたら邦画としてこんな最高な作品を観たかったところ。

 

映画の良かった点


この映画の美点は数多くあるのですが、ここでは「フレッシュな映像」と「脚本」の二点に絞りたいと思います。

 

フレッシュな映像


映画前半はまだ何故監禁されたかなどの情報が少ないため、いくら謎解きをしているとはいえ「状況的に退屈」な場面が多々あります。


人に話を聞いていたり、街をウロウロしていたりするシーンですね。


そのシーンを退屈させないための工夫が、フレッシュな映像として用意されています。


まず全体的な美術のレベルが高いです。


部屋の小物や衣装など細かいところまで気を配っていて、キャラクター達の実在感を増すことに貢献しています。


ミドという名前のヒロインなんかも、微妙~~な感じで衣装がエロいんですよね。


そのバランスがとても良かったり。


また、とても有名なシーンのようですが長い廊下でのワンカット長回し格闘シーンのフレッシュさ。


別にアクション映画ではないのですからそんなシーンは必須ではないのですが、このワンカット長回しのフレッシュな映像のおかげで「永遠と終わらないうんざりするような地獄が続く」ような錯覚を感じて。


自分の思いもしない贅沢が出来ているようで観ていて楽しいです。

 

見事な脚本


正直言って、設定とかはおかしいところも目立ちます。


「いくらなんでも15年監禁されたわりには対応力がありすぎる」とか「催眠術ってそんなに万能?」とか。


それを気にする方がいてもしょうがないとは思うんですけど、個人的には「そういう矛盾点は無理矢理突破してしまう脚本」の方が素晴らしいなと感じます。


後半にいくにつれ「え??そんなことでこんな犯罪を???」とか「え??こんな地獄があっていいの???」みたいなシーンがインフレしていくので、細かいところは気にならなくなっていくんですよね。


その「こんな地獄があるのか」というシーンをどのように展開するのか、いつ観客に提示するのか、というのが非常にうまいなと。


真相自体は明らかになっていくのに、何故か目の前の出来事が非現実的な感じがしてクラクラしてくる。


全体的なビジュアルが濃厚で過剰なのもあって、元々ファンタジー感が強いのもプラスに働いていると思います。

 

ポスターの感想


有名なビジュアルはこちらだと思います。

 

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ハリウッドリメイクの方も似たようなビジュアルでしたね。


まぁ確かに、インパクトはありますよ。


ハンマーを使った拷問描写とかも印象的です。


ビジュアルとしてはこれでもいいかもとは思います。


ただし、映画ポスターとしては僕は良くないのではないかと思います。


映画ポスターである以上は「お客さんを映画館に呼び込む」ことと「映画の内容を正しく伝える」ことが大事です。


このポスターの場合「映画の内容を正しく伝える」ことは出来ていないと思います。


まず主人公の顔ですが、小汚い格好とはいえちょっとカッコよすぎですよね。


劇中の主人公はもっと、頼りなくフラフラしたダメな人間です。


そのダメ人間が暴力を振るうからこその恐怖と、反逆のカタルシスがあるのであって。


このポスターじゃただのクライムサスペンスに見えちゃいます。


また、映画の主なテーマである「監禁した奴への復讐」という要素がまるで感じられません。


監禁の孤独感を演出するなら後ろ姿にするとか、もっと引きの絵にするとか方法はあったはずです。


このポスターからは「家族を失った男の悲しみ」のようなものは感じられないですよね。


「大事なものを失った男の復讐」がこの映画のテーマなのですから、もう少しドライで冷静なビジュアルが必要だったと思います。

 

別案


こちらのポスターは良いと思います。

 

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主人公達が頼りなく韓国のネオン街を歩いています。


街に飲み込まれそうなくらい人物は小さく表現されており、謎はなかなか解けないという印象があります。


それでも二人の距離はかなり近く、深い愛情のようなものが感じられます。

 

まとめ


公開から15年たってもまだまだ傑作であり続ける一作だと思います。


だからこそ、ポスターのビジュアルが惜しいと感じるところ。


有名なポスターなので変更しにくいとは思いますが、新しいお客さんに観てもらうのを目的に、ちょっとビジュアルの変更をしてもいいんじゃないの?なんて思ったり。


それでは、また。

 

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さくら(小説)《洪水のような心地よい衝動》

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小説の点数…95点
装丁の点数…83点

 

溺れるような小説体験


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回は映画の感想ではなく、小説のお話です。


僕自身そこまで小説を読む方ではなく、年間で10冊程度しか読みません。


それもあって、恥ずかしながら西加奈子さんの小説も今現在この《さくら》しか読んだことがないありさまです。


売れっ子さんだからか名前は聞いたことがあったのですが、正直なところ女流作家さんよりも男性作家さんの作品の方が好みなので触手が伸びなかったんですよね。


でも今回、人の推薦もあってちょっと読んでみることに。


感想を一言で言うなら、足下がぐらつくような傑作、ですね。


読み終わって一週間程度たつのですが、まだ主役3人(+2人+1匹)のことを思い浮かべる日々です。


もっと早く彼らと出会いたかったなと強く思います。


もしもこのブログを見ていて、ほんの少しでも興味を持ったらすぐに手をのばして欲しいです。
個人的には、10代とか若いうちに読むのが一番良いのではないかと思います。


もちろんオッサンでもおばさんでも、違う味わい方はあるから同じくお薦めですが。

小説のストーリー


ネタバレはしませんが、「あらすじにのっているくらい」の内容はお話します。


長谷川家の3兄弟、はじめ、薫、ミカの三人は、仲の良い両親に育まれ、そして一家のアイドル犬さくらと共に健やかに暮らしていました。


特にはじめやミカは非凡な才能や容姿にも恵まれ、まわりから羨望される魅力をもつ人物です。


でもある日、20歳になる長男はじめが命を落とすことになります。


そこから長谷川家は少しずつ狂いだしていき………

 

みたいな感じですね。


小説内で起こる大きな事件は「長男が死ぬ」というくらいであとはほとんど日常シーンの連続、特に「長男が死んでしまう20歳までの15年間くらい」を丁寧に丁寧に描くのですが、その間にほとんど事件なんて起こらないんですよ。


でも小説の冒頭で「20歳で死ぬ」ことだけは判明しているので、読み手はそれを理解した状態でページをめくることになります。


語り部は次男である薫が担っており、例えば「スポーツマンでモテモテで人気者の兄ちゃん」と語るときもあくまで「次男にはそう見えている」という構図になっています。


当たり前のことですがこのへんが映画では使えない文法なので面白いなと。


映画では画面で思い切り写ってしまうので、本当にモテてるのかカッコイイのかは観ている人には分かりますからね。

 

小説の良かった点


物語の語り部である次男・薫というのがなかなかくせ者で、彼がどこまで本当のことを喋っているのかが完全には読み取れないのが素晴らしいなと思います。


例えば「AさんはBさんが好き」というのはなんとなく薫が気付いていても、それを言葉にしたくないと感じたら話さない→読み手にそれを伝えない、というような自体がまま発生します。


特に家族に関する描写に顕著で「うちの家族がいかに素晴らしい人物達で幸せか」ということは丁寧に丁寧に説明するのに、家族が狂いだしたあとは家族のイヤな面は直接的には表現せず匂わせる程度に留めていたりします。


小説を読んでいると「ああ、なんて素敵な家族なんだ」と思わせる一方で「いやでも、実はこの家族おかしいよな」という気持ちがいったりきたりすることになります。


恋をしたり、性に悩んだりといった描写があり、それがドラマチックに描かれてはいるのですが、言ってしまえばそれも「ごく普通のこと」でしかなくて。


書いてある内容自体は本当に「絵本に出てくるような作り物のような家族」なんですよね。


そのパーフェクトさが狂っていく様子を勢いよく描くのが気持ち良かったです。

 

西加奈子さんという才能


「波のような」文章を書く方だなと思いました。


読んでいる間中、ぷかりぷかりと浮き輪にのって、リズミカルな心地よさに任せて波に乗っているよう。


いつまでもいつまでもこの波に乗って幸せな思い出を味わっていたいなと思うのですが、読んでいる間中ずーーーーっと不安を感じています。


それは、目の前に大きな時化がやってきているのが分かっていて読み進めなければならないからです。


このあと、絶対に、波ののまれてしまうと分かっているながら相変わらずぷかりぷかりとリズミカルな文体は続いていきます。


話のテーマこそ違いますが、伊坂幸太郎さんの「重力ピエロ」を思い出しました。


あちらも「兄弟の話」「このあと、絶対に良からぬことが起こることが分かっていて読み進める」という点で共通しています。


また、映画「葛城事件」のような「家族という地獄」という共通点もあるかと思います。


正直なところ、「文句のつけようがないくらい文章力が素晴らしい」という感じではないんです。


かなり若々しく瑞々しい。


それもそのはず、執筆時はまだ二十代半ばで長編二作目の小説とのこと。


もうそれを隠すこともなくというか、後半は特に衝動にまかせっきりとも思えるような文体で襲いかかってきます。


こういう若さ溢れるみたいな表現はそんなに好きなジャンルではないのですが、この小説に限っては100%それが良い方向に働いたんじゃないでしょうか。

 

装丁の感想


シンプルな線画のイラストの上に、タイトルが明朝体で、すぅっとのっています。

 

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さくらというタイトル通り、色もさくら色。


装丁を観るかぎりは「日常を描いた内容かな」と予想できますし、実際にその通りです。


ただし、線画は暗いグレーで、全体として「明るく楽しそう」な印象はありません。


ほのぼのはしているけど、楽しくはない。そんな感じ。


これは小説を読み終わるとより意図が見えてきます。


街並みはよく観るとフリーハンドで描かれています。


定規とかを使わないということですね。


フリーハンドで描くメリットは、手描きの温かさが出るとか生き生きとした印象になるとかです。


ですが今回の装丁のタッチは少し違うようです。


ほのぼのしているように見えるけれど、少し街並みが傾いているように見えます。


ましてや全く色がありません。


これは「愛すべき日常」が狂ったまま色を無くしてしまった、という風に見えてきます。


小説を読む前と後で、受ける印象が微妙に変化するというとてもいい装丁だなと思いました。


また、意図的かは分かりませんが中央の家からY字に道路が広がっており、「もしあの時別の道があったならば」というような意味にも見えますね。

 

まとめ


考えてみると当たり前なんですけど、映画と違って映像のない小説は装丁によって受けるイメージが映画よりもかなり大きいですよね。


だから小説の装丁って「ぼんやりとした」ものが多くなってしまうのだと思いますが。


でもそういうのこそグラフィックデザイナー冥利につきるよなぁというか、美しい装丁を観ると「いいなぁうらやましいなぁ」なんていつも悔しくなります。


この冬はまだ何冊か小説を読む予定があるので、気に入ったものがあったらまたアップしたいと思います。


ギブアップ。


それでは、また。

 

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遊星からの物体X 《世界名作ポスター》

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映画の点数…70点
ポスターの点数…95点

 

世界一有名なポスター!かも


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は遊星からの物体Xです。


このブログでは毎回「映画と、映画ポスター」の感想などを挙げているわけですが、もしかしたらこの《遊星からの物体X》こそ、世界で最も有名なポスターの一つなんじゃないかなと思っています。


他には《ショーシャンクの空に》や《プラトーン》や《羊たちの沈黙》なんかも候補じゃないかと。


これら「映画は観たことないが、ポスターは知ってる」というほどにポスターのビジュアルが強い映画というのがたまに生まれます(いいか悪いかは別の話ですが)。


特にこの《遊星からの物体X》はポスター単体のビジュアルがそもそもカッコよく、映画ポスターとしても単にポスターとしてもレベルが高い作品です。

 

映画のストーリー


南極探査中のアメリカ部隊の中に、地球外生命体と思われる異星人が紛れ込む。


人間に擬態しながら次々と隊員を殺害していく異星人から、彼らは逃れられるのか

みたいな感じです。


エイリアンに代表される「限られた空間の中での異種族戦争」ものですね。


ストーリー自体はシンプルですが、シンプル故に今現在に至るまで40年近く愛されてきた映画ということなのでしょう。


ただしCGは無しです。


現在ではCGでいくらでも作り出せてしまう宇宙人や破壊される人体描写もすべて演技や特殊技術のみで表現しなければなりません。

 

映画の良かった点


映画の脚本などよりもむしろその特殊技術をいかに楽しめるかでこの映画の感想は大きく変わってくると思われます。


少なくとも、2019年現在の僕がこの「宇宙人の表現方法」を観ても「なんてこった!こんなすごい技術があるなんて!!」とはならないわけです。当たり前ですけど。


それはスターウォーズの初期3部作やターミネーターの一作目なども同じです。


ただそれだけで映画の価値が決まると言うのならば、これらの映画が今現在に至るまで長く評価されているわけがありません。


遊星からの物体Xの素晴らしさはやはり「人間を内側から乗っ取り、なりすまし、最終的には入れ物から出てくるように人体を破壊する」というアイデアと、それを実現させた技術だと思います。


スターウォーズは「はじめて観るデザインなのに、何故か整って見える」というデザイン力が凄いのですが、遊星からの物体Xのデザインは「なんだこれ?えーっと、なんだこれ?」といつまでも解明できない凄さがあります。


ただ単にデタラメな生物描写にすればいいというわけではなくて「おそらくここが消化器官なのだろうけど」とか「あの部分は犬の頭部が外側に出てるのだな」とかギリギリ理解しようとは出来る範囲のデザインです。


このSFXを手がけたのが当時まだ22歳のロブさんという方らしいんですが、まさに驚愕の才能ですね。

 

ポスターの感想


世界一有名なポスターとも言えるデザインですが、少し掘り下げてみようかと思います。

 

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まず分かりやすいところから言うと、顔がビカーッと発光していて何が何だか分かりません。


この「顔が見えない」という状況は人間が一番想像力を働かせる瞬間です。


先ほどのスターウォーズでいえば、皇帝は最初顔が見えずに登場します。


夜のお店なんかでも女の子が顔だけにモザイクをいれた写真がたくさんあります。


相手の顔が見えないと「不安」や「興味」がかき立てられ様々なイメージが沸いてきます。


この映画ポスターはまさしく「どんな顔をしているんだろう、どんな映画なんだろう」と興味を引く仕掛けがあるわけですね。

 

SF的要素


一見、顔が発光しているというだけのシンプルな構成ですが、色彩などには細かい配慮があります。


文字の色などを筆頭に、全体的にクールな青色が多用されています。


この青色が近未来感やSF的な要素を演出しています。


同時に、南極という寒々しい張り詰めた印象の表現としても役だっており、少ない情報ながらも強いイメージを持っているわけですね。

日本語版ポスター


日本語版ポスターの方は、なんといってもタイトルデザインが特徴的です。

 

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おそらく2020年現在で「The Thing」というタイトルの映画を「遊星からの物体X」なんて改変はしないと思うのですが(あ、でも「Frozen」を「アナと雪の女王」なんて改変したりするな)


遊星からの物体X」という仰々しいタイトルを、やはり過度にデザインで演出しています。


まぁ正直デザイン自体は時代を感じる古さがあるのですが、この角張った直線的な書体が1980年代における未来感だったのでしょうね。

 

まとめ


簡単な内容でしたが、一度観たら忘れられないデザインの代表「遊星からの物体X」の紹介でした。


僕はあまり「このポスターのデザイナーは◎◎で〜」と言うのは好きではないのですが(観る人には関係ないから)、もし良かったら「ドリュー・ストルーザン」なんて検索してみたら面白いかもしれませんよ。


それでは、また。

 

 

 

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ドクタースリープ 《結局はオマージュでしかないのか…??》

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映画の点数…76点
ポスターの点数…70点

 

シャイニング・40年ぶりの続編

 

こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《ドクタースリープ》です。


原作はS.キング、前作にあたるシャイニングはキューブリックが映画化してますね。


シャイニングから40年後を舞台に、前作の主人公・ジャックニコルソンの息子を演じたダニーが今作では主人公となっています(役者は全然違う人、ユアン・マクレガーが演じています)。


今年はターミネータースターウォーズ、ロッキー、ミスターガラスなんかも続編が公開されました。


ただしこのドクタースリープは本当に40年まるまる空いての続編なので、そういう意味では一番のサプライズだったかも知れません。


ドクタースリープに関しては「続編」というよりは「シャイニングに対するカウンター」のような作りになっている点も特徴です。

 

映画のストーリー


前作シャイニングで死亡した父親と同じように、自らもアルコール依存に悩まされるようになったダニー。


自分の人生をやり直すべく引っ越した先の街で、アルコール依存のセミナーに通い友人を作り就職もし、順調な生活を過ごしていた。


そんなある日、どこか遠くからシャイニングを使いコンタクトをとってくる人物が現れる。


今までの人生のトラウマから平穏に過ごしたいダニーだったが、人ならざるものとの接近は避けられず……


みたいな感じです。


前作のダニーがあんなオッサンになっていることにまず驚きですが、そりゃあんな経験をしたらその後の人生に影響を及ぼすのは当然といえば当然ですね。


新しいキャラクターも複数登場するのですが、やはり最後は「ダニーがあのホテルでの出来事に決着をつける」という方向に話はすすんでいきます。

 

映画の良かった点


この映画の良かった点は、映画の悪かった点と裏表になっていると思います。


映画の良かった点のほとんどは「前作シャイニングに関連するシーン」なんですよね。


映画の前半こそ新キャラクター達を使ってほとんどオリジナルストーリーを展開するのですが、物語のラスト40分ほどになるといよいよあのホテルが舞台になります。


ホテルに近づきシャイニングでかかっていた音楽が響き出すと「よっしゃー!きたー!!!」とテンションがあがります。


そこからは「そうそう!こういうのが観たかったんだよ!」と言いたくなるサービスショット満載。


ラスト、敵との決着シーンなんかは「シャイニング版アベンジャーズみたいな感じで。


ちょっと笑っちゃったくらいなんですけどね。


賛否両論ありそうですが、物語としては「なるほど、こういう形になるよね」というところに落ち着いたのかなと。


変に希望なんか持たせず、ちゃんと落とし前をつけるあたりがS.キングらしいのかなと思いました。

 

映画の不満点


これは映画の良かった点と同じです。


結局のところシャイニングの遺産を楽しむという映画になっていました。


新しいキャラクター達も物語後半になるとどんどん影が薄くなっていき、特に主人公の女の子なんかはホテルに着いたあとはほとんど何もしていないんですよね。


せめてラストくらいはダニーと共に敵に立ち向かうシーンが欲しかったです。


逆にダニーの方はというと映画の前半では特にやることがないんですよね。


せめて「定期的にホテルの亡霊達の影に悩まされている」とか「酒が切れてくると父親の恐怖を思い出す」とか何かしら演出があっても良かったんじゃないでしょうか。


映画の前半と後半で鏡合わせのように面白い部分と退屈な部分が入れ替わります。

 

ポスターの感想


ポスターの感想もまた、映画の評価と近いですね。


「お、いいな」と思う部分は結局シャイニングを思わせる部分なわけです。

 

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オリジナルな要素はほとんど見受けられず、そこは少し寂しいですね。


ただし、映画ポスターとしてはある意味当然の出来というか。


映画自体が「ダニーが過去の出来事と向き合う」という作りになっているため、大人になったダニーがホテル内で過去にあった出来事と対峙するというポスターになるというのはとても自然なことです。


かつて三輪車で走った廊下を歩き、斧で切り裂いたドアから顔をのぞかせる。


ファンへのサービスであるのと共に、映画の内容ともマッチしています。


ここに何かしらの新しいアイデアがあったらパーフェクトだったなぁと思います。

 

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まとめ


考えれば考えるほど、キューブリックという監督の異常な芸術性が浮かび上がってきます。


今作の不満点をいくら指摘しようとも「でもキューブリックが作った映画を作り直すということがそもそも難しい」という結論になっちゃうんですよね。


それほどまでにやはりシャイニングは一つの映画として完成されきっていたと思います。


このドクタースリープを観ることが出来たこと自体は非常に満足していますが、身も蓋もない言い方をすると「相手が悪かった」という感想になりそうです。


それでは、また。

 

 

 

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